WHY
そのぶん、正直に申し上げて派手さは毛ほどもありません。でも、“黒スト”にもピンからキリまでが存在します。穴飾りとか色味とか、デザインによるごまかしが利かない黒ストにこそ、靴作りの巧拙や品格がダイレクトに現れるんですね。ピンキリの“ピン”の代表格たる雲上紳士靴メーカーの逸品には軽く10万円〜の予算が必要ですが、〈ビームスF〉のオリジナルはその半額。ただし見た目の高級感はちっとも引けを取りません。そりゃあロングセラーにもなりますって!! でもいったい、どうしてピンキリのピンに魅せられるの? そこんとこを下にて懇切丁寧にご説明しましょう。
王道オブ王道のストレートチップですが、ピン立ちの風格を醸すためには細部の仕上げがモノを言います。例えば普段は見えてこない靴底部からしても、縫い糸を露出させずに隠す“ヒドゥンチャンネル”と、土踏まず部分を黒く塗った“半カラス”仕上げに。ウエスト部が引き締まって見える視覚効果があります。加えて内足側がくびれた“ベベルドウエスト”という、フィットを高めつつエレガントに魅せられる、注文靴の分野で編み出された技法も施しています。ちなみに今季から木型がリニューアルされ、5アイレット&丸みのあるトウへと模様替え。より汎用性が高まりました。
DETAIL
見逃せないのがコバ部分の仕上げ。アッパー側から見下ろしたときのコバ(アウトソール)の張り出しが少なく、ソールのボリュームを感じさせない上品な仕上がりに。高級車でもホイールが汚れていたら、プアーな感じがするでしょ? レザーシューズの場合はコバが美しいかどうかが。唸るようなストレートチップです。
アッパーの素材には仏の名門、アノネイ社のVOCALOUレザーを採用。老舗タンナーの高級レザーで、このキメ細やかさは無二の輝き!
端正な後ろ姿にもご注目を。美しい玉ねぎシェイプで人間本来のカカト形状に近づけつつ、ヒールはやや逆台形形状になった“ピッチドヒール”を採用。日本屈指の靴工場が製靴するからこその、エレガントのお手本に仕上がっています。