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天久聖一と来夢来人をスチャダラパーのBoseはどう見る? 天久聖一と来夢来人をスチャダラパーのBoseはどう見る?
2022.6.17

天久聖一と来夢来人をスチャダラパーのBoseはどう見る?

かわいらしいキーホルダーやステッカー、思わずニヤリとしてしまうTシャツを展開している〈来夢来人(らいむらいと)〉。〈トーキョー カルチャート by ビームス(TOKYO CULTUART by BEAMS)〉でも大人気で、5月27日(金)〜6月16日(木)までポップアップストアが開催されました。そんな〈来夢来人〉を主宰するのは、天久聖一さん。漫画家ではあるものの、映像制作をしたりコラムを書いたり、〈来夢来人〉をつくったり…。その多岐にわたる活動をさらに深く知るために、旧知の仲である「スチャダラパー」のBoseさんを交えてお話を聞いてみました。

PROFILE

右:天久聖一
(漫画家など)
1989年『NEWパンチザウルス』(マガジンハウス刊)にてギャグ漫画『自画の目覚め』でデビュー。90年代には、パルコが発行するフリーペーパー『GOMES』にて連載したタナカカツキとの共作『バカドリル』や、『週刊spa!』の読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』などを手掛ける。そのほか、演劇の演出やドラマの脚本など幅広く活動している。
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左:Bose
(ラッパーなど)
1988年に結成し、1990年に『スチャダラ大作戦』でデビューを果たしたラップグループ、「スチャダラパー」のMC。1994年には小沢健二と共作した『今夜はブギーバック』が大ヒットを記録。2020年にデビュー30周年を迎え、アルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリースした。ゲームや車やキャンプなど多方面に趣味を持ち、あらゆるシーンで活躍中。
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天久聖一とは何者か。

ー 活動の幅が広すぎる天久さんが一体どんな人なのかを紐解くため、今回はご友人を代表してBoseさんにお越しいただきました。

Bose:とりあえず、「電気グルーヴ」の隠し子ってことを伝えないと。

天久:「電気グルーヴ」のカプセル怪獣です(笑)。

ー 「スチャダラパー」でも一緒にお仕事をしたことはありますか?

Bose:何度かありますよ。ぼくらでつくっている『余談』って雑誌で対談してもらって、ステッカーをつくってもらったり。

天久:ヤンキーっぽく漢字で「スチャダラパー」って描いたやつね。

Bose:でも、「電気グルーヴ」と一緒にやっていることが多いから、いろいろ被らないようにと考えると、簡単には頼めないんですよ。

ー 「電気グルーヴ」とは、どのようにして知り合ったんですか?

天久:漫画家チームで草野球をしていて、(ピエール)瀧さんのチーム「ピエール学園」と交流試合をしたんですよ。ぼくは「人生」(「電気グルーヴ」の前身バンド)のファンだったので、その打ち上げで声を掛けさせてもらいました。それから「ピエール学園」に所属させてもらうようになって、「スチャダラパー」とも仲よくなっていったはず。

Bose:ぼくらは同い年で、アニと瀧が1歳上なんです。

天久:若い頃、「スチャダラ」がライブで大阪に行った時、ぼくも一緒に遊びに行ったりしていました。そこでバッファローくん(バッファロー五郎A)とか、芸人さんとも遊んでいて。

Bose:よく遊んだよね。天久さんは漫画家だから、サインを求められると別の漫画のキャラクターを描いて渡していたんですよ。

天久:モテたいがために(笑)。

Bose:ぼくらはそれを見て「そんなわけねえだろ!」って(笑)。まあでも、本当に若い頃からよく遊んでいましたよ。

天久:漫画家とかミュージシャンとか、しかも辺境にいるような人たちが混ざって遊んでいました。

Bose:そうそう。楽器の弾けないミュージシャンと、漫画を描かない漫画家で遊んでた。その時はもう、『バカサイ』(バカはサイレンで泣く)をやってたでしょ?

天久:そうですね、まだありますよ。ネタになる芸能人も30年以上変わらずに(笑)。

Bose:ヤバイね! 笑点じゃん(笑)。ネタとして新たに入ってくる人もいるんですか?

天久:いますよ(笑)。事件を風化させないために年表の語呂をよく考えていて、今日の午前中は仕事が手に付かないくらいでした。そんな時間を“気を練る”って呼んでるんですけど、その時間が長いんです。

Bose:なんで覚えとかなきゃいけないんだよ(笑)。それをずっと考えてるおじさんになっちゃえば?

一同:(笑)。

ー お二人がよく遊んでいた頃は『バカドリル』を連載していた頃ですか?

