大学には箱根駅伝、東京六大学野球、インカレなど、注目が集まる大会がたくさんある。そんな大舞台に向かって学業と両立しながら頑張るアスリートたちと、地域住民や一般学生たちがもっと繋がれたら、きっと大学スポーツは楽しくなる。そのためにできること、やるべきことを考えてみた。
“着る”ことでつながる、
一体感とコミュニティ。
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―いま、東洋大にいったい何が起きているんでしょうか?
2023年に「TOYO SPORTS CENTER」が開設され、アスリートの技術的な強化だけでなく、大学スポーツが地域と連携したり、社会貢献を推進していくヴィジョンが掲げられました。スポーツをする人、みる人、ささえる人すべてに力を注いでいこうという取り組みの中で、シンボルマークを作りたいと思ったんです。選手たちが着るユニフォームと同じマークが入った服やグッズを身につけて応援する。それこそが大学が目指すかたちじゃないかって。
哲学的な思考を自分に取り入れ、新しい哲学を生み出していく。そんな東洋大学の理念と、時代の変化の中でも常に新しいカルチャーを生み出すビームスさんの理念って、根っこの部分ですごく似ているんじゃないかと勝手に解釈していて、ビームスさんにプロデュースをお願いしました。
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―デザインさせていただいたロゴマークは、鶏がモチーフです。
文京区の白山にある東洋大学の本拠地は、かつて大名のお屋敷だったそうです。そこに夜な夜な鳥の鳴き声がするというので、掘ったら金の鶏が出てきたという伝説がありまして。さらに創立者の井上円了先生が生前、寄付者や支援者に鶏の絵葉書を送っていたことが、調べていたらわかって。2つのエピソードに共通する鶏を、スクールカラーの鉄紺と金で表現してみたかったんです。
もう何十年も前ですが、私自身も在学時は野球部に所属していて、地域の方々に支えられました。普段の練習を散歩がてら見てきてくださったり、日本一になって地元でパレードをした時には、たくさんのお祝いを選手が乗っているオープンカーに届けてくださったり。今は、時代の変化とともに地元のスポーツに触れ合う機会も減っています。コロナ禍が落ち着いた今、改めてスポーツと地域を新しいやり方で結びつけたい。子どもたちが東洋大学を知ってファンになっていただけたら、将来の進路の選択肢の一つにもなるかもしれない。少子化の未来においても、大学にとって地域との連携は大きな意味があるんです。
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―東洋大の運動部の未来を椿さんはどう描いていますか?
アメリカの大学スポーツは興行的な側面があり、商業的に大きな成功を収めていますが、日本ではそれがないように思います。大学は、社会に出るための最後の学びの場。卒業してプロになったり、世界の舞台で活躍することを夢見て、命懸けてスポーツに取り組む学生達を、人間力を含めて本気で育成しなくてはなりません。しかしながら現状の部活の在り方では、強化費が捻出できず指導の限界を迎えてしまうことも多い。そこでグッズの売上の一部が運動部への支援に充てられる仕組みを作ろうと考えました。学費ではない外部資金をどうやって生み出すか、これも大事な課題です。
大学って学生だけではなく、そのご両親もいれば、卒業生もいる。何十万人という関わりがある中に、歴史があり、幅広い層に人気のビームスさんと取り組みできたら、新しい世界が見えるんじゃないかと期待しています。例えば地域のためにスポーツ教室を開くとして、お父さんやお母さんが、子供もおじいちゃん、おばあちゃんも連れてきてくれたら、3世代が集まります。みんなが東洋のシンボルマークが入ったウェアを着てスポーツを楽しむ姿は、大学を超えた大きなコミュニティへとつながるでしょう。そのデザインがビームスさんだとしたら、みんなワクワクすると思うんです。
それぞれの監督&主将に聞く
地域やキャンパスとのつながり
陸上競技、ラグビー、硬式野球部。全国的に活躍しているそれぞれの運動部は、地域社会やキャンパスの友人たちと、どんな交流があるんだろう。これからどんなことをしていきたい? 何が必要だと思ってる? それぞれの監督や主将たちもまた、未来に大きな夢や希望を抱いている!
