ディープなレコードを探しに来た人が、見たこともないようなポップな雑貨を手に取る。おしゃれなインテリアを探していた人が、聴いたことのない音楽にハマる。2026 年秋、原宿にオープンした「BEAMS RECORDS / bPr BEAMS」は、レコードカルチャーの発信地〈BEAMS RECORDS〉と、BASIC&EXCITING を体現する〈bPr BEAMS〉の雑貨とインテリ アの魅力を、ひとつの空間で体験できる新しい店だ。個性たっぷりのそれぞれのレーベルの境界をシームレスにつないでみたら、思いがけないワクワクが体験できるスポットに。欲しいものがすぐ検索できる時代に、あえて店で探す意味ってなんだろう? 今回覗き見するのは、〈bPr BEAMS〉ディレクター・山口真吾と〈BEAMS RECORDS〉ディレクター・廣瀬麻美のハナシ。

– 〈bPr BEAMS〉と〈BEAMS RECORDS〉、なんで⼀緒に?
⼭⼝
〈BEAMS RECORDS〉はもともと店舗がかなりコンパクトで、その狭さや少し緊張感のある入り口がひとつの魅力でしたが、より多くの人に音楽カルチャーを届けるために、もう少し開かれた場所があってもいいかなと。逆に、僕がずっと携わってきた〈bPr BEAMS〉は、面白い雑貨と偶然出会える場所がだんだん少なくなっていることに寂しさを感じていたんです。手頃な量販店と、高価格帯の専門店に二極化して、その間にあった、気軽に入れて、 お店の個性や時代の空気が直球で感じられるような雑貨店が減っていて。
– そういえば、雑貨って宝探し感が楽しかった。
⼭⼝
そうそう。僕が 90 年代に足繁く通った店の多くは、雑貨やインテリアはもちろん、音楽やアート、ファッシ ョンが同じ熱量でセレクトされていた。ジャンルで整理するんじゃなく、その店独自の視点によって、異なるものをひとつの世界として提案していた。その面白さをもう一度今の感覚で提案できないかと考えたんです。

– 廣瀬さんはどう思った?
廣瀬
それぞれに違った専門性を持つレーベルだし、正直最初は「どう一緒になるんだ?」という感覚はありまし た。でも、考えてみたらどっちのレーベルもただ商品を販売するんじゃなく、その先にある「楽しみ方」やライフスタイルそのものを提案しているんですよね。音楽もインテリアも、それだけで完結するモノじゃない。全部、それを使うひとがどんな場所で、どんな時間を過ごして、どんな気分になりたいのか、というライフスタイルにつながってい る。そう考えたら、同じ空間で展開するのって、とても自然な広がりがあるなって思いました。
– 売り場はきっちり半分?
⼭⼝
いえいえ、音楽と雑貨の売り場を明確に分けてはいません。レコードを見ていたお客さまが近くに置かれているインテリアに興味を持ったり、ギフトを探しに来た人が突然新しい音楽と出会ったりする。モノからモノへ、モノからコトへ。興味が自由に広がっていくような売り場にしたかったんです。
廣瀬
これまで〈BEAMS RECORDS〉へ来てくださっていたお客さまにも、セレクトの方向性は変わって ないので、今まで通り楽しんでいただけると思います。でもこの場所なら、今まで出会う機会がなかった面白い雑貨 やおしゃれなインテリアにも興味を持ってもらえるかもしれない。それってとても面白いですよね。