天久:『バカドリル』も連載していましたね。

Bose:『バカドリル』はもちろんだけど、ちゃんと漫画も描いてたし、「電気グルーヴ」のMVも大変そうだったよね。

天久: MVをつくったりしていて。3年前にも『電気グルーヴ30周年の唄』の監督をやらせてもらっていて、この前みんなに観てもらえるように、YouTubeで公開されたんですよ。「電気グルーヴ」の歴史を詰め込みながら、完全にファン目線でつくりました。

Bose:ギャグ漫画とかMV制作とか、いろいろやってきたけど、『電気グルーヴ30周年の唄』がいまの天久さんの集大成的な感じがするよね。いろんな要素が詰まっているから。

天久:一番分かりやすいかなって思う。

Bose:「電気グルーヴ」の『モノノケダンス』もすごいよね。あれ1人でつくったんでしょ?

天久:そうだけど、半分実写だったから、いろんな方が関わってくれて。ギャグ漫画でデビューしたけど、漫画を描く画力がなかったから、ギャグという概念だけでここまできた感じ。ぼくのギャグいりませんか?って(笑)。

一同:(笑)。

Bose:ギャグのみの漫画なしでね(笑)。

ー そんな天久さんですが、ご職業を聞かれたらなんと答えますか?

天久:なんだと思う?(笑)。

Bose:漫画家? 『サヨナラコウシエン』とかいろいろ描いているけど、漫画家っていえば手塚治虫がいるから、ど真ん中の漫画家を名乗るのは少し違うかも(笑)。

天久:じゃあ、キーホルダー作家(笑)。

Bose:みうら(じゅん)さんも、よく同じようなことを聞かれるみたいで、「イラストレーターなど」って付け足したとおっしゃってて、それが正しいなって思う。ぼくも「ラッパーなど」って言うようにしたし。

天久:天久聖一が職業です、みたいなカッコいいこと言えないからなあ。

Bose:〈来夢来人〉のTシャツが売れているから、Tシャツの人でもあるし。いっそのこと、“海人(うみんちゅ)”Tシャツとかその辺全部「おれがつくりました」ってどんどん言っちゃえばいいんじゃない?(笑)。

天久:それいいですね(笑)。売れているものは全部、「ぼくがつくった」と言っちゃおうか。ネタもののデザインをつくっているから、ちょっとでも間違えると、よくあるおもしろ系Tシャツになっちゃう。そっちの誘惑が強くて(笑)。

Bose:誘惑って(笑)。

天久:まだ、そのボーダーラインを探っているところなんです。ヒップホップみたいなカルチャーに憧れはあるんですけど、ストリートでもないし…。

Bose:たしかに、絶妙なバランスでつくってるから難しいよね。

ポップさが絶妙な〈来夢来人〉。

ー 〈来夢来人〉を始めたのはいつごろですか?

天久:〈来夢来人〉はもともと、タナカカツキさんに付けてもらった個人事務所の名前なんですよ。でも、カツキさんは、ぼくがなにかを始めようとしていると思っていたらしくて、「なにもやらないの?」って言われて。かたやカツキさんは、コップのフチ子で人気になって、いまはととのっていて。

Bose:サウナね。カツキさんは、ずっと前からサ道って言い続けてた。あと、水槽学部とかもあったね。

天久:カツキさんはどれもずっと辞めないんですよ。若いイケメン俳優も“ととのう”って言うようになるとはね。

Bose:天久さんもロゴのパロディTシャツをつくり始めたのは結構前じゃない?

天久:ロゴをパロディしたTシャツは、〈来夢来人〉より前から。“羅生門”は早い段階で「スチャダラ」のみなさんに見てもらっていて。伊藤ガビンさんという方が、Tシャツを1枚からつくれるオンデマンドの仕組みを始めた時に、いろんな人と一緒に参加していたんですよ。その時は知らない間に売れて、月にいくらか収益が入ってきていただけだから、あまりつくっている実感はありませんでしたね。

ー それがいまの〈来夢来人〉に繋がった、と。

天久:そうですね。そしてコロナ禍がきっかけのひとつ。ロゴのパロディシリーズのイメージが強いと自分自身が感じていたから、一般ウケするアルファベットのキーホルダーをコロナ禍の少し前からつくっていたんですよ。そうしたら、コロナ禍で仕事もどうなるか分からなくなったから、自分でモノづくりをして売っていこうと思って。世の中の混乱に乗じる形で売り始めました(笑)。

Bose:アルファベットシリーズはポップだから、マダムにもウケるかわいらしさがある。

天久:80年代レトロっぽい色を使って、イニシャルは誰でも持っているからアルファベットにしました。商売っ気を出して(笑)。

Bose:しかもギャグ少なめ(笑)。

天久:親戚の法事に参加したみたいに、ギャグは抑えめ(笑)。

ー 〈来夢来人〉は〈トーキョー カルチャート by ビームス〉の売上ランキング上位で、毎週のように発注させてもらっています。

天久:そう、売れてるんすよ! うちのかみさんがキーホルダーの金具を付けて、ぼくも手伝って。

Bose:一つひとつ手作業で(笑)。アルファベットシリーズって、要はドライブインとかに売っている名前のキーホルダーみたいな感じだもんね。ご当地限定もつくってみたら? どこに行ってもお土産屋にあるねみたいな。

