FEATURE

ワクワクを失わずに
「つづく服。」を叶えてくれる
黒染めというひとつの選択肢
地球に、人に、動物に優しいことを、と言われるとなんだか壮大で難しそうだし、建前だけじゃ続かない。
でも、ワクワクを諦めたくない私たちにだってほんの少し視点の切り替えをするだけでできる何かはきっとあるはず。
そんな“つづく”のリアルなヒントをBEAMSスタッフの日常から切り取る連載企画。
今回は特別編としてビームス工房のサービスのひとつ、黒染めにフィーチャー。
服を黒く染める過程も特別に見学させていただきました!
「この連載ではオープン直後にも紹介した修理専門店、「ビームス工房」。(過去の記事はこちら)あれから一年が過ぎ、様々なお客さまと触れ合ってきた中で、洋服を長く愉しむことをよりたくさんの方に知っていただきたいという想いが私たちの中でも一層強くなってきたように思います。飽きてしまった、サイズアウトした、汚れや色褪せが目立ってきた、などという時、すぐに手放してしまわないでほしいのです。カスタムやリメイクをすれば思いもしなかった新鮮な形でまた愉しむことだってできる。その醍醐味は正直なところ、ファストファッションの服では味わえないかもしれません。でも、素材や縫製などのしっかりしたものなら形を変えながらずっと愉しめる、と分かっていれば、少し高くても質の良いものを選びたくなる。何か新たに買う、というときに頭の片隅にそんな考えがあると、より買い物も楽しくなる気がします。そんなリメイクのひとつの方法として、ビームス工房が提案したいのが”黒染”なんです。(ビームス工房 荒瀬)」
What’s KUROZOME?
ビームス工房は黒紋付だけを約100年間染め続けた京都紋付と連携しています。昔は大量の染料を使い何度も染め重ねるという手間を要することから黒紋付はとても高価なものだったそう。しかし、職人の経験と勘をデータに置き換え、黒紋付のための染めの伝統技術を踏襲しつつも洋服の染め替えのために編み出した新しい黒染は、独自の反応染料と深黒加工で新たな可能性を生み出しました。今回は二着の服をお預けし、その黒染の様子を特別に見せていただきました。
地下水を温め、粉末の染料を溶かす。5kgほどの染料と750-800リットルの水を加えて混ぜたもので25kgの衣料を染めることができるそう。この染料は着物用とは違い、赤ちゃんでも安心な発がん性のないエコテックス認証染料。洗濯をしても落ちないのも特徴のひとつ。
機械の中は最も染料が染まりやすい60度ほど。助剤(染めを助けるもの)と服だけで5分、そこに溶かした染料を加え30分、その後アルカリ剤を入れて45分という工程で約80分間機械の中で衣料を回しながら染めていく。
生地に定着しなかった染料を洗い落とした後、天日干し乾燥、黒をより深い色にする深黒加工、さらに天日干し乾燥を行って完成。綿や麻など天然素材は深い黒に染まるが、化学繊維は染まらないため、写真のように生地の種類や割合により染まり方が変わる。実際に染めてみないとどのような状態になるか予想がつかないのも楽しい。
After KUROZOME
実は今回京都紋付さんに染めていただいた洋服は、現在つづく服。とビームス工房とともにインスタグラムでのプレゼントキャンペーンを行っている(※)、気候変動をテーマにした音楽イベントを運営する『Climate Live Japan』のお二人のもの。すっかり姿を変えた洋服を「ビームス工房」に取りに来ていただきました。(※)キャンペーンの詳細は後半の<キャンペーン概要>をご覧ください。
黒く染まらなかったウエストのレザー部分や刺繍のステッチ部分がアクセントとなり、まったく違う雰囲気で戻って来た洋服に驚く二人。「予想と違っていて面白い!」と嬉しそうな表情をのぞかせていました。
「全部真っ黒に染まることを予想していたら、刺繍はイエローのまま残ったのでディテールが引き立って、まったく別の服になったみたいです。シミになっていた部分があったのですがそれも分からなくなり、染める前よりも素敵になって嬉しい。素材感も染めた方がより柔らかくなるなんて、予想外ですね!(Climate Live Japan高橋さん)」
「チロリアンシャツが好きで、実は3着も持っていたので1着くらいは染めてもいいかなくらいの軽い気持ちだったのですが、思った以上に黒が深い色でびっくりしました。白かった頃よりこの服のことがわかる感覚が不思議。麻特有のチクチクした感じがなくなって着やすくなり、染めてよかったです(Climate Live Japan中上さん)」
「最近の服は強度の問題で糸は天然素材ではなく化学繊維が混ざっているものがほとんど。だからステッチは染まらないことが多いですね。今回は天然素材の服を意識して選んでいただいたこともあって服自体は深いブラックになって戻ってきましたが、繊維の混合率によってグレーなどに染まることもあり、そのサプライズもこの黒染の楽しみ方のひとつ。詳細は京都紋付さんの企業秘密らしいですが、生地がより柔らかく着心地よくなるのも嬉しいですよね。(荒瀬)」
About Climate Live Japan
-現在、つづく服。とビームス工房は『Climate Live Japan』とのプレゼントキャンペーンを行なっていますが、その経緯を教えてください
「洋服をもっと長く愉しんでほしい、という想いのもと、企業として様々な視点からの取り組みを検討していたところ、気候変動問題を強く訴えている『Climate Live Japan』の活動を知り、音楽を通じて発信しているところにも共感してコラボレーションに至りました。(荒瀬)」
– 『Climate Live Japan』はどんな団体なのですか?
