カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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国際アートフェア「Tokyo Gendai」を楽しむために知っておきたいこと。

今このときも、作品が生み出され、裾野が広がり続ける現代アートの世界。時に心を動かし、時に煙にまくような現代アートを深く楽しむには、数多くの作品を直接観て、感じて、考えるという体験が大切です。でも、やはりそこには頼れるガイドが必要でしょう。作品を鑑賞し、購入することができる「Tokyo Gendai(東京現代)」は、厳選された世界の名だたるギャラリーや作品を一堂に集めた世界レベルの国際アートフェア。2024年7月5(金)〜7日(日)に横浜で開催される、このイベントのディレクターを務める高根枝里さんを迎え、どうすると「Tokyo Gendai」ひいては現代アートを楽しめるのか、アート好きなビームススタッフ2名と語り合いました。

profile

中:高根枝里 (Tokyo Gendai フェアディレクター)

ニューヨーク大学大学院卒業。セゾンアートギャラリーのアートディレクター、日本のGoogle Arts & Cultureでプロジェクトマネジャーを歴任。「Tokyo Gendai」第一回から、世界レベルのアートフェアを目指して、フェアディレクターに就任。
「Tokyo Gendai」Instagram

左:奥山ゆらら (ビームスT 原宿 スタッフ)

秋田県出身。高校卒業後上京。兄の影響からメンズライクなファッションに興味を持ち「ビームスT 原宿」にアルバイト入社。休日はもっぱらカフェ巡り、ギャラリーを散策。アートの造詣を深めたく、日々奮闘中。
スタッフページ

右:吉田ゆり (ビームス 新宿 スタッフ)

東京都出身。美術大学卒業後、服だけでなくアート作品も取り扱いのあるBEAMSに惹かれて2021年に入社。現在ものんびりとイラスト展示・制作活動中。好きな美術館は「東京都庭園美術館」。
Instagram

国際アートフェア「Tokyo Gendai」では何ができる?

まず「Tokyo Gendai」は、どんなイベントなのか教えてください。

高根 国際的なアートフェアで、去年に続き今年は2回目の開催です。70のギャラリーに出展していただき、内訳としては6割弱くらいが海外のギャラリーで、そのうち西洋とアジアが半々、残りが日本のギャラリーです。特色としては、日本ではなかなか見れなかったスケール感と海外色の強い国際的なギャラリーが揃っていること。海外のお客さんからすると、これだけの日本のギャラリーとアーティストに出会えるのは、滅多にない機会なのかなと。会場は横浜にある「パシフィコ横浜」の展示ホール C/Dです。約1万平米というかなりの広さがあり、各ブースがゆったりしていて、作品が見やすい環境です。これも世界基準のアートフェアの条件ですね。

広いということですが、会場の中はどのようになっているのでしょうか?

高根 会場内は大きく分けると、3つのセクターに分かれています。入って中央にあるのが、「Galleries(ギャラリーズ)」セクターと呼ぶ、著名なアーティストやギャラリーのある王道的なゾーン。そこから先に進むと、キュレーションされた展示のあるセクター「Eda ‘Branch’」があり、さらに奥には若手から中堅どころのアーティストやギャラリーまで揃うセクター「Hana ‘Flower’」があります。また、去年と違うのは、インスタレーションがひとつから5つに増えたこと。そのなかには歴史的な彫刻の作品もあれば、アーティストがパフォーマンスをするインスタレーションもあります。他にも観客とインタラクティブに会話をしながらできあがる観客参加型の作品があるなど、インスタレーションは今年の目玉のひとつです。

奥山 「Tokyo Gendai」に参加される、注目のギャラリーやアーティストをお伺いしたいです。

高根 まずは世界のトップレベルのギャラリーが見れるということで、大手グローバルギャラリーのひとつ「Pace Gallery」です。このギャラリーは今年「麻布台ヒルズ」にもオープンする予定で、日本にギャラリーをオープンすることはアート界隈ではかなり注目されています。若手のギャラリー・アーティストにも、面白いところはたくさんあるんですが、中でも今回初めて参加する「Alison Jacques」というロンドンのギャラリーのスペースで展示される、若手の女性アーティストのソフィー・バーバーさんの作品に注目しています。彼女は、アレックス・カッツさんやデイヴィッド・ホックニーさんといった著名なアーティストの作品を彼女のテイストにより再現する作品をつくっていて、作品のキャンバスに端切れを使っていたりと、環境にも配慮していて面白いなと。

Sophie Barber, A cake for the party, 2023, oil on canvas
Courtesy: Alison Jacques, London © Sophie Barber; photo: Michael Brzezinski

