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ちょっと京都に行きませんか? 〈BEAMS CULTUART(ビームス カルチャート)〉の岡田さんから誘いを受け、行ってきました、京都まで。目的は、〈BEAMS CULTUART〉も参加している、5月11日(日)まで開催中の『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭(以下、KYOTOGRAPHIE)』および『KG+』を体験すること。1泊2日で心ゆくまで楽しんだ旅の記録。まずは初日の過ごし方から紹介します。
『KYOTOGRAPHIE』と『KG+』とは?
『KYOTOGRAPHIE』は、京都を舞台に毎春開催される国際的な写真祭です。2013年に始まり、世界中から写真家やアーティストが参加し、京都の歴史的建造物やモダンな空間を会場にして、10を超える展覧会が行われています。毎年テーマが決められ、2025年のテーマは「HUMANITY」。そして『KG+』は同じく2013年からスタートした、『KYOTOGRAPHIE』のサテライトイベント。これから活躍が期待される新進気鋭の写真家やキュレーターの発掘と支援を目的に、意欲ある参加者を広く募集して展覧会を開催しています。両方合わせると160以上の展示が行われ、その展示場所も膨大です。『KYOTOGRAPHIE』のアプリ上では、各展示が地図上に表示されて便利なので、ぜひダウンロードをお忘れなく!
App Store
岡田さんと取材班一行は、東京から新幹線で京都へ。京都駅に到着後、なんの考えもなしに出てしまったのは、京都タワーとは反対側の出口、八条口。さらにタクシー乗り場もわからず右往左往する始末。京都のタクシー運転手さんの優しい気遣いでことなきを得て、どうにかして移動の足として使う、レンタサイクルのお店へ向かいます。
Eric Poitevin『両忘—The Space Between』
Presented by Van Cleef & Arpels
無事に自転車を手に入れ、一つ目の会場「両足院」へ。「建仁寺」の塔頭寺院(大寺院の中に存在する独立した小さな寺院)は、これまでの『KYOTOGRAPHIE』でも度々使われてきた、お馴染みとなっている展示会場の一つ。茶室を庭に設けるなど、お寺らしい静寂かつ清澄な空気が空間を満たしています。
ここで展示しているのは、フランス出身の写真家、エリック・ポワトヴァンによる『両忘—The Space Between』。
植物が繁茂した森、白壁と床のスタジオで撮影した頭蓋骨やボール、枯れた植物などの写真がユニークな展示方法でお寺のなかに組み込まれています。写真家自ら下見をしてすぐにラフスケッチが届いたという、この展示方法が秀逸で、写真がプリントされたパネルが襖代わりになっていたり、畳の上に巨大なパネルが鎮座していたりと、独特な写真体験が味わえます。
「このプレゼンテーションがすごいなと。ここ数年、両足院には『KYOTOGRAPHIE』で何度も足を運んでいて、襖などを取り払って広い空間にして什器で展示するのは何度も見ていますが、こうやって大型パネルの展示は見た覚えがありません。『KYOTOGRAPHIE』全体の話として、特徴的な建物のなかで写真を見ることができるというのは、このイベントならではの体験ですが、この会場となっている建物がまずかっこいいなと。お寺にお茶室があるという空間も、どことなく京都らしい。この感じがすごくいい」と、一つ目の展示から実に満足げな岡田さん。
Louise Mutrel『Eternal Friendship Club』
お次は、「agnès b. CAFÉ 祇園」で行われている、フランス出身のルイーズ・ミュトレルによる『Eternal Friendship Club』へ。
この場所には、今や絶滅危惧種に近いと思われる、日本のデコトラを捉えた作品が、店内奥のカフェスペースや2階の展示スペースに展示されています。カフェを利用せずに展示を観るだけというのも可能。とはいえ、写真に目を凝らしながら、ドリンク片手にゆったりと観るのがオススメです。
この日の岡田さんもカフェオレやクレープをつつきながら、一つひとつ丁寧に観ていたのが印象的でした。
「カフェスペースは自分のペースで観れるのがいいですね。“ザ・ギャラリー”のようなホワイトキューブだと緊張しながら足早に観ちゃうことが多いので。デコトラは最近気になっているモチーフです。海外セレブリティ……例えばビヨンセがデコトラと一緒に撮った写真をインスタにアップしていて、改めてデコトラは海外から見たら新鮮な日本の文化なんだなと。そこから自分も興味が湧いてきました。〈アニエスべー〉のカフェにデコトラ展示があるというのも面白い組み合わせですよね」(岡田)