天久:それくらいお馴染みのものになればいいですけどね。

Bose:線が太くてポップだから、誰でも好きだと思う。ステッカーとかキーホルダーだと、気軽に欲しくなっちゃう。

天久:“早く寝ろ!”もみんな欲しがってくれて、こんなに反応がいいとは思わなかった。言葉選びって大事。

常に人気のキーホルダーシリーズ。

ステッカーもバリエーション豊富。

ポップアップストアでは、別注デザインなど、普段は展開のないTシャツもラインナップ。

ー その言葉は直感的に選んでいるんですか?

天久:ポンと思い付く言葉もあるけど、ずっと頭にこびりついている言葉が意外とよかったりするんです。“南無阿弥陀仏”みたいに、文字をキャラにするとポップになったりもします。

Bose:そこが絶妙。真似しようと思ってもできないんですよ。たとえば〈BAPE〉のMILOみたいに、誰かが似せようとしても全然そうはならない。

天久:ぼくはそこまでじゃないっす…。

Bose:いやいや、本当にそう思うよ。“南無阿弥陀仏”とか上手だもん。

天久:でも、コラージュをやってみても、〈アンダーカバー〉と同じようには絶対にできないですよね。ロングスリーブの袖のプリントとか、やってみてもなんか違うんですよね。

Bose:あれは難しいよね。

天久:そうそう、ダセー!ってなりやすい(笑)。

ー 〈来夢来人〉のTシャツはポップでかわいらしいデザインが多いですよね。

天久:買ってくれている方は、40代くらいも多いんですよ。子どもがいて生活が忙しいから、たまにはくだらないTシャツを着たいのかなって思う。おもしろTシャツは1枚くらいは持っておきたいじゃないですか。

Bose:キッズサイズもあるから、小さい子どもにこっそり着せたいって気持ちもあるよね。“音楽フェスティバル”Tシャツを着せて「サマソニ」に連れて行きたい(笑)。

天久:ぼくも子どもに着せていますが、なんの疑いもなく着てくれています(笑)。寿司を食べに行く時に“寿司metal”を着て行ったり。

Bose:みんなで着て行ったら楽しいよね。

ー 〈来夢来人〉の販売はウェブが中心ですか?

天久:そうですね。自分でECを運営しているからアクセス解析ができるんですけど、すごい発見があって。ポメラニアンの“ポメタル”を買う人は、ポメラニアンが大好きなんですよ!(笑)。検索して辿り着いてくれる人が多くて、広がったなって。

Bose:ポメラニアンだけで響いたってこと?(笑)。

天久:そうそう。『バカドリル』には興味ない(笑)。

Bose:犬種が当たったんだね(笑)。ポップアップはあまりやっていないの?

天久:〈トーキョー カルチャート by ビームス〉では2回目で、あとは友達のお店でちょっとだけ。

Bose:いつかは路面店じゃない?

天久:急行が止まらない駅で、街角にあるガラス張りの不動産屋みたいなお店がいいな。

Bose:逆に〈グッチ〉の隣とかは?(笑)。

天久:〈バレンシアガ〉の店内もいい(笑)。立ち退かない家みたいな。ハイブランドのお店に“非売品ピンズ”を置いて回ろうかな。

Bose:それいいじゃない(笑)。勝手に流行ってくれたらいいもんね。バンクシーみたいに。実は天久でしたって。

ー 今後、〈来夢来人〉でどんなものをつくろうと考えていますか?

天久:いま月刊Tシャツとして、毎月リリースしています。『ディアゴスティーニ』みたいに(笑)。5月号は“早く寝ろ!”Tシャツ。

Bose:毎月っていいね。定期購買できて、12ヶ月分で収納ボックス付きみたいなこともできるんじゃない?

天久:それいいですね。全部集めてくれたら祭壇を届けようかな。最後はお墓になりますと。

Bose:急に宗教(笑)。

天久:ぜひ揃えてもらいです。オフ会とか、クラウドファンディングで映画化もしたいですね。

ー これからも〈来夢来人〉はいろんなものをつくっていくということですね。

Bose:話がブレちゃってるよ(笑)。

天久:どこまでブレていけるかってところもありますね。

Bose:でも、どうなっていくか分からないもんね。サ道だって、こうなるとは誰も想像してなかったし。続けていくことが大事だね。

天久:これからもブレていきたいと思います。

INFORMATION

〈来夢来人〉のアイテムはBEAMS公式オンラインショップからご覧ください。

  • Photo_Momo Angela
  • Text_Shogo Komatsu
  • Edit_Shuhei Wakiyama(Rhino inc.)
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