奥山 環境への配慮とか、いまの社会とも繋がっていますよね。

高根 そうなんです。あとは、去年から引き続き出展してくださっているギャラリーさんたちもたくさんいます。北京の「SPURS Gallery」のヤン・ダンフルさんというアーティストの作品も面白いですね。たとえば、ダンボールでできた宅配物のボックス自体を作品にしていて、それを刺繍ステッチで丁寧に再現されてるんですが、素材はダンボールだから見た目は本当にただの宅配物の梱包箱なんです。

Danful Yang, Packing Me Softly, 2021
Hand embroidery on canvas, foam
Courtesy of the artist and SPURS Gallery

高根 でもコンセプトを知ると面白くて、中身は誰もが重視するけど、実際に守ってくれている外側はポイっと捨ててしまって、誰も注目しないと。たとえば、都市計画でもクリーニングする人たちにリスペクトを払わないのに、都心のクリーンさはみんなが求める。だから、本当に守ってくれている人たちにもうちょっと注目していこうというコンセプトが裏側にあります。このアーティストもそうですが、最近は面白い若手アーティストがどんどん増えてきている印象です。「Tokyo Gendai」では、大御所から注目の若手アーティストやギャラリーまで、そのミックス感も楽しんでもらいたいですね。

昨年の会場の様子。
Courtesy of "Tokyo Gendai"

アートフェアは、観るだけでなく作品を購入できるというのが美術館展示との違いですか?

高根 それは大きな違いだと思います。でも、それ以外にもあって、海外と日本のギャラリーがこれだけ一箇所に集まって作品を展示すること自体がアートフェアでしかありえません。私も学生時代は作品を買うなんてもちろんできなかったけど、観にくるだけでも楽しいイベントなので、作品を購入するかもしれないという未来を見据えて、鑑賞してもらえるといいかなと。作品によっては買いやすい価格のエディションがあるものもありますし、場合によっては持ってきていない作品を紹介してくれることもあります。ギャラリーとコミュニケーションを取れるのも魅力のひとつですね。

吉田 会場は、美術館のシーンとした静かな空間とは違いますよね。

高根 ガヤガヤしています。あとは、歩いて鑑賞していると、疲れるじゃないですか(笑)。「Tokyo Gendai」では、休憩したい時には、レストランでご飯も食べられるし、雑誌も置いてあるメディアカフェで休むこともできるんです。

改めて問う、現代アートとは?

現代アートと言っても幅広いと思うんですが、現代アートってなに? という質問には普段はどうやって説明しているんですか?

高根 うーん、それがまた面白さのひとつだと思うんですが、説明が難しいんですよね。多面的な側面があって人によって解釈も違いますし。ひとつ言えるのは、戦後から今に続いていて、素材から形態までジャンルレスというのは、現代アートのひとつの魅力だと思います。

奥山 私も休日にギャラリーに行くことがありますが、作品のどこに注目するといいのかが気になります。高根さんは、どこに注目して作品をご覧になりますか?

高根 すべての作品を観て覚えようとするのは多すぎて無理だと思うので、その中で自分の心が動かされる作品をしっかりと観ようと心がけています。だからキャプションからではなく、作品自体から観た方がいいと私は思いますね。キャプションを読むと先入観を持ってしまい、知識を蓄えて教育を受けるぞという感じになってしまうので。まずは自分が楽しむということがオススメです。

吉田 私も友達とギャラリーを回ったりしますが、難解なものも中にはあるよねって。だから知識がないと楽しめないと思ってましたが、今の話をお伺いして、全部を知らなくていいんだなと感じました。

高根 そうですね、そこから始めていいと思うんです。知りたいと思えば、自分で勉強するでしょうし、そうやってさらに面白くなっていきます。あと、年齢を重ねていくと同じ作品でも、若い頃と今と将来見た時で感じ方が変わってくるから、一生かけて楽しめますよ。絵日記的と言いますかね。私も最初はジェフリー・ダイチさんによる「Deitch Projects」でバリー・マッギーさんの作品と出合い、衝撃を受けて現代アートに興味を持っていったんですが、政治や環境、女性活躍など、ここ最近は自分のパーソナルなことに特に興味があります。たとえば、松川朋奈さん。同世代の女性にインタビューをして、そこからインスピレーションを受けた作品をつくっていたりして、自分と重なる部分に共感を覚え、実際に作品を購入させてもらいました。

アーティストはどんな気持ちなんだろう?

吉田 私もイラストの作品をつくっているんですが、たまにアート作品は高いよねと言われることがあるんです。購入以外でもアーティストを応援する方法はありますか?

