Netflixのドキュメンタリーが話題を呼び、アメリカの若者たちが熱狂。フォーミュラワン全面協力の映画『F1/エフワン』も話題に。さらに、撤退を表明していたホンダの復帰発表もあり、今や世界中で空前のF1ブーム! やっぱり、映像を通して伝わるモータースポーツの魅力は格別です。そこで今回は、レースファンやクルマ好きの4人に“名作F1映画”を紹介してもらいました!
今さら聞けない
そもそもF1って?
フォーミュラカーと呼ばれる、一人乗りのオープンホイールマシンで最高速度を競うモータスポーツ。毎年、世界21カ国・全24戦に、たった10チーム・計20台だけが参戦できる、まさにクルマ界の最高峰レース。グランプリ(GP)とよばれるレースは、モナコやラスベガス、シンガポールのように市街地を駆け抜けるコースもあれば、F1発祥地・イギリスのシルバーストーンや、日本の鈴鹿のように、伝統のあるサーキットまで、個性はさまざま。マシンの性能が勝負を左右する技術とスピードの世界ですが、ドライバーの人間ドラマが見えるのも、引き込まれる魅力です!
RECOMMENDER 1
DRIVETHRU® ディレクター・神保匠吾さん
『カーズ2』(2011)
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架空の世界にリアルなストーリー
ピクサーらしいF1の描写が楽しい
「アメリカのストックカーレースを中心に描かれていた『カーズ』から、世界各国を舞台にした『カーズ2』への展開は、F1が世界規模で盛り上がる現状をうまく取り入れていて面白い。日本から始まり、イタリア、そしてロンドンで終わる構成にも、F1に対する共通認識がよく表現されています。F1・ラリー・ストックカーが混在していて、『007』のようなスパイ要素が加わる。さらに、“ポンコツ車”たちの妬みのような描写も楽しく、1本の映画に、現実的なストーリーと架空の世界がミックスされている感覚になるんです。親子で楽しめるピクサーの作品は、F1を楽しむ入り口になるのでおすすめです」。
天才レーサー、ライトニング・マックィーンが、F1さながらの国際的サーキットを巡る「ワールド・グランプリ」に参戦。ライバルは、フォーミュラカーのフランチェスコ・ベルヌーイ。世界を舞台にした華麗なレース展開の裏側では、ピットクルーの親友・メーターが何者かの陰謀に巻き込まれてしまう。ディズニープラスで配信中。
RECOMMENDER 2
編集者・西坂和浩さん
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西坂和浩
KAZUHIRO NISHIZAKA
集英社『UOMO』編集部エディター。クルマ、時計、ファッションを中心に担当する。1970年式のアルファロメオ・ジュリア GT1300Jr.を愛車とするほか、トヨタ86でダートトライアル選手権にも参戦中。夢はラリーレイドに出場すること。日々トレーニングを重ねながら情熱を燃やしている!
『グラン・プリ』(1966)
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おしゃれな映像とファッションで
60年代のF1カルチャーに浸れる
「戦後20年が経った1966年当時のF1の黎明期を描いた作品。各国の自動車産業が復興し、モータースポーツが再び盛り上がってきた時代を舞台に、当時としては革新的な撮影技術で制作されていてとにかくおしゃれ。ドライバー目線のカメラアングルなど、臨場感あふれる映像が特徴で、フェラーリのマラネロ工場や、スパ・フランコルシャン、モンツァといった実在のサーキットで撮影されている点も資料的価値があります。作られた世界というより、60年代当時の華やかなF1文化やファッションがリアルに感じられる。一方で、ドライバーたちの人間模様や、今以上に命がけだったレースの緊張感が丁寧に描かれているところも見どころですね」。
ジョン・フランケンハイマー監督によるアメリカ映画。1966年のF1世界選手権を舞台に、ドライバーズチャンピオンの栄光をかけて争う4人のレーシングドライバーの葛藤と人間模様を、迫力のカーアクションとともに描く。
RECOMMENDER 3
PR/プロデューサー・YUYAさん
『ゴーカーツ』(2020)
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主人公のドライバー、ジャックの
カートにかける熱い想いに感動!
「僕は趣味で始めたゴーカートですが、気づけばMAX Mastersに出場するまでになりました。そんな視点から見ても『ゴーカーツ』は“カートがモータースポーツのスタート地点・基礎である”ことがリアルに描かれています。主人公のジャックは、金銭的にも環境的にも恵まれていない中で、夢に向かって走り続けている。その姿に反骨心というか、がむしゃらに頑張る熱を感じました。素直さと柔軟性で、知らず知らずのうちに基礎を身につけていくジャックの成長過程も、この作品の魅力だと思います」。
イギリスの人気自動車番組『トップ・ギア』シリーズで演出を手がけたオーウェン・トレヴァーによる長編映画監督デビュー作。父親を亡くした悲しみを抱えながら、ゴーカートのスピードと興奮に魅了された少年が、仲間たちのサポートや元レーサーの指導を受けて成長していくサクセスストーリー。
RECOMMENDER 4
ビームススタッフ・藤村宏子さん
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藤村宏子
HIROKO FUJIMURA
2014年にビームスへ入社。現在はビームス宣伝販促部・イベント課に所属し、イベントの企画・運営を手がけながら、日々エンタメを爆走中。DJとしても活動中です。推しはルイス・ハミルトン、応援チームは“伝統と根性”を重んじるマクラーレン。音とスピード、どちらもこよなく愛しています。
『ラッシュ プライドと友情』(2013)
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対照的な二人のドライバーとチームワーク
ヒューマン視点で捉えたF1の世界
「Netflixオリジナルのドキュメンタリーシリーズ『Formula 1: 栄光のグランプリ』(2019配信開始)をきっかけに、今では全試合を追いかけるほどハマってます。レースに出るのは一人のドライバーですが、その裏にはオーナーやメカニックチームなど、多くの人たちの存在が欠かせません。この映画では、70年代に活躍したジェームス・ハントとニキ・ラウダ、対照的な性格を持つ二人のドライバーの激しいライバル関係が描かれています。初心者でもわかりやすく、F1の華やかな舞台の裏側で繰り広げられる人間ドラマがしっかり伝わってくる作品です。特に、大事故から復帰するラウダの姿は本当に感動的でした」。
1976年、F1黄金時代。情熱派のジェームズ・ハントと、頭脳派のニキ・ラウダ。性格も戦術も正反対の実在した天才レーサーによる、チャンピオンを賭けた戦い。熾烈なライバル関係の中で芽生えた友情を描いたヒューマンドラマ。
黄金期と呼ばれる1960〜70年代は、車体デザインの自由度が高く、技術とアイディアがぶつかり合う、視覚的にも楽しめる時代でした。今ではテクノロジーの進化やSNSの普及によって、「推し」のドライバーやチームを応援するスタイルが主流に。今回紹介した4本の映画には、そんなF1の進化と変わらない魅力が描かれています。例えば『ラッシュ』を観たあとにカート時代からのライバル関係でもあるフェルタッペンとルクレールの競り合いがよりドラマチックに見えてきたり、『グラン・プリ』で描かれた60年代のモンツァを観てから、現代の同サーキットを観戦すると、その歴史的な積み重ねに思いを馳せることができるかもしれません。映画をきっかけに、今シーズンのレース観戦も楽しんでみてください!
Photo:『カーズ2』© 2025 Disney/Pixar
『グラン・プリ』Collection Christophel/Aflo
『ゴーカーツ』Everett Collection/Aflo
『ラッシュ プライドと友情』Collection Christophel/Aflo
Edit & Text : MANUSKRIPT