
OSAJI
Vol.1
空間で感じるOSAJI
-OSAJIが展開する「enso」を訪ねる-
Featuring

OSAJI
(オサジ)
OSAJI(オサジ)は、日本のスキンケアブランド。メイドインジャパンにこだわった、敏感肌向けのフェイシャルケア、ボディケア、ヘアケア、メイクアップなどを展開している。
【OSAJI 公式サイト】
https://osaji.net/

01. Brand Story
家族への愛がブランド誕生のきっかけ。
ブランドディレクターである茂田正和さんがOSAJIのブランドを立ち上げたのは2017年。そのきっかけになったのは、お母様が交通事故にあって精神的ストレスから皮膚疾患を抱えたことにあります。それまで使っていた植物由来の化粧品が一切使えなくなったことから、茂田さんは自宅のキッチンで化粧品作りをスタート。人の皮膚を生物学的に学び、独自に敏感肌でも使える化粧品の研究開発を進め、化粧品開発者の道に進むことを決意したそう。OSAJIは茂田さんの家族への愛情から生まれたブランドです。

OSAJIのブランド名の由来は?
江戸時代、将軍や大名に仕えるお医者さんを「お匙」と呼んでいた(漢方医が薬を調剤するときに匙で薬を盛るところから)というのを知って、これだと思いました。OSAJIの立ち上げ当時はアレルギー研究が一気に進んでいた時期。自分たちは皮膚のために化粧品を処方しているけど、身体全体の健康にも関わっている仕事なんだと思うようになりました。人の皮膚につけるもので健康を維持していくというのは、まさに現代の「お匙」だなと。


どうやってOSAJIのアイテムは広がっていったのですか?
いちばん最初は、OSAJIの前進ブランドで温泉を使った化粧水と保湿ゲルを作りました。母の皮膚はそれでみるみる症状が良くなりました。その温泉は安定的に手に入るものではないので、OSAJIの5周年の時に3000本だけ復刻しましたが、定番にしてほしいという声も多くいただきます。今はスキンケア以外にヘアケア、ボディケア、メイクアップ、フレグランス、ネイルといったカテゴリを揃えています。僕はOSAJIを「あれじゃなきゃだめ」ではなく「あれでちょうど良いよね」と思われるような、誰でも使える化粧品にしたいと思っています。誰でも使えるって、当たり前のことのようですごく難しいので、そこを目指していきたいですね。

心地良いライフスタイルを送るためのアイテムをそろえたショップも併設。

ensoの空間で茂田さんのお話を聞けるのは幸せです。

02. enso Tour
ensoをひも解く。
OSAJIが展開するensoはレストランと調香専門店、グロサリーを扱うお店を併設した複合ショップですが、おいしいものを食べることや心地良い香りに癒されるだけが目的ではありません。体験を経てどう感じたかという感覚を少しずつ研ぎ澄まし、自分自身の糧にしていく一人ひとりの“気づき”を大切にしている空間です。季節の食材を味わい、香りに触れて、耳をすます。そうすると、その先に「自分はどう感じたか」という気づきが生まれるはず。人には自分に足りないものを選ぶ力があり、食にしても香りにしても自分の感覚で本能的に選びとることができます。この空間で自分と向き合って、身体が何を求めているのか気づきを持ち帰ってもらいたいというのが、ensoの想いです。

ensoの構想は最初からあったのですか?
僕は子どもの頃から料理が好きで、いつか食に関わることはやりたいと思っていました。我が家は祖父の代から男性が厨房に入る家で、僕が小さい頃には祖父がタンシチューを作ってくれたりもしました。みんなでごはんを食べるというのはすごく豊かなことですし、インナーケアは見過ごせない大切な美容の要素。美容につながることはすべてやりたいという思いもあってレストランを始めました。

どうやってこの場所に出会ったのですか?
飲食店にかぎらず、鎌倉で何かやりたいと思っていて、知り合いの不動産屋さんに物件を紹介してもらいました。たまたまこの物件が公開された日に見て、もう完全に一目惚れ。空間ありきで、ずっとやりたかった食にしようと決めました。内装の改修はスタッフみんなで行ったので、お客様に成り立ちを説明する時にも熱が入ります。古いのでこれからもケアが必要ですが、僕はメンテナンスフリーの場所を作ってしまうとサービスの質が上がらないと考えています。足元が悪くなったら自分たちで床を張り替えて、「ここ気をつけてください」とお声がけしたらいい。ノーメンテナンスで古くなったら買い換えるという考えよりも、ちょこちょこメンテナンスをしてずっと使い続けるほうが長持ちするし、その感覚が大事だと思っています。

