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クリエイターたちの制作活動の拠点となるアトリエ。その空間づくりは、人によってさまざまです。徹底的なミニマリストもいれば、インスピレーションにつながるたくさんのアイテムに囲まれてこそ心地よさを感じる人もいます。そんな個性豊かなワークスペースを訪ね、つくり手のパーソナルな一面を探っていくこの企画。二回目となる今回は、ユニークなセンスとDIY的なアプローチで作品を生み出す、magmaのアトリエにお邪魔します。
宮澤謙一(写真左)と杉山純(写真右)によるアーティストユニット。2008年結成。 廃材、電動器具、樹脂などを手作業で組み合わせて創りだす独自の世界観を得意とし、作品制作にとどまらず家具やプロダクト、プロップス、空間演出などのクライアントワークまで幅広く手掛ける。
天井の高いアトリエですね。ここを使って何年くらいになるんですか?
magma 8年くらいですね。僕らは大学在学中に結成してから就職せずに活動してきていますが、作業スペースが必要なので大学時代からアトリエを借りています。とにかく必要なのはスペースです。ここに移ったのも、大きな展示があって、以前のアトリエでは手狭になって。おかげで、この天井高5メートルくらいの作品もつくれるようになりました。
いたるところに、DIYの跡が見えますね。
magma 照明も、階段も、扉なども自作のものが多いです。
作風にもそのDIYのスキルは活かされていますが、そのスキルはどう身につけたんですか?
magma 僕らが卒業したのは「空間演出デザイン学科」という学科で、舞台美術やディスプレイ、ファッション、家具などを学生が工具を学校で借りて素人なりにつくるというものでした。その“浅く広くなんでもやる”というのがよかったのかもしれません。在学中の校内には、彫刻科の学生の木彫りの作品などがゴミとして捨てられていて、それを持って帰って自分の作品につくり変えたりしてました(笑)。
SNSなどから学んだりすることもありますか?
magma いろいろな分野の専門家、プロフェッショナルのひとたちからはインスピレーションをもらいます。設営の現場で一緒になったときとかつい作業を見ちゃいます。基礎みたいなところをすっ飛ばしてきたので。
使う素材は、どんなものがありますか?
magma 木材からプラスチック、ガラスに樹脂までなんでも使いますね。金属同士の溶接以外の作業なら、基本的に自分たちでやります。
それ以外の作業というと?
magma いろいろな素材を切ったり、スプレーで色塗ったり、樹脂を固めたり。それぞれ作業が他の作業に干渉しないように、各スペースがアトリエにあります。一番スペースをとっているのは、作品や素材となるものの保管場所ですが(笑)。
道具と作品との関係はどう捉えていますか?
magma 道具の使い方で最終的な作品のアウトプットが変わります。だから、新しい道具が出たら試すようにしていて。それも説明通りの使い方というよりは、この道具をこう使ったら、ひょっとしたらこういうことができるかもしれないと探るのが楽しいんです。それができたら作品がちょっと新しくなるかもしれないので、常に道具は新しいものを採り入れていきたいなと。
工具は、ホームセンターで購入することが多いですか?
magma そうですね。各ホームセンターにも特徴があるんですよ。置いてある木の種類とか、品揃え、店内で流れている曲も(笑)。
先ほどの「新しい道具」というのは、新品ということですか、それとも新しいテクノロジーということですか?
magma 両方ですね。こういう工具もどんどん進化しているし、ホームセンターで売ってないようなものがネットで売っていたりして。これならあそこまで穴を開けられるんじゃないか、とか考えていくと、使える素材の幅が広がるんです。
作品の素材としては、古いものを使うことも多いですよね。
magma オーダーなどでつくるサイズが決まっているときは新品のものが多いですけど、できるだけ古材を使いたいです。というのも、やはりもっている表情がちがうので、その方がおもしろいなと。以前、廃業したお店の什器をBEAMSが買い取って、それを素材にして僕らが新しいものをつくるという取り組みがあったんですけど、それはすごく面白かったです。
古い素材は、どういうところで購入することが多いんですか?
magma 大手のセカンドハンドのお店だと価値がある程度決まっているけど、そういうのとはちがうお店が一番好きですね。売れるものはとりあえず売っちゃえ、みたいな感じの。とはいえ、ジャンクというか、壊れすぎているものは意外と選びません。ギリギリで揃っているものとか、ジャンクまではいかない絶妙な感じのものを選ぶことが多いです。
こういうものがいい、というのはあるんですか? 例えば使っていた人の痕跡が残されているものがいいとか?
magma それ単体だとちょっと格好が悪いもの、ですかね。ここをちょっと変えるとよくなるんじゃないかな、というものが好きです。
magma 例えば、このオブジェはワインを置くためのものですけど、家では使いづらいじゃないですか。これをどうにか家に置きたくなるくらいまで中和していくんです。作品を判断する基準として、家に置けるかどうかというのはあります。だから、素材としては自分が欲しくないものを選ぶようにしていて。そういうものを欲しいと思えるようにアレンジしていくのが面白いんです。最初からかっこよかったら、そのままでいいですし。
そういえば、好きなアーティストの一人がトム・サックスだと聞きました。
magma 誰でも出来るという流儀をつくったのがすごいですよね。このキーホルダーをかけている什器も彼の真似です(笑)。このつくり方だと解体も簡単だし、誰でもできるんです。普通なら真っ白く全体を塗るんですけど、切った木の断面を見せていたり。全部白く塗るといかにも素人がやったテイストになっちゃうんですよね。コードも見せないようにできるけど、あえて表に出したりとか、工夫次第でかっこよくなる。こういうことをいわば発明したアーティストかなと。
工具含めて、いろいろな道具を見せてもらいましたが、こだわりのあるものを一つ教えてください。
magma うーん、迷いますが…、道具の使い方という意味では、マスキングテープをテープカッターに入れるだけでも変わるんですよ。建築現場などではマスキングテープは手でちぎって使うのが主流ですが、切り口がきれいになるだけで貼りやすくなります。郵送物にきれいに貼れるし、受け取るひとも気分がいいじゃないですか。
今後やりたいことはありますか?
magma 展示などはいろいろと控えていますが、前々から言ってるのは、待ち合わせ場所のオブジェをつくりたいです。例えば、太陽の塔みたいな。職人さんに協力してもらいながら、自分たちだけではできないものをつくれると楽しそうだなと思います。
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。