カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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アートとグラビアが織りなす、新しいちんかめ。

メンズファッション誌『スマート(smart)』(宝島社)で、フォトグラファーの内藤啓介さんが1997年から連載している『ちんかめ』は、ヌードやグラビアに洒落感をもたらした革新的で人気の企画。『スマート』2月号(2022年12月24日発売)では、いつもの『ちんかめ』と趣向を変え、モデルでアーティストの酒井いぶきさん、イラストレーターの田中かえさんの2人とコラボレーションし、よりアート性の高いビジュアルが完成しました。世代の異なるクリエイターがどのように出会い、どのように作品をつくりだしたのか。制作にまつわる話から、〈TOKYO CULTUART by BEAMS(以下、カルチャート)〉で開催中のポップアップイベントのことまで、3人に話を聞いてきました。

profile

右:内藤啓介(フォトグラファー)

1994年からフォトグラファーとして活動を開始。雑誌や広告やミュージシャンのビジュアルなど、幅広い分野で撮影をこなす。雑誌『スマート』で連載している『ちんかめ』を手掛け、幾度も書籍化されている。2022年には米原康正と常盤響とともに、フォトグラファーユニット『ロウガンズ(LAW & GUNZ)』を結成し、「B GALLERY」で初となる展示『プリエロだけじゃダメですか?』を開催した。
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中:酒井いぶき(モデル/アーティスト)

東京都出身。モデルとして雑誌や広告、ブランドのルックに出演。シールやラベルライター『テプラ』、証明写真機『Ki-Re-i』などを駆使したアートワークを制作するアーティストとしての一面も持つ。細野晴臣のツアーグッズ制作、〈HYSTERIC GLAMOUR(ヒステリックグラマー)〉や〈X-girl(エックスガール)〉との協業など、多方面から支持を集める。
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左:田中かえ(イラストレーター)

手塚治虫や吾妻ひでおから影響を受け、幼少期からイラストを描き始める。「多摩美術大学」を卒業後、アーティスト活動を開始。『乃木坂46』や内田理央などへの作品を提供、〈BE@RBRICK(ベアブリック)〉とのコラボレーション、プロレスラーのエル・デスペラードのグッズデザイン、芥川賞作家・上田岳弘著『引力の欠落』の表紙を手掛けるなど、多岐に渡って目まぐるしく活躍。
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気の合う3人でタッグを組んだ『ちんかめ』。

普段『ちんかめ』に出演するモデルは、内藤さんと『スマート』編集部が相談して決めているそうですが、今回の企画は内藤さんからのご提案と伺いました。

内藤 そうですけど、企画の発案自体はぼくじゃないんですよ。

田中 私といぶきちゃんがやりたくて、ちんさん(内藤さんの愛称)に相談したのが始まりなんです。

田中さんと酒井さんがきっかけだったんですね。その経緯は?

田中 いぶきちゃんと会った時、一緒に作品を制作しようって話になって。ちんさんとお互い知り合いだったから、『ちんかめ』でやらせてもらいたい、ってその場ですぐに連絡したんですよ。すぐにちんさんも「いいね!」と言ってくれて、それから3ヵ月くらい経って、撮影が実現しました。

酒井 こういう形でモデルさんが決まったのは、今回が初めて?

内藤 そうかもしれない。かえちゃんとは付き合いが長くてコラボレーションしたこともあったし、いぶきちゃんはぼくが所属している事務所(KiKi inc.)のギャラリー「AL」で初めての個展を開いてくれたこともあって。よく知っている2人だったから即答しました。で、『スマート』の編集長に相談したら、やらせてもらえることになったんですよ。

酒井さんは『ちんかめ』をご存知でしたか?

酒井 もちろん知っていたけど、グラビアにすごく興味があったわけじゃないので、きちんと見ていなくて。企画が決まってから過去の『ちんかめ』を改めて見てみると、だんだんと興味が湧いてきて、最初で最後の機会だから楽しんでやろうと思いました。

田中さんは内藤さんと知り合う前は、『ちんかめ』にどんな印象をお持ちでしたか?

