三重県出身の僕が
最注目する、
志摩市を紹介します!
SELECTOR

全国津々浦々を訪れてたくさんの良い場所を見てきたのですが、郷土愛も強いんです。三重県出身の僕が、特におすすめしたいのが志摩市。美しい山々とリアス海岸からなり、真珠養殖発祥の地であり、いまだに海女漁や祭りが盛んに行われている、とにかく魅力的な場所。市政20周年を記念して、<BEAMS JAPAN>でも面白いことを仕掛けていきますよ!
志摩の海が育てる真珠
GUEST PROFILE
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BRUTUSについて
1980年創刊。ポップカルチャーの総合誌。いつもとちょっと違う、新しい視点で世の中を見たり、深掘ってみたり。情報のスピードより、驚きや面白さを追い求める人に向けて、月2回の特集を発信し続ける雑誌。ウェブメディアBRUTUS.jpも。
突然ですが、BRUTUS編集部です(笑)。世の中のあらゆるカルチャーをはじめ、食や旅、ファッションが大好きで、しかもその背景にある物語が大好物。それはつまりBEAMSでもあり、B印とはBRUTUSのBでもあるのではないかと、勝手にシンパシーを感じております。実は2016年の〈BEAMS JAPAN〉オープン時にBRUTUSで小冊子を作ったご縁もあり、志摩モノづくりの現場にご一緒させていただきました。
>> 第二弾の記事はこちら
「ビームスの太鼓判 meets BRUTUS vol.2 志摩の海から、〈BEAMS JAPAN〉が学んだこと」

志摩の英虞湾(あごわん)はリアス海岸。島と海とが入り組む複雑な風景は見飽きない絶景なり。
向かったのは、三重県の志摩市。あの伊勢志摩の志摩です。なんと市内全域がまるごと国立公園に指定されている珍しいエリア。つまり海の幸も山の幸も豊富で、大自然の魅力を存分に堪能できる。〈BEAMS〉が志摩市とタッグを組み、さまざまな“幸”を〈BEAMS JAPAN〉にてお届け中だという。では、ここからナビゲーターをバトンタッチしたいと思います。
ここ志摩の案内役は〈BEAMS JAPAN〉のクリエイティブディレクターで志摩と同じ三重県松阪市出身の鈴木修司さん。志摩市のふるさと納税の返礼品企画や、〈BEAMS JAPAN〉の商品企画の実績もあり、何度も足を運んでいるという。そして、鈴木さんが「ぜひとも現場を見てほしい」とおすすめするのは、志摩を代表する産業である、真珠の養殖。

英虞湾には何度も視察を行っている鈴木さん。出身地も近く、鈴木さんの志摩への思いは熱い。
真珠といえば冠婚葬祭のイメージが強いかもしれない。けれど近年ではメンズのブランドでも、チェーンネックレスにパールをあしらったりと従来の真珠の価値観をアップデートする流れも見えてきた。ジェンダーレス時代のファッションアイテム、そのシンボルと言える。
評価が高いのは大きな個体に限らず。最近は、中国をはじめアジアでは直径2、3mmの小さな真珠がトレンドで価格も高騰中。そのほとんどが、養殖技術の高いここ志摩で養殖されている。時代や地域で捉え方が変わる、そんな真珠の新しい可能性は興味深いところだ。
まずは、鈴木さんもおすすめの養殖場に足を運び、実際に作業をされている現場を見学させてもらった。年間約3分の1は全国津々浦々を飛び回っている鈴木さん、「僕の信条は、まず現地に足を運んでお話しして、自分の目で見て、知ること」だそう。

湾にまっすぐ延びる養殖の筏。英虞湾ならではの真珠養殖の風景。歩いてみると意外に安定感あり。
真珠養殖発祥の地、英虞湾へ

「厳しい環境に置かないと真珠は綺麗に光らない。人間と同じ!」と井上真珠の三代目、井上光さん。環境の変化や高齢化の問題もあり、生産者が減っている地域課題も。ちなみに光さんのモットーは世界平和。「真珠は平和の原点」だ。
英虞湾(あごわん)は真珠養殖発祥の地として世界的に知られている湾。大小合わせて64もの島が点在する湾は、山に囲まれていて、複雑に入り組んだリアス海岸を形作っている。川から流れ込む養分が海に溶け込んでいること、海水の温度が冷たくなり過ぎないこと、そして潮が穏やかであることなどが、養殖業が盛んとなった理由だ。