高根 答えになっているかはわからないですが、私の場合はアーティストを応援するという感覚ではなく、一緒の目線でいることを意識しています。どちらが上か下かではなく、アーティストも観覧者・購入者も立場は一緒だから、お互いにインスピレーションを受けられたらいいなと。作品を購入する時にも、買わせてもらうという感覚も、買ってあげるという感覚もありません。アーティストだからと意識せずに、フラットに接するのが大事だと思います。アーティスト側は、作品について興味を持って質問をしてくれるだけでうれしいものです。

吉田 それはありますね。私の場合も、見た目だけの評価じゃなくて、私自身の思想やこれまでに積み上げてきた経験を作品に込めているので、作品を通して私を知ろうとしてくれるのがうれしいです。作品の中には、どこかアーティストの人生が表現されていると思うので。

高根 表現するというのは、勇気がいることですよね。作品を通して、自分の信じる部分をみんなに見せるのは、恥ずかしいところもあるだろうし、これでいいのかなって自信がない時もあるだろうし。そこで背中を押してくれる人がいることは、すごい大きな成長につながるはずです。人によりますが、アーティストは自分を表現したい気持ちと、自信がないという気持ちの両方持っている人が多いんだと思いますね。

アート作品は、誰かに頼まれてつくるものではないですからね。

高根 答えがない問いを投げかけなきゃいけないから大変な作業ですし、それをずっとつくり続けなきゃいけないというプレッシャーもあるでしょうね。デザインとアートの違いはそこかもしれません。デザインには答えがあって、消費者に突き刺さるようなデザインや言語が正解だと思うんですが、アートは質問を投げかけるだけなので、そもそも誰に響くのかもわからない。やっぱりアーティストって大変だなと思います。

作品を購入して、自宅等の空間に置いて楽しむことの価値はどうお考えですか?

高根 作品は家の壁にかけると、「これいいな」というのと「今のタイミングじゃなかったかも...」というのが明確にわかるんです。作品を鑑賞・購入・飾るという一連を繰り返していくと、経験上わかってくるのかもしれないという感覚はあります。家に置いてみると面白いのが、印象の変化です。ひと目惚れ的に買った作品は、 置いてみると一カ月くらいすると一回仕舞おうかなということもあります。でも、自分のパートナーのような作品に出合えたら、家に置くと邪魔にもならないし、朝と夜で作品の印象が変わることもあります。そういうのは、購入してみないとわからないことだと思いますね。

Tokyo Gendaiまでもう一歩。

吉田 会場の「パシフィコ横浜」周りで前後に寄るといい場所はありますか?

高根 個人的におすすめなのが「三溪園」という、(実業家で茶人の)原三溪さんという方がつくった日本庭園です。モダン建築と素敵な庭園の組み合わせが素晴らしいんですが、おそらくあまり知られていないはず。あとは野毛の小さな飲み屋が集まったエリアもローカルの人たちがいらっしゃるらしく、帰りに一杯なんていいかもしれませんね。

昨年の会場の様子。
Courtesy of "Tokyo Gendai"

最後に、改めて「Tokyo Gendai」の魅力を教えてください。

高根 最初にお話ししたことに加えると、アートトークという、トークプログラムがあるんです。初心者の方々も楽しめるような、面白いラインナップの人たちが登壇してくださる予定で、私も全員のトークを聴きに行きたいくらい。会場の隣のアネックスホールで開催され、「Tokyo Gendai」 のチケットをお持ちの方は無料で観ることができます。 あとは今回初めて子どもたちに向けたワークショップをやります。アーティストと一緒にアートをつくるワークショップをして、その後会場でそのアーティストの作品も観ることができます。いわば、子どもたちと一緒に遊んだ後に、実際に作品を観に行こうということです。小さな頃から、アート作品に触れてもらおうという試みのひとつです。

展示だけでなく、いろいろなイベントもあるということですね。あとは、ギャラリーも作品の数も多いから、それだけで面白い作品に出会える確率が上がるということですよね。

高根 その通りですね。あとは空間がオープンだから、緊張せずに自分のペースで作品を観ることができると思います。初めての方は、アートフェア全体の雰囲気を楽しむだけでも面白いですよ。そして作品に興味があれば、その場にいるギャラリストに気軽にお声がけくださいね!

INFORMATION

Tokyo Gendai

会期:2024年7月5日(金)〜7日(日)

会場:パシフィコ横浜 展示ホール C/D

住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい1-1-1

入場券についてはこちら

オフィシャルサイト


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
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