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自分の聴覚を頼りに好みのサウンドを探し、それをもとに音楽を奏でる。シンセサイザーという楽器には、イマジネーションを膨らませる何かが存在します。2005年の誕生以来、たくさんのユニークな電子楽器をリリースしてきた〈Teenage Engineering(ティーンエイジ エンジニアリング)〉。中でも、〈ビームス レコーズ(BEAMS RECORDS)〉で展開しているシンセサイザー『OP-1 field』は、コンパクトなサイズながら、演奏、サンプリング、エディット、さらにはミックスまでできてしまう優れものの機材です。「だから、初心者でも音楽をつくりやすいと思います」と語るのは、ロンドン在住のアーティスト・大森日向子さん。アンビエント・ミュージックを奏でる彼女曰く、「創作意欲を刺激する使い勝手も魅力的」なんだとか。では早速、大森さんにこの機材で1曲演奏してもらいましょう。
神奈川県横浜市出身。3歳でイギリスへ渡り、幼い頃からクラシック・ピアノを習い、大学からサウンド・エンジニアリングを学ぶ。その後、アナログ・シンセサイザーによる演奏や楽曲制作を開始し、エド・オブライエン、ケイ・テンペスト、ジョージアらのツアーやレコーディングに参加。2019年にEP『Auraelia』を発表。2022年に初のフル・アルバム『a journey…』、2023年に2ndアルバム『stillness, softness…』をリリース。
Instagram:@hinakoomori
はじめに、大森さんと〈ビームス レコーズ〉の繋がりから教えてください。
大森 ロンドンから帰国したときに必ず立ち寄るお店です。友人がディレクションをしていて、どんなレコードが置いてあるのか気になるんです。
昨年10月にリリースされた2ndアルバム『stillness, softness…』も、LP版が「ビームス レコーズ」に再入荷されました。収録されている楽曲はシンセサイザーを中心とした機材でつくられているんですよね。
大森 そうですね。ハードウェアのシンセサイザーを中心に使っています。モジュラーシンセのように何台も繋げて音をつくる機材というよりは、鍵盤がついていて音楽制作に必要な機能が1台に集約されているものですね。
そんな大森さんには〈Teenage Engineering〉のシンセサイザー『OP-1 field』をはじめ、いくつかの機材を1か月間ほど試用してもらいました。まず、ブランドに対してどんな印象を持っていましたか?
大森 すごくイノベイティブで、プレイフルなブランドだと思います。楽しみが湧いてくる感じ。『OP-1 field』を見ていても、どのボタンにどんな機能があって、どうゆう音が出るのかが分からないですよね。
いじり甲斐があるというか、直感的に触って楽しめるということですか?
大森 そうそう! まさにそんな感じです。ミニマルなデザインで、マニュアルを見ても詳しいことはあまり書いてなくて。とにかくスイッチを入れて、自分の手で触ってみないと使い方が分からないというか、すごくミステリアスな部分にも惹かれます。ブランドとしても、そうやってユーザーに自分の手で音を探して欲しいと思っているように感じるんです。とにかく創作意欲を掻き立てられるような設計になっていますよね。
今回、大森さんには〈Teenage Engineering〉の機材で既存の楽曲のアレンジバージョンを演奏してもらいました。実際に使ってみて、いかがでしたか?
大森 『OP-1』は前に使ったことがあるんですけど、録音もできる機材として『OP-1 field』に生まれ変わってからははじめてでした。まずはどんな音が出るのか、できる範囲でいろいろ試すところからスタートして。最初に気づいたのは音のクオリティがすごくいいこと。この機材の中にオーディオインターフェイスが搭載されているので、スピーカーに繋げたときに、音がダイレクトに、クオリティも下がらずにしっかり出てくれて。
演奏されている音を聴いて、すごく音質の豊かさが伝わってきました。伸びやかで奥行きのある音が出ていたというか。
大森 機材をいじりながら音をデザインするのがすごく楽しいんですよ。それにFX(フィルター)もユニークで、いろんな音に加工ができるから、本当にいろんな可能性があると思います。
それぞれの機材にどんな役割を与えていたのでしょうか?
大森 『OP-1 field』がブレインですね。これでメインのフレーズを組み立てて、ベースラインを足して、ちょっとしたマラカスの音もシークエンスして鳴らしています。あとは『TP-7』というレコーダーと『CM-15』というマイクでボーカルをループさせたり、サンプラーの『EP-133 K.O.II』でビートを足したり。最後にすべての機材をミキサーの『TX-6 mixer』にまとめて音のバランスをコントロールしています。
これまでさまざまなシンセサイザーを使われてきたと思いますが、『OP-1 field』の気に入った機能はありましたか?