田中 私も周りの友達も昔から『ちんかめ』のことを知っていたし、近所のカレー屋さんの店主からは、ちんさんがよく来てくれるって教えてもらっていました。その時は「ちんさんって、本当に実在するんだ」って(笑)。

幻の存在だと思っていた?(笑)

田中 そうそう(笑)。名前は知っているけど、顔は見たことない。でも、『スマート』と言えば『ちんかめ』ってくらい知名度が高いじゃないですか。実際に会ってみると、気のいいおじさんでした(笑)。

内藤 そのカレー屋でよく一緒に飲んだよね。カレー仲間です。

酒井 それはどれくらい前?

田中 3、4年前かな。

ということは、さっき少し話にあがった内藤さんと田中さんがコラボレーションした、『Let’s get naked(〈カルチャート〉で2020年7月に開催した内藤さんキュレーションによるオムニバス展)』よりも前なんですね。

内藤 そうですね。『Let’s get naked』の前から仲が良かったけど、コラボしたのはその時が初めて。

田中 「いろんなアーティストとコラボするから、一緒にやろう」って誘ってもらったんです。ちょうどその半年前、〈カルチャート〉で私の個展『田中かえは新宿でいっぱいいっぱい』を開催していたのでBEAMSさんにはお世話になりっぱなしの1年でした。

内藤 カタカナで“レッツ ゲット ネイキッド”って描いてくれたイラスト、すごくよかったよね。

田中 私が描くキャラクターって、ほとんど肌を露出していないんですけど、グラビアのイラストにしてみたら評判がよかったです。

お互いの作家性を信じて。

酒井さんにとって、今回がグラビア初挑戦ですよね。撮影はいかがでしたか?

酒井 いつものファッションシュートと違うから緊張すると思っていたのに、いざやってみると本当に楽しかった。モデルだけじゃなくて、アートディレクションも任せてもらえて。いつもの『ちんかめ』のスタッフさんで撮影するものだと思っていたんですけど、スタッフのキャスティングも自分でしたんです。

内藤 『ちんかめ』はほとんど毎回、いつもの顔ぶれでやっていますけど、今回はいぶきチームでした。

今回は、内藤さんが撮った写真を酒井さんがコラージュした作品になっていますが、仕上がりについて内藤さんからなにかリクエストしましたか?

内藤 いぶきワールド全開でよろしくです、予算内で。って伝えただけなんです。

酒井 それを最初からずっと言ってくれていたから、本当にそうしました。

いつもの『ちんかめ』とは異なるイメージを期待した、と?

内藤 そうなんです。ポートレートだけじゃなくて、必要ならブツ撮りもするから、なんでも持ってきてって言いました。

酒井 撮影前にちんさんが、「素材を用意するから、あとはいぶきちゃんが好きに使って」って言ってくれたおかげで、すごくやりやすかったです。

内藤 ぼくが余計なことをしないほうがいいと思ったし、素材をしっかり準備しておけば、どうにでもできると思いまして。

酒井 あと、私が信頼しているスタイリストさんとヘアメイクさんにお願いしたのも、いい結果に繋がったと思う。一般的なグラビアでは見かけない、スカルのデザインの水着も用意してくれていて。

内藤 『ちんかめ』でもスカルの水着は初めてだと思う。

田中 ファッション性が高くなったよね。

酒井 私、前に〈HYSTERIC GLAMOUR〉とコラボしたことがあったから、仲良い友達にこの写真を見せたら、「〈HYSTERIC GLAMOUR〉の新作水着の写真だと思った」って言われた(笑)。

田中 そう言われると、そう見えるね(笑)。

作品のなかのひとつに、酒井さんをモデルにした田中さんのイラストもあります。

酒井 かえちゃんがどの写真をイラストにしてくれるか楽しみにしていたら、この写真を選んでくれて嬉しかった。

イラストにする写真は、田中さんがセレクトしたんですか?

田中 そうなんです。パッと見て、いぶきちゃんらしいこの写真にしました。

酒井 私もすごく気に入ってる写真。

田中 女の子が好きな写真だよね。

酒井 完成した作品を見ると、かえちゃんのイラストとそれを囲む私のコラージュがカラフルにシンクロしたね。

本当ですね。擦り合わせたかのように水色のアクセントもリンクしています。今回は酒井さんをモデルにしていますが、田中さんが普段から描いているキャラクターにはモデルがいるんですか?