築100年にもなる元芸者さんの置屋の建物は、原型を活かしてリノベーション。

戸を開けると優しい光の入る実家に帰ってきたような玄関。
ensoの名前の由来は?
禅における書画の表現のひとつである「円相」(一筆書きで○を書いたもの)からきています。これも母の影響なんですが、母方は茶道花道の家系で、母が自分の茶席でかける軸が円相だったんです。中学生の頃に「エンソウにはいろいろな意味があって、見た人がどう捉えるかが大事。同じものを見ても、感じ取ることは人それぞれで同じではない」と言われて、子どもながらにすてきだと思って印象に残っていました。それで、ここを作った時に迷わずensoに。「美容のための食のお店です」という打ち出し方はしたくないし、来てくれる人がいろいろな気づきを持って帰ってくれればうれしいですね。

円相をイメージしたかのような丸窓から入る光。
ensoにいらしたお客様の反応は?
この建物の力もあって欧米の方々も多くいらっしゃるのですが、”Awesome!”と言ってくださるのが本当にうれしいですね。ここを始めて、会社そのものがエンソウだと考えるようになりました。僕がensoのコンセプトを作ってこれで進めましょうというやり方ではなく、スタッフ全員が主体性をもって動くことに意味があります。会社という箱に対してスタッフそれぞれが様々な捉え方をして、自己実現のために身体を動かす。その結果、コンセプトができあがるのだと思っています。そういう意味でも、ensoは僕らが伝えたかったことがいちばん伝わる空間になりました。

ガラス戸に囲まれた空間のレストラン。そのまま残したという庭の木々が見えます。

空間に流れる静寂の時間と温かい空気についつい笑みがこぼれます。
最後に、茂田さんの考える美容とは?
人には誰しも「ありたい自分」と「見られたい自分」があって、この2つの自分を近づけていくプロセスを美容と呼ぶ。これは、最近、美容の定義を言語化しようと頑張ってたどり着いた考えです。例えば、とんこつラーメンを食べたい自分がありたい自分だけど、毎日野菜サラダを食べている人に見られたい。この2つの自分を近づけるプロセスが美容だと言っています。2つの自分が一致している人はすごく素敵だし、離れている人は魅力的に映らないと思うので、OSAJIとして2つの自分を近づけていく美容のお手伝いをしたいと思っています。
僕はアンチエイジングという言葉にもすごく違和感があります。このensoの空間だって、侘びていてさびているから落ち着くし美しいのであって、いかに良き熟成をするかが美容です。僕の中では美容の最重要課題は精神で、次が食、いちばん最後に化粧品。化粧品が不要という意味ではなく、優先順位を無視して化粧品から叶えようとするとドツボにはまってしまうので、美容のためにできることはすべてやっていきたいですね。

茂田さんのお話を聞いて、
OSAJIのことやensoに
込めた想いを感じられました。
Profile
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PROFILE
山梨県出身。2005年ビームス入社。ショップスタッフ/マネージャー、SVを経て、2020年より現職プレス。ビームスのパーソナルブックシリーズ「Meguro's SIMPLE STYLE MEMO(I AM BEAMS)」が好評発売中。
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PROFILE
2010年にビームスに入社。ショップスタッフ、バイヤーを経て昨年よりB:MING by BEAMSのウィメンズディレクターを担当。最近は彫金にはまっています。
「健やかで美しい⽪膚を保つためのライフスタイルをデザインする」をコンセプトに、メイドインジャパンにこだわったトータルビューティブランドOSAJI(オサジ)。bb部員にもファンの多いブランドで、2022年には、神奈川県鎌倉市に地元野菜を中心としたレストランやエッセンシャルオイルの調香ができるお店を併設する複合型ショップ「enso(エンソウ)」をオープンしました。今回は、ensoにお邪魔して、ブランドディレクターの茂田正和さんにOSAJIの立ち上げから現在、これからのことをうかがいました。レストランでの食事と調香体験もレポートします!