BEAMSの原点といえば、1976年にスタートした原宿一号店。あの小さなショップを、いまVRコンテンツとして再現するプロジェクトが進んでいる。長いあいだ写真やテキストの中だけで語られてきた『はじまりの店』は、もはやちょっとした伝説。でも今は、その空間をデジタルで“歩ける”時代だ。なぜいま原宿一号店なのか。そして一号店とはそもそも、BEAMSにとってどんな存在だったのか。2回にわたって覗き見するのは、再現プロジェクトに関わった広報兼VR担当・木下と、アーキビスト・長友のハナシ。
- 原宿⼀号店ってどんなお店だった?
1976年に原宿でスタートしたBEAMS最初の店舗は、当時としてはまだ珍しかったアメリカのライフスタイルを提案するショップでした。決して大きな規模ではありませんでしたが、その限られた空間の中に、いまのBEAMSへとつながる価値観がすでに凝縮されていましたね。ただ商品を並べて売るのではなく、モノのセレクトや見せ方といった“編集的視点”を通して、自分たちがかっこいいと感じた“空気感やライフスタイル”そのものを提案していたんです。いちショップであると同時に、BEAMS創業の起点であり、現在のBEAMSのすべてにつながる「らしさ」の原点だったと思います。(長友)
1976 BEAMS - VRで再現した創業店舗
- 伝説の⼀号店をVR で再現?
実は、創業の頃の一号店に関する資料は少ないんです。当時の店を直接知っているスタッフも、いまのビームスの中にはほとんど残っていない。正確な記録を発掘するという意味では、まさに伝説の店ですね(笑)。(長友)
そういう状況だからこそ50周年というこのタイミングで、自分たちの原点である創業当時の原宿一号店を、可能な限り正確にデジタル空間へ再構築し、VRコンテンツとして体験できる状態にしようと考えました。いわゆるバーチャル店舗というより、当時のスケール感や空間構成、そこに流れていた空気まで含めて立体的に再現することが目的です。BEAMSの編集的な感覚が最も純度高く表れていた場所だからこそ、写真ではなくVRという手法を選んだ。空間を“見る”のではなく“体験する”ためのコンテンツとして提示したかったんです。過去を保存するというより、いま触れられるリアルな体験として表現する。感覚としてはかなりそれに近いですね。(木下)
展示じゃない。のぞける原点!
- めちゃくちゃディテールまで検証したってウワサです。
はい。写真や図面、当時の限られた資料をていねいに確認しながら、ひとつずつ裏付けを取りつつ再構築を進めていきました。什器の配置、棚の高さ、通路幅、光の入り方といった細かな要素まで、可能な限り検証しました。実際のところ、当時を知る関係者へのヒアリングがとても重要な手がかりになっています。目指したのは“それっぽさ”ではなく、違和感のない整合性。特にVRは細部の精度がそのまま空間のリアリティに直結するメディアなので、あいまいな処理は極力避けています。かなり地道で根気のいる検証作業でしたが、その積み重ねで説得力のある空間を表現することができました。(木下)
- 再現してみて、いちばん意外だったことは?
これまで写真で見ていた印象とのギャップですね。思っていたよりもずっとコンパクトな空間でした。通路と商品棚の距離、視線の流れ、情報の重なり方。すべてが近い。その近さが独特の密度を生んでいました。限られた面積の中に、セレクトの意図や編集の感覚がぎゅっと凝縮されている。一号店の魅力は、まさにその空間の“密度”にあったんだと、再現プロセスを通して実感しました。(木下)

1976年発行のマガジンハウス『anan 』4月5日号に掲載されていた1号店の貴重な取材写真。当時雑誌の取材第一号だった。お店の「奥行き」を確認できるこの写真が発見されたことで、今回の再現が一気にリアリティを持ったという。資料提供 : マガジンハウス
- ⼀番印象的だったことは?
店内構成を細かくリサーチしていて印象的だったのは、やっぱり「服じゃないモノ」が売られていたこと。一号店には当時はまだ珍しかったロープやヘルメットのような『ギア』が当たり前のように並んでいました。ロープはハイキングの文脈で紹介したり、アメリカの工事現場のヘルメットを自転車やフリスビーの時にかぶるという提案がされていたり。ワークギアや実用品をBEAMS的解釈で日常や遊び道具へと変えて提案している。その感覚がBEAMSらしさなのかなと。
なかでも印象的だったのが『Lookout』という携帯型の広視野レンズ。山登りやハイキングの時に持ち出して、風景をのぞき込み、“普段とは違う視界”で世界を見るための道具です。本当に役に立つのか少し不思議なアイテムですよね。でも、そういうアイテムを通して、モノを売るというより、新しい発見や面白い体験の『きっかけ』を提示していたんだと思います。一号店には、とにかくそういう『理屈より先に心が動き、ワクワクさせるモノ』がたくさん並んでいました。(長友)
⼀番よく分からないやつが、
⼀番BEAMS っぽい。
- 原宿⼀号店ってBEAMS にとってどんな存在?
やはりBEAMSの歩みの起点です。ただの最初の店ではなく、いまへと続くBEAMSの価値観がはじめて表現された場所でした。時代が変わって、扱う商品やプラットフォームが変わっても、BEAMSの根っこにある感覚そのものは変わっていない。そのアイデンティティがいちばん純度高く、いちばん色濃く表現されているのが原宿一号店。そういう意味では一号店は原点でありながら、BEAMSの『未来を生み続ける事業の起点』でもあるんだと思います。(長友)
- このVR コンテンツ、どう楽しんでほしいですか?
ビームスの歴史を見るというより、ちょっとのぞいてみる感覚で楽しんでいただきたいです。VRで体験すると、スケールや距離感など、写真で見るのとは全く違った感覚で、商品がぎゅうぎゅうに詰め込まれた狭いお店に足を踏み入れると、溢れる熱い想いまでもが感じられます。(木下)
Sneak Peek Notes.

まずは視点を変えて、のぞいてみる。意外と小さい。でもめちゃくちゃ濃い。あの伝説のお店の輪郭がリアルになる。あの頃を知っている人も、知らない人も、楽しみ方は自由だ。次回は、原宿一号店のこと、もう少し詳しく。
PROFILE

長友美恵子
アーキビスト
1988年にグラフィックデザイナーとしてBEAMSに入社。アートディレクターとして宣伝販促物を手がけ、2008年よりブランディングディレクターに就任。2019年より、企業ブランド管理の一環としてBEAMS ARCHIVESを発足させ、BEAMSの歴史を新たなブランド価値へと導くアーキビストとして現在に至る。

木下香奈
社長室 広報課 兼 ビームスクリエイティブ VR担当
2007年BEAMS入社、広報とCSRを担当。2016年より海外マーケティング、2020年より再び広報職。2021年よりバーチャル事業企画を兼任。企業広報を担当すると同時に、ソーシャルVRプラットフォームVRChatにおけるBEAMSの活動を主導する。