女性たちがメインだが、ぎっしりとアコヤ貝が入ったカゴもなんのその。海の上を闊歩する。

真珠の母貝となるアコヤ貝。ひとつの貝で、ひとつの真珠を育てる。
訪れたのは90年以上、運営されている養殖場〈井上真珠〉。鈴木さんと、海に浮かべられた筏に、おそるおそる足を乗せつつ、海上に建てられた小屋まで歩く。最初は風景を見る余裕もなかったけれど、意外な?安定感は波の穏やかな湾ならでは。この日、小屋では真珠の母貝であるアコヤ貝を引き上げ、付着したフジツボなどを除去する作業が行われていた。

海上の小屋でアコヤ貝に付いたフジツボの除去作業について話を聞く。〈BEAMS JAPAN〉の鈴木さんは興味津々。細かく砕かれたフジツボが餌となり、アジなどの魚が寄ってくるそう。

今は何の作業をされているところですか?

クリーナーを使って、アコヤ貝に付いたフジツボを取っているところ。

へー、専用の道具があるんですね。ひとつひとつ取っていくんですか?

そうそう。このまま放っておくと、フジツボがアコヤ貝の口を塞いでしまって息が絶えてしまうから。

なるほど!

10日くらい経つと貝がフジツボだらけになってしまいます。

たった10日で? フジツボの勢い、スゴい。

そう、スゴいのよ!
養殖はただ海中に浸けておけばいいわけではなく、たびたび引き上げて、このような工程を何度も繰り返すそう。かなりの根気と体力がいる作業だ。
真珠の核入れは手術のような作業
続いて、真珠の元となる核を入れる作業の現場へ。井上光さんの妻、寿美さんが作業をしながら説明してくれた。口を開けたアコヤ貝の内部にメスを入れ、別のアコヤ貝の細胞の一部とともに、小さな丸い玉をひとつずつ入れていく。まるで手術のよう。

核入れはかなり繊細な作業ですね。

核を入れる位置で、貝から分泌される真珠層の巻き方が変わってくるの。小さく切った細胞の入れ方も職人や養殖場によって違いますね。

この作業は集中力が必要ですね。この核は別の貝ですか?

米ミシシッピ産の淡水貝を加工したもの。今日は“スッとした”色味の明るい真珠の核入れね。

いろんなタイプの真珠を養殖されているんですね。
海中での時間が長いほど、そして適度に刺激を受けるたびに、真珠層が巻かれ、大きくなる。けれど重層になるほど真円にはなりにくいそう。この日、核入れされた真珠は、半年後には採珠するタイプのもの。需要と供給のバランスなど、変動する価格に合わせて、さまざまな種類の真珠を採珠できるように、時期を問わず一連の工程の作業が行われているそうだ。
知られざる背景を伝えていきたい
この地域ならではの熟練職人の手とともに、志摩の海が育てる真珠。伝統の養殖産業だが、近年は気候変動の影響で、海水温度の上昇など環境が変わりつつある。その変化に合わせ、養殖技術を改良しながら受け継がれているそうだが、生産者が減ってきている現状もあるという。

大王埼灯台の近くにある真珠店〈龍宮〉の看板犬。大粒のネックレスに注目!
〈BEAMS JAPAN〉は志摩市と提携し、ふるさと納税返礼品の商品開発や監修、店舗でのポップアップなどを行っている。例えば、「立神真珠養殖漁業協同組合」の女子部によるブレスレットなど、計37品を展開。立神真珠に関して、鈴木さんは、従来の真珠の生産・卸しだけではなく、地元の組合が加工を施す商品づくりまでを行う動きに目を付けた。いわく、真珠の輝きだけでなく、知られざるバックストーリーまでを伝えるべきだと考えているそう。特に志摩は出身地に近いこともあり、前のめりでなんとも頼もしい。

これからも志摩の知られざる特産物を紹介したいと鈴木さん。
「〈BEAMS JAPAN〉としては、志摩の魅力をどう拡げていくか?を考えています。真珠をただ綺麗、可愛い、カッコイイだけではなく、生産の背景を想像してみてほしいんです。恩着せがましくしたいわけじゃないんですけど、背景を知るとより真珠の魅力や価値を感じてもらえると思います。生産者さんには、商品を展開する仕組みづくりでお役に立てれば嬉しい。地域ならではの産業が安定する成功例を作っていきたいんですね。そのための仕掛けをいろいろと考えているところです。最終的には、もう〈BEAMS〉内だけの話ではなく、いろんな方向に拡がっていけば、と考えています」