矢印がそこにあることにより空間に指向性、方向性が生まれる。そうして知らぬうちにあなたもそのトラップの中に招き入れられ全体の一部となる。
そう、一個人と思っているあなたも何かの一部であり一要素であり、あなた自身も分子レベルでいえば集合体で、全体でもあるわけだ。
彼は、視点をずらすことでその仕掛けを露呈させる。鉛筆と思っていたものが顔の一部であったり、顔にみえていたものが△の形のつみかさねになっていたり、いったりきたりの往復運動。
その運動の中であなたは自分のあるべき位置をみつけるだろうし、いくべき方向性もはたすべき役割もみえてくるかもしれない。
それは常に動く光子がいろいろなものに跳ね返りあなたの目に入って像を形作りものをみえさせるように、認識させるように、ものごとを浮き彫りにする。そのようなきっかけとして彼はものをつくって、あなたを巻き込んでいるのだ。
そのトラップにのっかってみること、だまされない事、素直に受け取る事、あるいは見逃す事、そうしたやり取りの中で我を捉え直し、指向性をもって取り組んで行く事。
Text: Yuu Itoh
Photo: Keizo Kioku
- untitled
installation
2008 年
「THE ECHO」展での展示風景より - クラスター爆弾
54.5 × 42cm
シャープペンシル、ケント紙
2006 年

サングラスの入ったショーケースを覗き込むと大量の目玉に見返される。服を試着し鏡を見ていると、強いインパクトで視野に入ってくる鉛筆が刺さった顔、又は顔に刺さった鉛筆?の彫刻が、鏡にも映りこんで迫ってくる。別の鏡の端々に貼られた、広げた箱のような紙の作品。アクセサリーケースの中にそっと忍ばされたある小説の1頁。天井から吊るされた単色のルービックキューブの合体。これらの作品は見る人の概念に訴えかけ、ショックや疑問など様々な思考を呼び起こしました。
- Photo : Ryosuke Kikuchi
Styling: Ayaka Endo
磯邉一郎 ICHIRO ISOBE
http://www.yamamotogendai.org/japanese/artist/isobe.html
- 1969年
- 広島県生まれ
- 1996年
- Bゼミ卒業
主な個展
- 2005年
- 「クリテリウム」水戸芸術館(茨城)
「磯邉一郎個展」山本現代(東京) - 2007年
- 「X-eye」山本現代(東京)
「漂流の観測者Observers of the Drift Vol.2」
「ざわめく、またたき」武蔵野美術大学(東京)
主なグループ展
- 2004年
- 「ドロー・イット・ブラック!」山本現代(東京)
- 2007年
- 「VOCA展」上野の森美術館(東京)
「線の迷宮Ⅱ-鉛筆と黒鉛の旋律」目黒区美術館(東京) - 2008年
- 「THE ECHO -The exhibition of Japanese Next Generation-」ZAIM(横浜)