Nishiguchi’s Closet
2025年春夏の西口 修平に欠かせない11のモノ -進化し続ける クラシックの現在地-
"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。
今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。
本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。
Nishiguchi’s Closet
まず自分自身がワクワクしなくては、ましてや他人をワクワクさせることなんて、きっとできない。
この秋冬、〈ビームスF〉ディレクター、西口修平の胸をひと際高鳴らせる、選りすぐりの15アイテムを紹介。
「以前からビームスのみで取り扱ってきた〈ボリオリ〉のジャケットは、ワイドラペルにローボタン、3パッチポケット、7mm幅のコバステッチと、70年代のアメリカンテイストが漂う仕様。これを今季はスーツとして着ても面白いと思い、組下となる2タックパンツを別注しました。裾幅20cmのストレートシルエットで、ジャケットと同時代の雰囲気です。チャコールのコーデュロイにより、品と色気のあるスーツに仕上がっています」
「現在大人気の〈バブアー〉のなかでも、とくに支持されているモデルが『トランスポート』です。80年代に登場した配達員用オイルドジャケットですが、お客様のなかにはやはりオイルが苦手という方も少なからずいます。そこで本国のバブアー社に掛け合い、特別に仕上げてもらったのがウォッシュドモデルです。ウォッシュ加工でオイルが60%ほど落とされており、さらりとした肌触り。これなら周囲に気兼ねすることなく着こなせます」
「フランスの〈アルテュメス アンド コー〉は、かの〈アルニス〉の関係者がディレクターを担うハンティングブランド。なかでも代表作である『テバ』ジャケットは、20世紀初頭にスペイン国王アルフォンソ13世のためにロンドンで製作され、のちにテバ伯爵に贈られたハンティングジャケットがモチーフとなっており、立てても着られる太いラペルやドラゴンの刻印入りメタルボタンがユニーク。1枚仕立てなので、ブルゾン感覚で気軽に羽織れるのも気分です」
「スーツが復権している昨今、足元のドレスシューズもリフレッシュしたいところ。そこで〈チーニー〉に完全別注したセミブローグは、フルグレインのブラックスエードを採用しています。古き良きオーセンティックな英国靴を意識し、ノーズの長さやパーフォレーションの大きさを極端にならないよう中庸に設定。素材のブラックスエードはクラシックな英国靴には本来なく、フレンチの空気感が漂います。こうした英国とフランスをミックスした感覚も新鮮かつ現代的です」
「グレンプレイドのジャケットは男なら、1着は備えたい定番のひとつですが、その最高峰をつくりたいと思い、完成させたのが〈ビームスF〉のオリジナルです。ベビーアルパカ100%を用い、しかも目付け390gという贅沢なドーメル社の生地を使用。仕立てはリングヂャケットに依頼し、手仕事を多用した『フィレンツェ』モデルを採用しました。インポートブランドにもけっして引けを取らない、クオリティとプライスを実現した自信作です」
「かつてパリにあった〈エミスフェール〉は、フレンチトラッド発祥の伝説的ショップとして語り継がれていますが、その〈エミスフェール〉が〈ベルナール ザンス〉に8番目に作らせたトラウザーズがこの『H8』です。『H8』とナンバリングされたそれは、極太の2インプリーツで股上もかなり深く、いま穿くと面白いと感じました。生地も目付け400gのヘビーなウールナイロンフランネルを採用。重量感を楽しんでもらいたい1本です」
「リラックスした雰囲気が継続して気分な今季、なにかと活躍するのがカーディガンです。〈レコントラント〉の1着はモヘヤのように長い毛足が特徴ですが、実はブルーフォックスとウールがミックスされており、非常に軽く滑らか。モヘヤよりもふわりとした柔らかな表情で、ラグジュアリーな雰囲気満点です。やや青みがかった絶妙なチャコールグレーの色合いも上品で高級感があります。こうしたベーシックなアイテムこそ、上質なもので差をつけたいですね」
「今季大人が被れるベースボールキャップを提案したく、見つけたのがフランスの製帽ファクトリーである〈クランブ〉です。1946年創業の老舗で、著名なメゾンの帽子も手掛けており、裏地をきちんと張るなどつくりは素晴らしい。選べる素材も大人らしいものが揃っており、ウール系を中心に別注しました。浅すぎず深すぎないフォルムは日本人にも合っています。ツイードジャケットやニットに合わせてほしいですね」
「ビスポーク主体の〈イガラシ トラウザーズ〉初の既製モデルは、〈ビームスF〉と共同開発で誕生しましたが、この度初のビスポークラインで作るモデルが完成しました。60年代の英国サヴィル・ロウのテーラーで仕立てたトラウザーズをイメージした、2インプリーツのトラウザーズで、かんぬきやボタンホールなど随所に手縫いを駆使。ハリコシのあるデッドストックのサヴィル クリフォード社製ウールリネンで仕上げました」
〈ロイド フットウェア〉の最高峰オリジナル英国靴『マスターロイド』は、現在直営店以外はビームスのみの取り扱いです。その最新別注モデルがスエードのチェッカブーツ。久々に気分なチャッカをフルグレインスエードとオークバークソールを用い、返りの良さと丈夫さを併せもつスペードソール仕様で仕上げました。細すぎず丸すぎないフォルムも絶妙です。またこの品質でこの価格は、他ではまず手に入らないでしょう」
