戦う相手は、自分自身
SHINJI KAWAI
ボクシングは相手がいてこそ成り立つスポーツだが、試合に至るまでのプロセスは自分との見つめ合いに限る。河井慎次は毎週金曜の夜にジムへ通い、自身と戦うことで頭の中がクリアになり、リセットされると言う。



- SHINJI KAWAI/河井慎次
ビームス プロダクト本部 - 2020年、原宿のBEAMSオフィスと自宅の中間地点、荻窪にある大森ボクシングジムへ通いはじめる。それ以前はもっぱら観戦派。もともと格闘技全般に興味があり、中でもボクシングが好きだった。大阪でアルバイト採用から正社員となったのち、東京へ転勤。数店舗を経て6年前にリニューアルオープンした「ビームスジャパン」のオープニングスタッフに着任。現在は同レーベルのMD業務を中心に担当し、〈ビームスジャパン〉を裏で支えている。
MY SPORTS : BOXING
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リングへ入る前に一礼、それが最初のルーティーンだ。それから、鏡に向かってひたすらフォームの確認。早く、的確で、美しく。自分が思い描く理想のパンチを練習する。何事も、基本あってこそだから。
拳ひとつで戦うボクシングに憧れて
拳ひとつで戦うボクシングに憧れて
「一昨年、ステイホームの反動で久しぶりに体を動かしたいと思いました。スポーツ経験はサッカーを少しだけ。どの競技をやっても初心者からのスタートです。何を始めようかと考えたとき、ふと頭をよぎったのがボクシングでした。格闘技の中で一番シンプルな種目じゃないですか。蹴ることも、投げることも、締めることもない。拳ひとつで戦うスタイルに魅力を感じたんです。ファッションもそうですけど、クラシックなものに心惹かれるのかもしれませんね。」
「未経験だから、最初はシャドーボクシングの練習からスタート。腕はしっかり上がっているか、姿勢は正しいか、フォームは美しいか、突き詰めていくのが楽しくて仕方なかったですね。ジャブやストレートが打てるようになってから対人練習をはじめるのですが、一度基礎を学んだからといって、シャドーをサボると一生上達できない。仕事と一緒ですよ、頑張った分だけちゃんと成果が返ってくる。何においても”初心忘れるべからず”です。トレーニングは辛いことが多いけど、トレーナーさんに『いいパンチだね』と褒められると純粋に嬉しい。大人になって誰かに褒められることってあまりないですから」
「ジムへ行くのは決まって金曜日の夜。かれこれ1年半、通い続けています。なぜこの曜日かというと、1週間の出来事をボクシングでリセットしたいから。仕事やプライベートで起こった良いことも悪いことも、汗を流してスッキリするんです。そして来週に向けて切り替えるのが、ここ数年の僕の日常になっています。」
「そのおかげか、精神的に強くなったような気がします。自分と向き合う時間を作ることで、己を知って乗り越えることができる。体づくりや体力よりも、一番備わった力ですね。また、その一方で人とのコミュニケーションも楽しむようになりました。大阪から上京してすぐにコロナ禍もあり、新しく人と知り合う機会が少なかった分、ジムで拳を交わした人たちと話すのが新鮮でワクワクします。仕事も人生も、何もかも違うけど、みんなボクシングを愛しているのは一緒。この環境がとても心地よくて、大好きなんです」