大森 モニターに出てくるグラフィックがおもしかったです。アニメーションのように動いて、そういう部分でも飽きさせない工夫がされていて。「とにかくいじりながら遊びたい」、触っていると、そんな意識が生まれますね。
大森 あとはテープモードですね。マイクが内蔵されているので、それを使って録音ができるし、鍵盤で弾いたメロディやドラムマシンのリズムも録音することができるんです。
どういう部分がよかったのでしょうか?
大森 たとえばピアノを弾いているときに、いいフレーズが思い浮かんでメモを取ろうとするじゃないですか。だけど、紙とペンを探したりしているうちに、それを忘れてしまうことってよくあると思うんです。だけど『OP-1 field』は、弾いた音をそのまま録音できる。一般的なシンセだと、複数の機材を繋げたりしないと録音ができないんです。
いろんな手間が省けるわけですね。
大森 そうですね。この1台でそれが完結しているのが、すごく魅力的だなと思いました。フレーズをすぐに録音して、そこからベースを入れてみようと思ったらすぐにできるんですよ。そのままの勢いで曲づくりができちゃいます。
今回の演奏では大森さんがあらかじめセットした音を出していましたが、音づくりも楽しめましたか?
大森 遊びながら音を探ることができたから、すごく楽しかったですよ。それでいい音が見つかったら、それをそのまま使うことができるので。
持ち運びやすいコンパクトさも魅力ですよね。普段はロンドンで活動されていますが、日本に帰国されるときや旅先で『OP-1 Field』を使うことで、普段とは違った音も発見できそうです。
大森 マイクが内蔵されているので、環境の音を録音して、それを素材として使うこともできるんですよ。個人的にもフィールドレコーディングをするのが好きで、環境が変化すれば音も変化する。やっぱり、森と海では聞こえてくる音が全然違うじゃないですか。そうして新しいインスピレーションを得ることによって、生まれてくる音楽も新しいものになる。だからこのサイズ感は、すごく魅力的だと思います。
もし初心者の方が『OP-1 field』を使うとしたら、どんな遊び方をすすめますか?
大森 やっぱりテープマシンで遊ぶのがおすすめです。音をレイヤーするおもしろさがこの機材にはあるので。本当にたくさんのサウンドがここにはありますし、いろいろいじりながら、どんな音楽が生まれるのか、それを楽しんでほしいですね。
シンセサイザーで音を探しながら曲をつくるのって、楽器と自分のあいだで会話しているみたいな感じなんですよ。たとえばフィルターをかけると音にエフェクトがかかって、直感的に反応してくれる。そうやって機材との会話を楽しむような感じで遊ぶといいと思います。
他の機材についても聞かせてください。先ほど言われたように、演奏では外付けのマイクを2つ使われていましたよね。
大森 そうですね。いわゆる普通のマイクの『CM-15』と、もうひとつは『TP-7』というレコーダーをマイクに使用しました。『TP-7』にはテープリール機能があって、指で簡単に早送りや巻き戻しなどができるんです。
DJのスクラッチのような音が印象的でした。
大森 ボーカルループをつくって、指でセンターのリール部分をいじりながらリワインドしたりして遊びました。これがすごく楽しくて、音が不気味な感じになるのがまたいいんですよ(笑)。
サンプラーの『EP-133 K.O.II』ではビートをプラスし、最終的にすべての機材を『TX-6 mixer』に繋いでミキサーとして使用されていました。
大森 ミキサーはEQ(イコライザー)がすごくエフェクティブでいじり甲斐がありました。最終的にはパソコンに繋げて出力をしていたんですが、先ほども話した通り、オーディオクオリティが全然低くならずに機材の音質をそのまま出せたのがすごくよかったですね。
ちなみに、『OP-1 field』をはじめとしたこれらの機材は大森さんの制作スタイルにフィットしそうですか?
大森 もちろんです。私の場合、音楽をつくるときは実験的な気持ちで臨みたいんですよ。設計図を見ながら目的のものをつくるんじゃなくて、その日の自分の気分に合わせたりとか、機材に導かれるように音作りをしたくて。今日はなにができるかな? っていう感じで、実験的に取り組んでいるんです。そうすると、やっぱりこういう機材が私にはフィットするのかなって思います。使うたびに違う音が発見できるので。
今回は1ヶ月という短い試用期間でしたが、もっと継続して使えるなら、どんなことをしたいですか?
大森 ゆっくりと時間をかけて、もっとたくさん作曲してみたいですね。
では最後に、今後の活動について、これからの目標を教えてください。
大森 今年はロンドンに帰ってツアーがあるんですけど、まずはそれを楽しみたいですね。ツアーが終わったら、コラボレーションをしたいです。ロンドンには尊敬するミュージシャンがたくさんいるので、彼らと集まって曲づくりができたらいいなと思ってます。
〈Teenage Engineering〉のアイテムは「ビームス レコーズ」店頭、または公式オンラインショップからご覧ください。
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。