「『Climate Live Japan』はイギリスの高校生が世界で多発している気候変動による自然災害に危機感を覚えたことから始まった学生発信プロジェクトです。2019年に約40カ国に広まり、気候変動について考えたり話したりするきっかけをつくる目的で、それぞれの国で大小様々な音楽ライブを行なっています。日本では2020年に活動がスタートし、2021年には2回のオンラインライブを行いました。Climate Live Japanのイベント活動以外にも国内外のアーティストに働きかけてコンサートで啓蒙スペースを設けてもらったり賛同メッセージを発信してもらうこともしています。(高橋さん)」
–お二人は『Climate Live Japan』にどうして参加されたのでしょうか?
「パートナーが環境問題にフォーカスし始めていたときにその影響で何か自分にもできることがないかと考えていたところ、ボランティア募集を知って応募しました。僕は学生ではないのですが、社会的なメッセージを歌っているアーティストを見つけるという役割だったので、昔から音楽がとにかく好きな自分にもできそうだと思ったのがきっかけです。日本では社会問題を歌うことをタブーとする風潮がまだまだあるので賛同アーティストを見つけるのはかなり難しい。音楽の楽しみ方は人それぞれだと思いますが、個人的には、弱者の声を拾い上げて日常では出会わないものを見つけるためのものでもあると思っているので、海外のように社会問題と密接なアーティストが多くいることが当たり前になるといいなと思います。(中上さん)」
「私は元々環境問題にとても興味があったのですが、どうにかしたいのに立ち向かいたい問題が大き過ぎてうまくアクションできず一人でもどかしい気持ちでいたんです。でもこの活動をするようになって話せる仲間がたくさん増え、とても気持ちが楽になりました。環境問題に興味を持ったらペットボトルを使わない、などの行動から始めるのももちろん良いことですが、こうして活動団体と触れ合うことも私はおすすめしたいんです。最初は勇気がいることかもしれないけれど、そこにはたくさんの情報とそれに対するアイデアがある。話すことによって日常に変化も生まれます。いきなりハードルが高いな、と思う人は是非私たちのような音楽イベントに参加してみてほしいなと思います。(高橋さん)
-今回のつづく服。・ビームス工房とのキャンペーンへの想いを教えてください
「僕は元々繊維業界で働いていたので洋服は好きなのですが、こういった活動を始めてから環境問題が気になって、本来ファッションを楽しんでいた感覚が失われてしまい、疲れることがあったんです。かっこいいと思うけれど環境負荷が高いものと、ときめかないけれど環境負荷の低いもの、やはりどうしても後者をとってしまう。でも、黒染めという選択があると知って、またファッションに対する高揚感が芽生えた上にワンランク上の愉しみ方を学んだ喜びを得ることができました。洋服を長く着るために良いものを買う、という大切さを感じることもできる黒染めをたくさんの人に知って欲しいので是非このキャンペーンに参加してもらいたいです。(中上さん)」
<キャンペーン概要>
10月31日までの期間、Instagramにて共通ハッシュタグ #clj_beams_つづく服 を付けて「つづく服。」についてご投稿いただいたお客様の中から、抽選で「ビームス工房の黒染め利用券」をプレゼント!応募条件の詳細やお問い合わせはClimate Live Japanのインスタグラム(https://www.instagram.com/climatelivejapan/?utm_medium=copy_link )まで
これからのビームス工房の”つづく”
日頃「ビームス工房」で黒染をご紹介していますが、お客様もスタッフも、興味を持ってくださる方が予想以上に多く、京都紋付さんの黒染に対しての世間の高い関心を実感しています。実際黒染された方々からも「イメージよりも良い仕上がり」「予想外の仕上がりが面白い」など、耳に入ってくるコメントは良いものばかりです。
まずは、個人ができる環境に対しての“小さな取組み”として、“洋服を永く愉しむこと”からはじめる。その積み重ねが“大きなこと”になったりしますよね。ビームス工房は、黒染はもちろんのこと、様々なサービスを通してお客様個人に喜びや感動を与え、そのきっかけとなる活動を広げていきたいです。(ビームス工房 荒瀬)
開催概要
日時:2022年10月16日(日)16:00〜
会場:渋谷WWW/WWWX
出演アーティスト あっこゴリラ/ermhoi/碧海祐人/KOM_I/春野/TAMTAM
詳細はこちらhttps://www.instagram.com/climatelivejapan/?utm_medium=copy_link
Photo:Kazuhiro Fukumoto〈TAKMI〉 Direction:Takako Shirasawa