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出雲の文化、その継ぎ目。<br/> 三田 真一 × 土井地 博

出雲の文化、その継ぎ目。
三田 真一 × 土井地 博

島根県・出雲。八百万の神々が集うその地には、数千年の時を経ても色褪せない“手仕事”が息づいている。3月27日(金)から「ビームス ライフ 横浜」で開催されるイベントにて、一部プロダクトの監修をしたスタイリスト 三田 真一と、キュレーターを務めるビームスの土井地 博。ここでは、25年来の盟友である二人が、出雲という土地で見つけた“新しい文化の形”に迫る。

三田真一

三田真一

1995年に熊谷隆志氏に師事し、1997年よりスタイリストとして活動開始。1998年からロンドンを拠点にし、2001年に帰国。雑誌や広告、映像作品のスタイリングに加え、アーティストとしての作品発表も行う。昨年春に「ラフォーレミュージアム原宿」で展覧会を開催。

土井地 博

土井地 博

ショップスタッフを経て、宣伝・PR 業務に従事。その後、国内外の企業・組織・ブランド・人材と連携し、グローバルなプラットフォームを活用した次世代型アライアンスビジネスを立ち上げる。現在はディレクターが集結するエージェンシー「ディレクターズバンク」の室長並びに、〈BEAMS GOLF〉事業のシニアクリエイティブディレクターを担当。島根県親善大使・出雲観光大使を務めるほか、武相荘クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、大学非常勤講師、司会・講演など活動は多岐にわたる。

始まりは、2000年頃の原宿の街から。

— お二人の出会いは、約25年ほど前まで遡るそうですね。

土井地: 僕が大阪から転勤で東京へ出てきて、ビームスのPR担当となったのが23歳の頃。入社から1年半ぐらいで東京に転勤になったんです。当時は今みたいにウェブが中心ではなく、雑誌がカルチャーの真ん中にあった時代。スタイリストとして第一線で活躍していた三田くんとは、仕事はもちろん、夜のクラブやレセプションパーティーといった人が集う場所でよく顔を合わせていました。

三田:当時僕は独立をして、ロンドンと日本で二拠点生活をしていたんです。お互いまだ駆け出しで、遊び場がそのままクリエイティブの情報交換の場になっていたよね。

土井地: 当時のビームスのプレスルームは、服を貸し借りするだけの場所じゃなくて、みんなでコーヒーを飲んだり、くだらない話をしたり(笑)駆け出しなんでいろんな人の話を聞けるありがたい場所でした。編集の方とスタイリストの方との待ち合わせの場所として使っていただいていました。そんな中、三田くんは当時からスタイリストという枠に収まらず、空間や余白、その背景にあるクリエイティブを丸ごとスタイリングできる稀有な存在だったんですよ。

出雲に降り注ぐ、圧倒的な「光」

—そんなお二人は、今回イベントを開催するにあたり、実際に出雲を旅されたと伺いました。三田さんにとって、出雲という土地はどう映りましたか?

三田:最初に心を掴まれたのは、雲の間から差し込む“光”の美しさでした。あんなにドラマチックな光の風景が日常的に見られる場所って、他にはなかなかない。その光の下で、何百年、何千年と守られてきた工芸が生まれている。その環境自体が、ものづくりにすごくいい影響を与えているんだろうなと感じました。

土井地: 僕は出雲生まれですが、18歳で大阪に出たときは、地元の価値に気づけていなかった。でも歳を重ねて改めて向き合うと、時代の大きな変化をくぐり抜けながらも、
脈々と受け継がれてきた文化が手つかずで残っていることの凄みを感じます。

三田:僕は逆に東京生まれ東京育ちなので田舎がないんですよ。海外にいたときに、「日本ってどういうところなの?」とか、「日本のこういう文化ってどうなの?」ってよく聞かれることがあって。日本についてよく知らなかったことに気づいたんです。その後いろいろと勉強して、日本文化にハマりました。

つづく「歴史」、つながる「縁」。

—土井地さんは出雲の観光大使も務められていますよね。

土井地:出雲は千年、二千年と守られてきた土地なんです。日本の歴史の中ではいろいろな時代の変化がありましたが、出雲は神話の時代から続く信仰や文化が、今もこの土地の中に自然な形で残っています。出雲国で考えると出雲大社だけでなく、美保神社や神魂神社など、古い信仰や文化が各地に点在していて、それぞれが今も地域の暮らしの中に息づいている。そういう文化が大きく途切れることなく、長い時間の中で脈々と受け継がれてきた場所は、日本の中でもなかなか多くないと思います。だからこそ、出雲という土地はとても面白いんですよね。


三田:数千年単位の歴史が、すぐそこにあるんだもんね。そのルーツがあることが羨ましくもあるし、外から来た人間だからこそ、当たり前の中にある“特別”を可視化できるんじゃないかとも思ってます。

土井地:たしかに、三田くんは色んなことに気づくもんね。出雲大社を訪れた時、75畳ほどある日の丸(国旗)を見て、どう繋ぎ合わせているのかを気にしてました(笑)

