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モノを選ぶ時に大事なことってなんだろう? ブランドとか希少性とか、もちろんそうしたこともひとつの基準。でも、世間の評価をよそに、好きをとことん突き詰めたり、誰かにとってのガラクタに価値を見出したり、自分なりの物差しを持っている方がかっこいい気がします。東京・用賀にあるインテリア雑貨のセレクトショップ「HIIKI」には、そんなユニークな目線で買い付けを行う店主がいます。拓海さんと美菜海さん、この2人の視点に触れれば、“贔屓”したくなるモノとの出合い方が分かるかもしれません。
愛知県出身。武蔵野美術大学建築学科卒業後、住宅メーカーに勤務。クルマを軸にしたライフスタイルを提案するメディア「CAR CITY GUIDE」を友人と設立したことをきっかけに独立。2024年1月に、美菜海さんと「HIIKI」をオープン。
千葉県出身。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、工務店に勤務。その後、webデザインやアプリ開発を中心としたベンチャー企業での勤務を経て独立。「CAR CITY GUIDE」の運営に携わりつつ、拓海さんとともに「HIIKI」をオープン。
ショップ名の「HIIKI」は、“贔屓”するってことですよね? 2人が気に入ったモノだけを販売していると。
拓海 そうですね。誰もが知っているブランドじゃなかったり、名作と呼ばれていたりしなくても、自分たちがいいと思ったものを“贔屓”して販売することをコンセプトにしています。
ヴィンテージとは呼べない年代だけど、古いモノばかりが並んでいますね。
拓海 自分たちと同世代の90年代くらいにつくられた、なんでもない中古品を中心に集めていて。
そうした古いモノの、どんなところに惹かれているんですか?
拓海 なにより気になるのは、プロダクト自体ではなく、その背景。古いモノには「なんでこれをつくったんだろう?」って思うくらい意味が分かんないモノが多いんです。でも、古物市場に出てくるということは、一度は誰かが必要としたってことじゃないですか。「これを新品で買ったひとがいるのか」と考えるのも楽しいんですよ。
美菜海 そうそう。いまじゃ絶対につくられないようなモノがいっぱいあって。それをつくることにGOを出した上司がいたこととか、量産されてから数十年経って、ここにたどり着いたっていうのがおもしろいですね。
2人とも美大出身だから、色やデザインが現代の感覚とは違う、みたいなところに魅了されているのかと思っていました。
拓海 買い付けの基準として、それは無意識のうちに大事にしているかもしれません。でも、色や形がきれいなモノは、現代にもあるっちゃある。変なモノ、みんなが持っていないモノが好きって、ひねくれた気持ちも強いんですよ。
美菜海 特徴があったほうが愛せるっていうのもありますね。ブサイクだけど、それがいいねっていう。
たしかに、古いモノのほうが、遊び心や無駄を楽しむ余裕があるように感じますよね。バイイングは2人で一緒にしているんですか?
美菜海 それぞれ買い付けに行っています。日によってはなにも手に入らないときもあるんですよ。
拓海 半年くらい前までは、なにかしら仕入れないとマズイって思っていたけど、最近はお店の雰囲気を大事にしたいと思っていて。うちに合わないモノを無理に買い付けることはせず、ないならないでしょうがないっていう考え方に変わりました。
古いモノは減る一方ですし、お店にマッチするものを探すのは大変ですよね。
拓海 そうなんです。だから最近は自分たちでリメイクも始めたんですよ。もともと手を動かすのが好きなので、色を塗ってみたり、パーツを組み合わせてみたりして。
7月25日(金)から〈TOKYO CULTUART by BEAMS〉で開催する「HIIKI」のポップアップでもリメイク品を販売していただきますが、例えば、どんなリメイクをされているんですか?
拓海 最近ぼくがつくったのは、電球を付けてペイントした木彫りの熊。蓄光塗料を使っているから、暗闇で光るんですよ。あと、子どもの靴がかわいいから、ペンダントライトにしてみたり。こういう素材を、日々の仕入れのなかで見つけてきてつくっています。
リメイクだと、買い付け品とは違う角度で「HIIKI」らしさを表現できそうですね。
拓海 なんか惜しいって思うモノと出合ったらリメイクして自分好みに変えちゃうのが、いま、ぼくらにできる最大限のクリエイションかなと。つくっていて楽しいし、自分たちにしかできないことをやりたいと思っています。
美菜海 ポップアップでは、お店の商品をまるごと全部持っていくし、リメイク以外にショップのオリジナルグッズも販売するんですよ。
全部の商品を!?
拓海 はい(笑)。用賀からがんばって運びます(笑)。
そもそも、なぜこういったインテリアショップをオープンしたんですか?
拓海 もともと「CAR CITY GUIDE」というメディアを美菜海さんも含めた3人で運営していて、デザインの制作会社を立ち上げることになったんですよ。その事務所として物件を探していたらここが見つかって、それならお店もやってみようかと始めた感じ。こういう古いモノがおもしろいという感覚をみんな持っていたから、自然な流れかもしれません。
「CAR CITY GUIDE」はクルマのある生活を提案するメディアですよね。ということは、2人ともクルマが好きなんですか?