2階では展示の他に、関西ではこのお店だけ置いているという〈アニエスべー〉の古着や、Tシャツなども思わずチェック。そして、ついカーディガンの試着に走る岡田さん。「そうそう、この服は実に〈アニエスべー〉らしい上品さにあふれているなと。でもこのお店に来てみたら、FuturaなどのレジェンドアーティストとコラボしたTシャツがあったり、〈アニエスべー〉の古着を販売していたりと、いい意味で上品なイメージが覆されました。写真きっかけでお店に来てみたら新しい発見があるというのも、いい体験です」と岡田さんの言う通り、序盤ながらつい長居をしちゃいました。
「agnès b. CAFÉ 祇園」を後に、自転車で次の目的地へ。平地で道は碁盤目状だから、自転車にはうってつけの京都ですが、道中驚いたのが特定の道路では、自転車通行が禁止されていること。例えば河原町通という中心街を東西に走る主要道路では、8〜21時は自転車走行が禁止されています。自転車を降りて引いたり、他の道で迂回したりと、意外と四苦八苦しながらの移動となりました。他にも終日、または時間帯によって自転車通行が禁止されている道路があるようなので、ご注意を。
Martin Parr『Small World』
In collaboration with Magnum Photos
昼食を挟み、やってきたのは安藤忠雄が設計したコンクリートの筐体「TIME'S」。ここにはいくつかのプログラムが揃っています。まずは、英国人らしいアイロニーにあふれたマーティン・パーの展示へ。
京都はまさにオーバーツーリズムという問題を肌で感じられる街ですが、この京都にぴったりな“観光”をテーマにした展示には、会場がパンパンになるくらい多くの人が足を運んでいました。マーティン・パーは、モニュメントや絶景を見事に捉えた写真ではなく、その周囲で記念写真を撮っているひとまで含めた写真などを展示しています。批評的な眼差しではありつつも、どことなく漂うユーモアはマーティン・パーならでは。岡田さんのお気に入りは4枚目のスキーの写真とのこと。
KYOTOGRAPHIE & KYOTOPHONIE Information Centre & Shop
建物の一角では、今回の『KYOTOGRAPHIE』や『KG+』の物販コーナーも。出展している写真家の写真集やブレンド豆やTシャツなどオリジナルグッズなどがずらりと並びます。アーティスト、JRの写真がプリントされたトートバッグはなかでも人気とのこと。インフォメーションセンターでもあるので、困ったらここに!
SIGMA Pop-up Library
カメラメーカー〈シグマ〉が提供する『SIGMA Pop-up Library』では、『KYOTOGRAPHIE』ゆかりの写真家の選書コーナーや、恵比寿のアートブックショップ「POST」が選書を担当した1,500冊を超える写真の名著が並びます。絶版やプレミアム値の初版が惜しげもなく棚に収められ、自由に読むことが可能。好きな人にはたまらない空間で、なかには数時間没頭していくなど、その価値がわかっているひともちらほらいるそうです。
Kurasu Pop-up Cafe @KYOTOPHONIE LOUNGE
その他にも、『KYOTOGRAPHIE』の姉妹イベントである音楽フェスティバル「KYOTOPHONIE」のラウンジスペースで、京都発のスペシャルティコーヒーショップ「Kurasu」のポップアップカフェを発見。国内では、京都のみで展開しているこのお店では、コーヒーやソフトドリンクなどで観覧の合間に休憩するのがオススメです。
さらにある一室では、コマーシャルフォトを数多く手掛けている𠮷田多麻希の写真展示もありました。薄暗がりの空間のなかに、動物や自然を捉えた写真が床に配置され、明るい空間で観る写真体験とは一味ちがうのも一興です。
JR『Printing the Chronicles of Kyoto』
「京都新聞ビル」の印刷工場跡地でダイナミックに展示するのは、世界的にも著名なフランスのアーティスト、JR。市民参加型の『クロニクル』シリーズから、サンフランシスコやニューヨーク、キューバなどを抜粋して展示しています。この『クロニクル』は、JRとその制作チームが実際に現地を訪れ、街の風景を撮影。それを素材にコラージュで背景をつくりあげ、その上にグリーンバックで捉えたその街の住民たちをコラージュして配置していくという、壮大な一枚絵です。ちなみに、JRがポートレートを撮るときのモットーは、その人本来の自然な姿勢で撮影するというものなんだとか。
