いろとりどりの光痕。これらは、ヒューズがやけきれる瞬間の光を印画紙に留めたもの。
それは、いわば消滅と同時に光が生成する瞬間、さらにいえば死と生が同居する瞬間ともいえる。死は終わりではなく、生と共にあるものではないか。我々がみて希望を抱いたりする星の光も、実はある惑星が爆発した際に発した光でもあるかもしれないのだ。普段みのがしがちな、小さな器材であるヒューズ（定格以上の大電流から電気回路を保護する部品）の中にも、宇宙に想いをはせるきっかけがある。
もう一つの作品、一見するとガラスの球体にみえるがそれは、実は中の空気をぬいて真空に近い状態になったガラス球である。いわば宇宙と同じ状態。すなわち宇宙が入った球でもあるわけだ。あるいは、限りなくゼロに近い状態なのであるが、微細にみていくと、多少の粒子は存在する。0と1も、言葉を変えれば死と生も、実は同じことではないのだろうか？ そういった問いをなげかける作品である。
Text: Yuu Itoh
Photo: Keizo Kioku
- ∴0=1 －光痕－
∴0=1 －trace of light－
H300×W500×D22.5cm
タイプC プリント、鉄、アクリルボード
2008年
「ULTRA」展での展示風景より 
- ∴0=1 －真空－
1×10-5Pa の真空ガラス
2008年
中央の大階段を降りた、地下1階突き当たりの壁面には、まるで花のように様々な色が光を放つという作品が展示されました。空間に映える美しい作品には"キレイ"という単純かつ正直な印象を口にされる方が多かったものの、それがヒューズのとぶ瞬間に発する自然の？光だと知ると、更なる不思議と感動をよびました。また、階段途中の壁面にあるショーケース内には、真空を内包するガラスの球体が......限りなくクリーンで、かつ真空という緊張感を持った作品は、"宇宙"というキーワードで対面する色鮮やかな作品と呼応するかのようでした。
- Photo : Ryosuke Kikuchi
Styling: Ayaka Endo
栗山斉 HITOSHI KURIYAMA
http://hitoshikuriyama.blogspot.com/
- 1979年
- 兵庫県生まれ
- 2006年
- 「文化庁メディア芸術祭」審査員特別賞
- 2007年
- 「Re-Act」市原研太郎賞 広島市現代美術館
- 2008年
- 東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程 在籍
主な個展
- 2006年
- 「栗山斉展」INAX ギャラリー2（東京）
- 2007年
- 「∴ 0=1 ─光痕」ギャルリー東京ユマニテ（東京）
「control a room」magical, ARTROOM（東京） - 2008年
- 「traveler」遊工房（東京）
主なグループ展
- 2006年
- 「文化庁メディア芸術祭」東京都写真美術館（東京）
「取手アートプロジェクト2006」戸頭終末処理場（茨城） - 2007年
- 「Re-Act」広島市現代美術館（広島）
「桐生再演13」山治織物工場（群馬）
「WORM HOLE episode 10」magical, ARTROOM（東京）
「井野アーティストヴィレッジ Opening Exihibition」井野アーティストヴィレッジ（茨城） - 2008年
- 「O コレクションによる空想美術館」東京ワンダーサイト本郷（東京）
「NEW BEGINNING - The show must go on!」magical, ARTROOM（東京）