– 好きなものの隣に、知らないもの。
廣瀬
そうそう。わたしたち〈BEAMS RECORDS〉はいつも、まずはお客さまが普段聴いている音楽についてヒアリングして、その好みに近い作品を紹介します。そして、その後、今まで体験したことがないかもしれないけれど、もしかしたら感覚が合いそうな 「意外な一枚」を提案するんです。「好きなもの」と「まだ知らないもの」の境界を広げたいから。
⼭⼝
それは雑貨も同じですね。生活に必要なものだけ探すんじゃなくて、店の中を自由に動き回って、「あ、これ面白 い!」、そんなふうに自分の興味を刺激するものを宝探しみたいに見つけてほしい。何も決まってなくたって、とり あえず店に来て、探してみる。そして、偶然、新しい何かと出会う。そんな体験を大切にしたいんです。
なくてもいいけど、
あったらうれしい、
そんな何かに出会える場所。
– ⼀緒にやってみたら、どんな発⾒があった?
廣瀬
〈bPr BEAMS〉は、キャッチーなイメージで、ユーモアのあるアイテムがたくさんセレクトされているとい う印象でした。でも今回一緒にお店を作ってみたら、全然それだけじゃない。セレクトやオリジナルプロダクトそれぞ れに並々ならぬ深いこだわりがあるんです。直感的な楽しさがの奥に、なぜその商品をセレクトして、どうしてこの形にしたのか、そのストーリーまでひとつひとつ楽しめるレーベルなんですよね。
⼭⼝
僕は以前から〈BEAMS RECORDS〉へ行っては、スタッフにおすすめの曲を聞いていました。自分の好みを覚えて「こういうの、どうですか?」といつも新しいものを紹介してくれる。まさに音楽のコンシェルジュですね。今はスマホがあれば好みに合わせて次々と音楽をすすめてくれますよね。でもどうしても聞き流してしまっ て、なかなか記憶に残らないことが多いなって思うんです。こうしてスタッフから「あなたに超向いてます!」と直接レコメンドしてもらったものは、何度も聴くし、その周辺のアーティストまで調べたくなるんです。ちゃんと音楽 と向き合う楽しさがあるなと。
人からすすめられると、その人との会話や、なぜすすめてくれたのかという記憶も一緒に残るんだと思いま す。音楽だけではなく、出会い方まで自分の中に入ってくる。

廣瀬
私たちも、お客さまがすでに知っているものだけを正確に提案したいわけではありません。会話の中から、その人がまだ気付いていない興味まで想像してみる。少し外側にあるものを提案できるのが、人を介した接客の面白さだと思います。
– ⾳楽だけじゃなくて、スタッフ同⼠もミックス?
⼭⼝
そう(笑)。〈bPr BEAMS〉のスタッフには、〈BEAMS RECORDS〉のコミュニケーションの楽しさを感じ て欲しいですね。雑貨はこれまで、複合店のレジ前などに置かれて、お客さまにセルフで買っていただくことも多か った。でも、この店なら、お客さまと直接コミュニケーションできるから、それぞれのアイテムの魅力や奥深さをもっともっと伝えられると思っています。僕たちにとっては、ここからがスタートです。
廣瀬
そもそもビームスって、異なるジャンルの人たちをクロスオーバーさせて何か新しいことを生み出すのが得意 な会社。それぞれが違う専門性や個性を持っているひとが集まっているけれど、なにかひとつのことに向き合うと、 お互いのカルチャーをリスペクトしながら、自然と一緒にそれを楽しめるんです。それも熱量高めに(笑)。
〈BEAMS RECORDS〉のスタッフにも、今まで以上に積極的にお客さまやスタッフ同士コミュニケーションを取っ てほしいと伝えています。お客さまにワクワクするような提案をするためには、自分たち自身がいつもいろいろなことに 興味を持って、新しいものを知り続けることが大事ですから。
ミックスって、とりあえず、楽しい。
– 空間はどんな感じ?
廣瀬
お店の設計や什器については、みんなで話しながらディレクションしていきました。完成品を目指したというより、自分たちで自身でつくった、という感覚が強いかも。
⼭⼝
以前の〈BEAMS RECORDS〉から持ってきた什器や、倉庫に眠っていた 10 年前の什器を組み合わせたりして 空間をつくっていったんです。新しいものですべてを美しく整えるんじゃなくて、あちこちに散らばっている面白そうなものを好きなように組み合わせて、自分たちらしい視点で再編集する。そんなビームスらしい DIY マインドがたっぷりの佇まいです(笑)。
廣瀬
〈BEAMS RECORDS〉はレコードや CD はもちろんですが、音楽をより魅力的に聴くためのオーディオやヘッドホン、DJ ミキサーなども扱っています。最初にも話しましたが、ただ音やモノを紹介するんじゃなくて、「音をどう楽しむか」まで提案したいんです。これからはそれが雑貨やインテリアと一緒に考えられる。生活の中で音がある風景を、これまでよりもずっと立体的に見せられるようになりそうです。