「秋冬に穿くホワイトパンツは粋でいいものですが、新鮮な1本がほしくなり、〈ジーニック〉に別注したのがこのモデルです。ベーシックなシルエットの5ポケットスタイルで、素材には60年代に登場したオフホワイトのコットンピケを採用。ディテールもシンプルで無駄がなく、こうしたオーセンティックなモデルは探すとなかなかない。シルエットもキレイでドレスアイテムとも相性がよく、1本あると間違いなく重宝するボトムスといえます」
「ここ数年、継続して袖を通したいと思わせられる、クラシックなケーブル編みカーディガンを今季はイタリアのファクトリーブランド〈バフィ〉に完全別注しました。オーストラリアのジーロン地方で育った仔羊から採取される極上ウール、ジーロンラムをフルケーブル編みでたっぷり用い、緩すぎず細すぎない程よいバランスのボディに仕上げています。ジャケット代わりにきちんと羽織れる、コストパフォーマンスにも優れた1着です」
「今、また新鮮に感じる“レトロダウン”を大人にも用意したいと思い、〈ウールリッチ〉に完全別注しました。ベースは80年代初頭の中綿ジャケットですが、天然ダウンに変え、シェルもレトロな雰囲気と上品さを併せもつ素材に変更。裏地も大人らしく着られるようにトーン・オン・トーンにしました。ただし、羊の刻印入りのドットボタンや結ぶタイプのウエストドローコードなど、細部やデザインはオリジナルを踏襲しています」
「今季気になるアウターのひとつが、クラシックなレザーのフライトジャケット。〈チンクワンタ〉に完全別注したのは、第二次大戦時のアメリカ陸軍航空隊が用いていたA-2がベースです。オリジナル同様にホースハイド(馬革)を用いていますが、パターンや襟型、ステッチカラー、リブ、ファスナーなど細部まで指定。オリジナルの雰囲気を踏襲しつつ、現代的かつ軽快なスタイリングが楽しめる1着になりました。丈夫な馬革ながらも柔軟で着心地も抜群です」
「某ブランドで長年コートを手掛けた、佐久間英裕氏が2021年に立ち上げた〈コンチェット〉。ヴィンテージから着想した素晴らしいコートが揃いますが、1枚袖のバルカラーがインラインにはなかったので別注しました。ベースは英国製のヴィンテージですが、美しく肩が落ち、エレガントなドレープが前後身頃に表れるなど、同氏独自のノウハウが型紙や仕様に込められています。しっかりしたウールコットンギャバジンの別注カラーです」
「私が携わるクラシックスタイルに限らず、近年は大きなトレンドや潮流がファッション全体でなくなってきているように感じます。ジャンル内でさらに細部化し、ファッションがよりパーソナルなものになりつつある。これはひとえにネットの影響でしょう。かつてはファッション雑誌などの限られた情報しか触れられませんでしたが、現在はネットで個人が興味を抱く世界中の情報にアクセスできるからです。
そういった状況を鑑み、〈ビームスF〉のアプローチも変化してきました。世界的な潮流に対してではなく、日本のセレクトショップとして、日本のお客様によりフォーカスした提案を心掛けるようになったのです。その一環として、私がディレクターに就いてからは、〈ビームスF〉ではシーズンごとのテーマやコンセプトをあえて設けないようにしています。これはよりパーソナルなアプローチがしたいからです。バイイングもテーマに縛られることなく、より自由に行うようになりましたが、だからといってなんでもありというわけでは当然ありません。私たちが提案しているのはクラシックスタイルなので、扱う服もやはりクラシックでなければならない。それは現代的に着こなせるようにアレンジされていながらも、普遍的で末長く愛用できる服であるということです。ワンシーズン着たら飽きられ、手放されてしまうような服は、どんなに高品質なものでもクラシックとはいえないし、〈ビームスF〉で扱うべきではないでしょう。
また近年のキーワードにもなっているヴィンテージという視点も、バイイングやオリジナル開発を行う上で大切にしています。ヴィンテージと聞くと古着を思い浮かべますが、現代の服はほとんどがベースとなるヴィンテージが存在します。それらを知識として得ておくことは、自分自身のインスピレーションにもなっており、とても有用なのです。それに現代のベースとなるということは、ヴィンテージもまた普遍的なものである証しでもあるので。クラシックともども、そういった普遍的な古いものに敬意を抱きながら服を用意することは、我々にとっては非常に大事だと感じています。
こうして世界中から選りすぐった品々をどう着るかは、お客様の自由です。“今季はこう着なければならない”といったテーマはないですし、なにをどう着ても格好良くなるものだけを用意していますので。ただし、自由といってもクラシックスタイルの基本ルールや、社会的な規範には則っているべきだとは思います。ですが、それらさえ守っていれば、あとはお客様一人ひとりが自由な発想で着ていい時代だと思うのです。
セレクトショップ本来の醍醐味とは、何か面白いものと出合えるということ。大きな潮流に翻弄されなくなったことで、そんな原点に立ち返ることができたように感じています。45周年の節目を迎えた〈ビームスF〉は、今後も新しい発見があるレーベルを目指しますので、どうかご期待ください」
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2025年春夏の西口 修平に欠かせない11のモノ -進化し続ける クラシックの現在地-
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装いに新たなムードを吹き込む次なる一手 西口修平のアップデートに 欠かせない10の存在
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装いに新たなムードを吹き込む次なる一手 西口修平のアップデートに 欠かせない12の存在