VOL.

A TOTAL OF 17 STORIES ABOUT WOMEN WHO LIVE THEIR
EVERYDAY LIVES WITH A SENSE OF CURIOSITY AND FRESHNESS,
BROUGHT TO YOU BY THE MODEL MAKIKO TAKIZAWA.

ISSUE

2019.11.26 UPDATE

VOL.13

「外、寒いよ。」
山内 マリコ

日曜日のカフェ、

「お好きな席をどうぞ」と店員に促され

彼女はテラス席を選んだ。

ほっそりした人差し指で屋外をさす彼女に、

一緒にいた彼は「え?」と眉根を寄せ

ちょっと引き気味に言う。

「外、寒いよ」

 

月曜日のランチ、

ぞろぞろと友達が店に入ってきた。

先に来ていた彼女がテラス席から手をふると、

友人たちは入り口付近にたまったまま

「うっ」と戸惑い、

顔を見合わせた。

一人が彼女の元へやって来て

申し訳なさそうにこう告げる。

「外、寒いよ」

 

水曜日の朝、

焼きたてのパンを出す店で、

クロワッサンとカフェオレの朝食。

彼女は口の端についたパン屑を拭いながら

冬の太陽を浴びてコーヒーを飲む。

駅へ向かう急ぎ足の男が、

その様子を横目に見ながら心の中で

「ここはパリじゃねえぞ」と毒づいた。

ほかの人たちが彼女に向けるまなざしも、

どことなく批判的。

「うわー外、寒いのに」

「暇なのね」

「勘違い女め」

 

金曜日のディナー、

駆け込んだレストランはあいにく

テラス席しか空いていないという。

「そこで大丈夫です」

彼女が言うと、

彼はやっぱり渋い顔。

 「外、寒いよ」

彼女はいい加減うんざりした。

「あっ、そう」

つかつかとテラスへ出て、

一人で座った。

 

別に彼女は、

気取ってテラス席を選んでいるわけではない。

生まれつき寒さに強いのだ。

冷え性とは無縁で、むしろ暑がり。

筋骨隆々の外国人観光客が

真冬にTシャツ1枚で歩いているのを見ると、

きっと自分も前世では

あっち側の種族だったな、

と彼女は思う。

 

何度目かの輪廻転生でたまたま日本に生まれ、

この国には四季があり

冬が来ると、

誰もが「寒い寒い」と身を縮める。

そのリアクションに彼女はしばしば

首をかしげるのだった。

こんなの寒さのうちに入らないわ、と。

 

PROFILE

MAKIKO TAKIZAWA

VERYの表紙モデルを経て、2020年4月より創刊される「VERY NAVY」を新たな活躍の場に。〝お母さん業〝が大好きと言い切る彼女のライフスタイルは、愛情とセンスでいっぱい。3児の母。特技は貼り絵、飾り巻寿司など多彩!

MARIKO YAMAUCHI

富山県生まれ。2012年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。著作に『アズミ・ハルコは行方不明』『メガネと放蕩娘』『あたしたちよくやってる』など。『あのこは貴族』の映画化が決定している。責任編集をつとめたフェミマガジン『エトセトラ vol.2 We♥LOVE 田嶋陽子!』が発売中。

Model: Makiko Takizawa (NLINE) / Photo: Takanori Okuwaki (UM)

Hair: Koichi Nishimura (angle management office)

Makeup: Kazuko Hayasaka (W) / Styling: Takashi Ikeda

Location: keigoFukuda (A PLUS) / Edit: Kenichi Aono (BEAMS)