Left : Archie McPhee / TEETH ¥1,540(inc.tax)
Right : WINTECH × BEAMS RECORDS ¥9,790(inc.tax)
– デジタルの時代に、リアルな店。
⼭⼝
ビームスはそもそも小売りからスタートした会社です。いろいろな事業を展開しているけれど、原点である小 売りは僕達にとって一番大切なアイデンティティ。ここは扱うものが服じゃなく、音楽や雑貨というだけです。僕にとって、これまでもこれからも、リアルな店は絶対なくてはならない大事な体験の場ですね。
廣瀬
私も、ほかのレコードショップにもよく行きます。やっぱりモノを手に取って見たいから。それと、スタッフとの生のコミュニケーションが醍醐味ですよね。それって当たり前ですが、リアルな店でしか体験できない、特別な価値だと思う。たとえ買い物をしなかったとしても、スタッフとあれこれ話したことで、なんだか気分がワクワクしてくる。そういうのがリアルな店の大切な役割だと思っています。
– あ、なんか楽しかったかも!
⼭⼝
そうです! 想像していなかったような面白いモノやカルチャーと出会えるだけでも楽しいですよね。ギフトでも、自分のための雑貨でも、レコードでも CD でもいい。何か気になって「面白そう」って思ったり、スタッフとの会話を楽しみにしてもらうだけだっていい。もちろん何か買っていただけたらうれしいですけど(笑)
「そうじゃないほう」が、
ずっと気になる(笑)
– ビームスらしさって?
⼭⼝
ビームスでは、様々なシーンの現場にいる人たちが「これをやりたい」と言うところからいろいろなことが始まることが多いんです。もちろん戦略は必要ですが、大事なのはいつだって「現場」と「熱量」。だからこそ、自分たちが本気で面白いと思うものを、自分たちの感覚で具体的な形にできるんだと思います。この店も、そのマインドの象徴みたいな場所です。音楽やデザインプロダクトに関心を持つ面白い人たちが自由に集まれるコミュニティにし ていきたいですね。
ビームスには海外のデザインプロダクトやインテリアをいち早く日本へ紹介して、大きなムーブメントをつくった歴史があります。そんな感性を今の時代らしく提案したい。音楽やインテリアを通して、2020 年代のライフスタイルのあたらしいムーブメントを、またビームスが牽引していく。モノを販売するだけじゃなくて、新しいシーンが生まれる場所に育てていきたいですね。

Sneak Peek Notes.

レコードを買いに来た。帰る頃には、ライターが欲しくなっていた。雑貨を見ていたら、知らない音楽が流れてきた。なんとなくカセットを手に取って、ジャケ買い。当然、予定にはなかった。いい買い物って、考えてみたらだい たいそんなものだ。「BEAMS RECORDS / bPr BEAMS」には、レコード、CD、カセットテープ、スピーカー、椅 子、ぬいぐるみ、何に使うのか少し考える雑貨まで、いろいろある。ずいぶん自由な品揃えだけれど、なんだか居心地がいい。お気に入りの椅子に座って、好きなレコードを聴く。あれ、よく考えてみたら、音楽とインテリアや雑貨って、いつも一緒にあるものかもしれない。欲しいものが決まっているなら、検索すればすぐに見つかる。でも、まだ好きだと気づいていないものは、そこにいかなきゃ出会わない。だから、とりあえず店へ行くんだ。棚をぼんやりながめて、音楽に身を委ねて、店の人とゆるく話してみる。目当てのものが見つからなくたって、何かわからない 新しい何かを好きになるかもしれない。何も買わずには帰れない、というより、何かを好きにならずには帰れない店なんだ。
INFORMATION
BEAMS RECORDS / bPr BEAMS
BEAMS RECORDS / bPr BEAMS ビームスの音楽専門レーベル〈BEAMS RECORDS〉と、ライフスタイル雑貨・インテリアを展開する〈bPr BEAMS〉による複合旗艦店。アナログレコード、CD、カセットテープ、オーディオ機器から、世界各地の雑貨、スーベニア、インテリアまでを幅広く展開する。
オープン:2026 年9 月19 日(土)
所在地:東京都渋谷区神宮前3-24-5 3245 ビル 2F
営業時間:平日12:00〜20:00/土日祝11:00〜20:00
電話番号:03-3746-0789
PROFILE

山口真吾
〈bPr BEAMS〉ディレクター
1999 年にビームスへアルバイトとして入社。ショップスタッフやビジュアルマーチャンダイザーなど、さまざまな職務を経て現職。雑貨やインテリアのバイイング、商品企画も担当する。

廣瀬麻美
〈BEAMS RECORDS〉ディレクター
優れた音楽作品だけでなく、音楽が鳴る場所まで日々探求。ライブや DJ イベ ントへ足を運びながら、新しい音楽との出会いを探し続けている。