今回、日本初となる京都バージョンも展示されています。京都で総数505人のポートレートを撮影した写真は、ここ京都新聞ビルはもとより、縦5メートル横22.55メートルの巨大写真壁画として、京都駅の壁面に展示されています。また、登場人物それぞれが語る自身のストーリーもオンラインで聴くことができます。さらに、印刷工場跡という非日常空間のなかでは、505人を代表して10名の人物が自身の肉声で語るストーリーとともに大型パネルで展示。先日、甲子園を制したばかりの高校球児や舞妓さん、原爆の被爆者など、そのラインナップにも注目です。
「JRはもちろん知っていましたが、写真の技術云々というよりも、誰でも楽しめる体験型の展示というのがすごくよかった。改めて感じたのは、そのコンセプトの強さです。あとは、JRは世界中で活躍しているので、その作品の多くは英語表記ですが、今回は登場人物が日本語話者なので理解が深まり、一層楽しめた気がします」(岡田)
KG+SELECT Supported by SIGMA
「堀川御池ギャラリー」では、世界中から集まったエントリーの中から、国際的に活躍する審査員によって選ばれたファイナリスト10名による、コンペティション型展覧会『KG+SELECT』が開催されていました。制作費の支援を受け、同条件の会場で1ヶ月にわたり展示を行っています。
数多くのエントリーから選ばれたというだけあり、写真としての強度やメッセージ性、アプローチのちがいなど、どれも見応え十分です。ちなみに、10名のファイナリストから、展覧会審査を経て、今年のアワード受賞者に選ばれたのは、マスクを着けた靴磨き職人をヒーローとして表現した、ウルグアイのフェデリコ・エストルによる『SHINE HEROES』(写真2枚目)。アワード受賞者は翌年の『KYOTOGRAPHIE』への出展権が与えられるそうなので、来年のフェデリコさんの展覧会もお楽しみに。その他にも、この会場なかから今後活躍が期待される写真家が出てくるかもという楽しみも感じながら、ぜひ足を運んでみてほしい会場です。
渋谷ゆり『Idyllic Moment』
さて、レンタサイクルはタイムアップということで自転車を返した足で、そのまま「ザ・ノース・フェイス スタンダード 京都」で行われている、渋谷ゆり『Idyllic Moment』へ。ヨセミテ国立公園に長期滞在してクライマーたちを撮り下ろした、モノクロの写真集『Camp4, Yosemite』の写真家といえば、思い当たるひとも多いことでしょう。3階で開催されていた今回の展示もモノクロで、クライマーたちのポートレートやボルダリングの岩の表情が巧みに切り取られています。
「石もクライマーもどちらも本当にかっこいいですね。そもそも『Camp4, Yosemite』が好きで、この『ザ・ノース・フェイス スタンダード 京都』という相性バッチリな箱でやるなら絶対に来たいなと。元々僕はBEAMSでもアウトドア関連のショップで働いていたんですが、当時からクライマーという存在は着ている服も含めて、自然体で、純粋にかっこいいと感じていました。この展示は、モノクロというのもよくて、購入してうちに飾りたくなっちゃいます」(岡田)
ichimai kyoto『print journey ー印刷を旅するー』
一日目の最後は、「ザ・ノース・フェイス スタンダード 京都」から歩いてほど近い、「ビームス 京都」へ。入り口正面入ってすぐの壁に、アートプリントブランド『ichimai kyoto』を展示中です。こちらは「写真化学」という、150余年の歴史を持つ印刷会社と京都の現代アーティストによるブランドで、さまざまなアーティストの写真をプリントして販売しています。今回は、ミニ四駆のステッカーをコラージュするアーティスト、Funny Dress-up Labによる作品が飾られていました。アートやカルチャーをさまざまな形でサポートしている、BEAMSの一つのあり方を体験する場としてぜひお立ち寄りを!
さて、京都一日目は夜までかかって多くの展示を観ることができました。岡田さんのいうように、「KYOTOGRAPHIE」および「KG+」は京都の街中で展示されるその体験が唯一無二といえるでしょう。京都の街を五感で感じながら、観る写真の数々は、ギャラリーのそれとはまたちがい、さまざまな思い出とくっつきながら記憶に残るはず。二日目の旅程も後日公開しますので、しばしお待ちを。
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。