田中 昔はファンアートを描いていたし、友達とかの似顔絵を描くと喜んでくれたので、特定の誰かをモデルにすることは多かったです。でも最近は、夜な夜なひとりでポーズを自撮りしまくって、それをもとに描いています。

内藤 自分でポーズを撮ってるんだ。もとの写真を見たいんだけど?

田中 絶対に嫌(笑)。私の作品がトレース疑惑で炎上したら、その写真を出すよ(笑)。

このイラストも、田中さんのタッチで酒井さんがデフォルメされていてかわいいですね。

田中 私のイラストって作風はあるけど、ひとつひとつ同じ頭身じゃないんですよ。いぶきちゃんのイラストも違う日に描いていたら、もっと頭身が小さくなって、もっとデフォルメされたものになっていたかも。

内藤 角を付けるか付けないか、いぶきちゃんに聞いてたよね。

酒井 聞かれたけど、ちんさんが私に任せてくれたように、私もかえちゃんに対して意見しませんでした。かえちゃんのことを知っているから、丸投げって意味じゃなく、信頼のうえでのお任せ。

3人それぞれがセンスを尊重し合って委ねたんですね。結果的に角は付けています。

田中 角を付けるか付けないか、自分の感覚ですけど、全体のバランスで決めていて。今回の場合だったら、角を付けた方がバランスが良かったです。角についてよく聞かれるけど、あまり深い意味はないんですよ。

酒井さんは田中さんのイラストのモデルになったのは初めてですか?

酒井 はい。描いてもらえるなんて光栄で、すごく嬉しいです。

田中 私のイラストをいぶきちゃんのコラージュで味付けすると、こうなるんだ! って新鮮だったし、私も嬉しかったよ。

原画の質感を直で観られるポップアップイベント。

約25年『ちんかめ』を手掛けてきた内藤さんから見て、この仕上がりはいかがですか?

酒井 25年! 同い年だ。

内藤 恐ろしいな(笑)。今回の『ちんかめ』は、誰も真似できないと思います。むしろ真似できるところがない。

酒井 私がグラビアについて知らないからこそだと思います。少しでも多くの人に、いいね~って思ってもらいたいです。

田中 超いいね~って思うでしょ!

酒井 インスタに1枚だけ作品をポストしたら、いいね数がすごく多かったし、ストーリーズにアップしてくれる女の子もたくさんいました。「2冊買ったから、1冊は切り抜いて飾ります」ってDMももらって、女の子が楽しんで見てくれたのが本当に嬉しかったです。

この『ちんかめ』でのコラボレーションを記念して、原画や未公開写真を展示するポップアップイベントを「BEAMS JAPAN」4Fで開催中です。

酒井 会場では、Tシャツとスウェットから、ピンズやステッカー、クッションといった小物まで、オリジナルグッズも販売しているんです。

田中 クッションは、いぶきちゃんからのリクエストだったね。

酒井 クッションの片面はおしりにしようと思ってデータまで作ったけど、リビングにあったら嫌な人もいるかなって思って。結局、別のコラージュを使って、自分が使いたい柄にしちゃいました(笑)。

ピンズになった、田中さんのイラストもかわいいですね。

酒井 ピンズの台紙は、コラージュに使った背景を使っていて、ページがそのまま商品になったようなデザインにしています。あと、『テプラ』風のピンズを作ってみたかったから、商品化してもらいました。

田中 おしりがピンズになっていたらかわいいんじゃない? シールでもいいかも。

酒井 それ、やりたい! 実際の作品でも、シールが好きだから、コラージュする時に隅をシールっぽく丸くしているんですよ。

直接作品を見ると、筆跡やコラージュならではの立体感がよく分かります。『スマート』に掲載していない写真の展示や、今回制作した以外の作品もグッズになっているなど、充実したポップアップイベントになっていると思います。

内藤 誌面で見るより、現像した写真は生々しいから、直接見てもらいたいです。

田中 生々しいって(笑)。

酒井 確かに生々しい(笑)。

雑誌と写真は紙の質感が違うから、印象が変わりますね。

酒井 面だと切れている部分もあるから、そこもぜひチェックしてください!

INFORMATION

Ibuki Sakai × Chingcame × Kae Tanaka POP UP

期間:2023年1月18日(水)〜2023年2月12日(日)

場所:BEAMS JAPAN 4F TOKYO CULTUART by BEAMS

住所:東京都新宿区新宿3-32-6 4F


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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