拓海 ぼくは生まれたときから。
美菜海 わたしは大学生のころに好きになりました。
拓海 ぼくたち、もともとヴィンテージカーの販売店で一緒に働いていたんですよ。撮影とか広報の業務をしていて。
そういう繋がりだったんですね。「CAR CITY GUIDE」を設立したきっかけはなんだったんですか?
拓海 専門性の高い世界に嫌気が差しちゃいまして。大学で学んでいた建築もそうだし、クルマも専門的すぎる。そこが魅力なのは分かっているけど、もっと幅広く楽しんでもいいんじゃないか、もっと生活に落とし込んだ見せ方をしたほうがおもしろいんじゃないかと考えていました。例えば、クルマと一緒に写っているひとが着ている服も買えるとか。生活の一部としてクルマを見せたいというところから、コロナ禍でみんな暇だったこともあってスタートしました。
美菜海さんは「CAR CITY GUIDE」が動き出してから加入したそうですね。どんなところに「CAR CITY GUIDE」のおもしろさを感じましたか?
美菜海 クルマって、どちらかといえば男性の趣味って印象が強いじゃないですか。でも「CAR CITY GUIDE」が提案するのはライフスタイルだから、誰が見ても楽しめる。わたしもそれに影響を受けて、90年代のクルマに乗っているんですよ。
ちなみに、なにに乗っているんですか?
美菜海 〈日産〉の初代『マーチ』に乗っています。いまは走っている姿をめったに見ないクルマですね。その前は、70年代のイタリアのクルマに乗っていたんですけど、エアコンが付いていなくて、仕入れでクルマを使うから夏が来る前に『マーチ』に乗り換えたんです。小さめで、個性があって、荷物が載るのがよくて。最初はイタリアかフランスのクルマにしようかなって思っていたんですけど。
そこから、なぜ『マーチ』に?
美菜海 〈ホンダ〉の『トゥデイ』っていうクルマに乗っている友達が、当時のテレビCMをインスタにアップしていたんですよ。真っ黒の『トゥデイ』に女性が乗っているのがかわいくて。
国産車にも魅力を感じたと。
美菜海 そうなんです。そんなときにちょうど拓海くんが『マーチ』を見つけてくれて、ひと目惚れ。デザイナーが、〈フィアット〉の『パンダ』とか〈フォルクスワーゲン〉の『ゴルフ』をデザインしているジョルジェット・ジウジアーロなんですよ。角張ったデザインが好きだから、この『マーチ』はどストライクでした。現車を見に行って、そのまま買っちゃったぐらい。
拓海さんが乗っているのは?
拓海 〈スズキ〉の『エスクード』です。ぼくも小さいクルマが好きで、その前は〈ホンダ〉の『シティ』っていうクルマに乗っていたんですけど、故障した時に交換できるパーツが少なく車の維持が難しいので乗り換えました。『エスクード』のいいところは、小さいのに荷物がほどよく載るし、形も気に入っています。塗装が剥がれている、ボロい風合いも気に入ってるんですよ。
クルマを選ぶ際、どんなところを重視しているんですか?
拓海 ぼく、すごく逆張りをしたがるんですよ。最初に買ったクルマが60年代の〈フォルクスワーゲン〉の『ビートル』でした。みんなが知っているクルマで、古いクルマといえばコレってくらい王道じゃないですか。上京したばかりの大学生のころに乗っていて、そのコミュニティで友達が増えて楽しかったけど、“ワーゲンに乗っているひと”って覚えられたのが嫌で。
王道のモデルだからこその悩みですね。
拓海 それと、〈フォルクスワーゲン〉は歴史が深くて人気ゆえに、ここのパーツはこうあるべきって型が決まっているのも、なんだか好みではなくて。突き詰めれば楽しいと思うけど、ぼくは違うと感じて、まったく逆のクルマに乗り換えたんですよ。2000年代中盤に発売された〈ボルボ〉の『XC70』っていう、周りに乗っているひとがいるっちゃいるけど、あまりパッとしないクルマに。それから見向きもされないクルマが好きになって、こじらせちゃいました(笑)。
その考え方は「HIIKI」のセレクトと同じなんですね。クルマ選びも自分なりの視点を持って、他のひとと被らないことを大切にしていると。
拓海 そうですね。あと、客観視して自分に似合っていることも選ぶポイントですね。ぼくが背伸びして、めっちゃいい〈ベンツ〉に乗っていても…。自分の生活や身の丈に合っているかどうかも大事だと思います。
美菜海 “ワーゲンに乗っているひと”って覚えられたように、乗るクルマでイメージが付きますからね。ファッションの一部でもあるし。
拓海 コンビだもんね、クルマとひとは。自分はこういうひとですって、名刺みたいなものですから。
自分なりの視点を持って、インテリア雑貨やクルマを選んでいる拓海さんと美菜海さん。その審美眼をもっと掘り下げるために、身近なリサイクルショップで買い物をしてもらいました。予算は1人3万円。有象無象の中から2人はなにを掘り当て、どんなところに惹かれたのか。モノ選びの手引きとしてご覧ください。
拓海さんが買ったモノ
美菜海さんが買ったモノ
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。