1.陸上競技部長距離部門
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子どもたちとの触れ合いによって
スポーツの原点を思い出すことができる
「陸上部では、地元川越市の教育委員会からの依頼で、トップアスリート事業の一環としてランニング教室を行っています。地域の子どもたちに教えることで、学生たちも陸上競技の原点である走る楽しさ、速さを追求する気持ちに触れることができる。厳しく指導することも大切ですが、成功体験を重ねることで子どもたちに自信がつく様子を見て学ぶことは多いです。また、在学生や卒業生のネットワークをブランド化し、磨いていくことでより良いコミュニケーションが生まれるんじゃないかと考えています。そのためにもSNSを活用して取り組みやPRを発信したり、交流の機会を増やしていきたいですね」。(酒井俊幸監督)
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駅伝をきっかけに声援が増えたことで
大学の一員である自覚が芽生えました
「箱根駅伝は、僕たち東洋大学陸上部をたくさんの方に知っていただくいちばんの機会です。ランニング教室で接する地元の子どもたちや地域の方々も見てくれていますし、普段は話さない同級生も駅伝を機に声をかけてくれたり、先生も授業の話題にしてくれたり。キャンパス内外から声援をもらえることはとても嬉しいし、大会の結果を細かく見てくれる人がいると、一つ一つの試合を頑張ろうという原動力になります。実際に東洋大学のグッズを身につけてくださる方が増えると、応援されている僕たちも大学の一員であることの自覚が生まれると思います」。(主将・網本佳悟さん/総合情報学部 総合情報学科 4年生)
2.ラグビー部
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“見られること”への
マインドセットに。
「チームが活性化するには、指導者が学生にプロフェッショナルな意識をしっかりと身につけさせる必要があると感じています。環境づくりも成績も重要ですが、今までにない大学スポーツのグッズ販売という取り組みは、視覚的に選手にも良い影響を与えるし、それによって、選手たちの“見られること”に対する意識も変わるはずです。少子化が進む中、今後さらにスポーツを取り巻く環境が厳しくなることは明らか。だからこそ、集客を得るために何をするべきか。その一環として、競技を横断したシンボルマークの存在を力に、アクションを起こしていきたい」。(福永昇三監督)
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文化の違いを認め合う
コミュニケーションの場に
「ラグビー部では(特に食文化では)地元農家と協力し、芋類を育てて収穫する取り組みをしています。僕はニュージーランドから北海道の高校を経て、東洋大学に入学しました。ラグビー部は留学生が多く、それぞれの文化や考え方の違いもありますが、チームメイトや学内の友人達と人生の歩み方について話が盛り上がることも。それは僕の進む道にスポーツがあることを再確認できた良いコミュニケーションの機会です。対抗戦などで、伝統ある相手チームの応援団がユニフォームやグッズを身につけているのを見て、羨ましく感じる瞬間もありますが、東洋大学はまだまだこれから。試合会場にいる全員が同じシンボルマークを身につけて一丸となる光景を、卒業するまでに見てみたいです」。(主将・ステファン・ヴァハフォラウさん/総合情報学部 総合情報学科 4年生)
3.硬式野球部
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学生たちが教える場に立つことで
人間形成にも役立っています
「学業にも励みながら、人間形成であったり、社会に出る一歩前の土台づくりが大事だと常々考えています。地元の子供たちを対象に野球教室を毎年開催していますが、学生が教える側に立つことで、指導の難しさや理解度を深められるといった気づきがあると思うんです。大学野球が高校野球のように注目されるために、どのように変えていくべきか。東洋大学が属する東都リーグの試合は平日に行われることがほとんどです。球場に多くの人が足を運んでもらえるためにも、時代にあった変化が必要なのではと考えています」。(井上 大監督)
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地域に親近感を覚えてもらえる
地道な活動を続けていきたい
「地元の子どもたちとコミュニケーションが取れる野球教室は、僕たちを身近に感じてもらえたり、スポーツの楽しさを再認識できる新しい場所になって欲しいです。また、寮から最寄り駅までの掃除も、地域との関わりのひとつ。自分たちが街とつながっている意識を持ちながら行動すれば、東洋大学の良い印象を与えることができますし、応援したいと思ってもらえる。そして地元の方がチームのユニフォームやグッズを身につけてくれたら、もっと親近感が湧くと思う。そうした機会を増やせるように頑張りたいです」。(主将・池田彪我さん/経営学部第1部 会計ファイナンス学科 4年生)
〈BEAMS SPORTS〉と東洋大学の取り組みについて
2023年からスタートした〈BEAMS SPORTS〉と東洋大学「TOYO SPORTS CENTER」との取り組み。スポーツ活動を象徴するシンボルマークは、ユニフォームへの導入や、応援を盛り上げるアパレルグッズとして展開されます。詳しい取り組みの内容は、こちらからチェックしてみてください!
Photo:Yuichi Sugita
Edit & Text : MANUSKRIPT