三田:あれはすごかった。

土井地:僕は「縁」っていう言葉がすごく好きで。それこそご縁があって今出雲の観光大使を務めてますけど、伝統が受け継がれていくのも縁。そこにすごく温かさを感じるし、歳を重ねるにつれてそういうところに目を向けられるようになりました。若い人にとって、伝統はまだ距離が遠く感じられるかもしれないですが、徐々に魅力に気づいていただけたらいいなと思います。

勾玉(まがたま)を、日常のスタイルへ編集

—今回のイベントでは、三田さんが監修したプロダクトも並びます。特に「勾玉」のネックレスは新鮮なアプローチですね。

土井地: 勾玉って、日本最古の宝飾品の一つなんです。でも、今はどこか神聖すぎて、ファッションとして取り入れるには距離がある。それを三田くんの目を通して、もっとカジュアルに、クリエイティブな視点で世に出せたら面白いなと。

三田:昔の勾玉を調べると、今の定型化されたものよりも、もっとランダムだったんです。今回はその「揺らぎ」を大切にしました。あえて規則性を崩して配列することで、飽きのこないデザインにしています。

土井地: 白Tやデニムにさらっと合わせられる。二千年前の人も、実は今の僕らと同じような感覚で身につけていたかもしれない。そう思うと想像が膨らむ編集になっていますよね。

出雲茶寮で感じた、生活に根付くものの美しさ

—「出雲茶寮」を訪れた際のエピソードも印象的でした。

三田:あの場所の縁側や、お茶を飲む空気感は独特でした。お母さまがお花を生けていて、その前を地元の子どもたちが通り過ぎていく。今は分からないかもしれないけど、いずれその子どもたちにとってすごく良い記憶になっていくんじゃないかと。僕が特に印象的だったのは、お店に飾ってあったドライフラワー。茶器に無造作に挿してあるその佇まいが美しくて、そのままTシャツのデザインに落とし込みました。

土井地:初めて行った場所で見た景色がそのままTシャツになるってすごいですよね。三田くんが、人一倍色々なものを見ている中で惹かれた景色だと思うとより一層楽しみです。

AI時代だからこそ「わざわざ」という手間を愛でる

—「お二人のクリエイションの根底にあるものって何なんでしょう。

三田: お茶にしても器にしても、最終的には「日常品」として機能していないと意味がないと思うんです。ビームスが工芸に力を注ぐってことは、ただ飾るものを作るのではなく、生活の一部として「使いたい」「着たい」と思えるものにするのも重要だと思っていて。特に今はAIが劇的に進化して、人間よりも「正解」を出すのが上手くなっていますよね。でも、AIは一般論の集合体でしかない。工芸における釉薬の色出しのように、その日の空気や湿度で変わってしまう「計算できないズレ」や「ピントが合わない良さ」のような、人間にしか作れない感覚が、今大事だと思うんです。

土井地: 確かに。今回のイベントを通して、そういう便利な時代だからこそ、その対極にある不便さとは言わないけれど、「手間」に価値があるということを伝えたいですね。僕が最近感じているのは、「わざわざ」という言葉がポジティブな意味に変わってきているということ。コロナ前やAIが普及する前は「わざわざ行かなくてもネットで買えばいい」という効率が優先されていました。でも今は、時間をかけて足を運び、そこでしか味わえない景色や食に触れること自体が、ものすごい価値になっている。
三田:わざわざ行ってもらう、使ってもらうっていう、そのアプローチは確かに響くのかもしれないね。効率からはみ出した「わざわざ」の先にこそ、物語がある。出雲で飲んだ何気ない水道水が、衝撃を受けるほど美味しかったこととかね(笑)。
土井地: そうそう(笑)。水道水やB級グルメの焼きそば…… 。そういうローカルな面白さと、伝統が混ざり合っているのが出雲の深さでもある 。今回のイベントでも、ただ「良いもの」を並べるだけじゃなくて、そういう滞在時間やストーリーを含めてファンになってもらえるような提案をしたいと思っています。

横浜から、出雲への旅が始まる

—最後に、イベントに来場される方へメッセージをお願いします。

三田: まずは触れて、飲んで、感じてほしい。そして、情報だけで終わらせるのではなく、出雲を訪れるその前の体験として、このイベントを楽しんでもらえたら嬉しいです 。

土井地:まずは、多くの人に遊びに来ていただきたいですね。開催場所の「ビームス ライフ 横浜」は、ビームスの中でも一番ライフスタイルを形にしているお店。古着もあれば、飲食スペースもあります。そして、せっかく来ていただいたのであれば、文明開化の地である横浜の良さも知ってもらいたい。そして、横浜をゲート(入り口)に、日本の良さに気づき、次の旅の目的地に出雲を選んでもらえるような、そんなご縁が始まる場所にしたいですね。

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EVENT INFORMATION

『出雲の文化、その継ぎ目。』
会期:2026年3月27日(金)〜4月5日(日)
場所:「ビームス ライフ 横浜」
住所:神奈川県横浜市西区南幸1-3-1 横浜モアーズ1F

現代の視点で編集した勾玉のネックレスや、花の風景を落とし込んだTシャツ、地元で愛される「出雲茶寮」のお茶など、出雲という土地の息遣いを感じる品々にぜひご注目ください。