

『大人BEAMS』だけで読むことができるBEAMSスタッフのコラム。今回は「ビームス ハウス 丸の内」のショップスタッフ、古牧が登場。日々の何気ない瞬間と服への想い、彼女ならではのユーモアを交えた文章で綴ります。
『大人BEAMS』だけで読むことができるBEAMSスタッフのコラム。今回は「ビームス ハウス 丸の内」のショップスタッフ、古牧が登場。日々の何気ない瞬間と服への想い、彼女ならではのユーモアを交えた文章で綴ります。
働き方や生活も、一時は劇的に変わりましたが少しずつ日常を取り戻しつつあります。

最近は街も賑わい、私が働く東京丸の内ではランチ難民に戻りつつあります。
嬉しいのか、悲しいのか。
久々に穿くグレーのスラックス。
数年前、<ロロ・ピアーナ>の生地を使用している“そのパンツ”を試着すると、シルエットはもちろん生地が気に入り購入に至りました。(<ロロ・ピアーナ>というブランド名に惹かれた訳ではありません)

“生地が気に入って”と言うと、メンズっぽい感覚と思われがちですが、こちらと同様の理由で洋服を購入する事が多々あります。
そんな中に出会った、“お気に入りの生地”でデザインも素敵なパンツは申し分ありません。
<ロロ・ピアーナ>は言わずも知れた最高級カシミヤ・ウールを取り扱うイタリアの服地メーカー。
男性ものの高級スーツやオーダースーツを連想する方も少なくないはず。
柔らかく、陰影のあるテキスタイルはスーツよりも、女性服にとても適しているさえ思う。
生地が気に入って買い物をするくせに、洋服のうんちくを語るのは苦手で、洋服屋が洋服の事を語る飲み会も苦手。
アルバイトとしてビームスに入社した頃、洋服について色々教えてくれた諸先輩方。
アルバイト向けの勉強会で、「このブランドを知らないと洋服屋とは言えない〜」と言われて何だかイヤな気持ちになった事を思い出します。
「このブランドを、知っていた人手をあげて」と言われて、たまたま知っていたので手を挙げましたが、だからなんなんだろうと違和感を感じました。
ビームスでバイトをする多くのスタッフはアパレル未経験者が多く、最初はブランド知識もまばらですからね。
予習する事も大事ですが、素敵な服に出会ってから、そのブランドや、生地に興味を持ったって良い訳です。
私は後者の人間です。
(プロとして、最低限の知識や接客のテクニックは必要ですが)
過去に戻れるなら、
「知ってるからってマウント取るな!」と言ってやりたい。
なので、ビームスの後進にも「<ロロ・ピアーナ>知らないの?」とは絶対に言いません。
「大人BEAMS」のコラムの依頼を受けたときに、何かしっくりこなかったのはそんな訳かも知れません…(すみません)
もう引き返せないので、続けます…
その<ロロ・ピアーナ>の生地を使用したそのパンツを穿くのは年に2、3回なんですが、必ず同じ所にシミを作ってしまいます。
シミを作る度にクリーニングに出すので、クリーニング店の店員さんに「あ、この前の…」と言われてしまう程。
手が掛かるのも、それはそれで愛着が湧きます。
1年ぶりにそのスラックスを穿くある日、ランチに向かうと何処も混雑していて、目当ての店には入れず。
気を取り直して、近くの蕎麦屋に駆け込みました。
その蕎麦屋はコロナ前まで頻繁に来ていたお店です。
久しぶりに伺うと、メニューも内装も。スタッフの方も2年前と同じ顔ぶれです。
割と混んでいたので、カウンターの隅に座り、いつもと同じメニューを注文。
以前は「一味をください」と、言わなくても一味をつけてくれていました。
2年のブランクは大きく、運ばれてきたそばに一味はなし。「付けてください」と言ってもらいました。

私の後ろの席にいる常連客に、スタッフが声をかけていました。
(私が常連ぶっていたのと訳が違う、仲良さそうな雰囲気で)
どうやらその常連客は、スタッフに差し入れをした様で、元気に見送られていました。
カウンター越しの厨房からも、ホールのスタッフからも「ありがとうございます」の声が飛び交いハモっています。
気を取り直して、いつもシミを付けてしまう、グレーのスラックスに白ニットの姿でそばをすすり始めると、不思議な安心感が湧いてきました。
「大丈夫、今日はパンツじゃなくて、シミを付けるとしたら“白ニット”だから」
月日が流れるのは早いものです。
時が止まった様に感じていても、もちろん時は動いていて。
2年前と同じ店員さんに、いつもと変わらないメニューをオーダーしても、周りのお客様の顔ぶれも常連さんも変わっていて。
何年経っても“生地が気に入って”購入したパンツは、やはりいつ穿いても気分が良くて。
久々に食べるそばのつゆは少し甘く感じて。
変わるものと変わらないもの。
変わっていない様で、変わっていたもの。
そんな事を思いながらそばをすすり、そば湯を飲んで。
そして、いつものパンツのいつもの所に、シミを残して帰るのであった。
古牧ゆり Yuri Komaki
ビームス ハウス 丸の内
ビームス ハウス 丸の内・ショップスタッフ。ファッションの楽しさを少しでも多くのお客様にお伝えできるよう。常に新しい提案が出来る様に、自分自身も貪欲である事。趣味はご飯を食べること。飲むこと。主に後者。最近は日々のことを交えたショップブログを書くことが日課になりストレス発散にもなっている。皆さまのちょっとした空き時間を埋めて、クスッと笑えて読みやすい文章を模索中です。
ビームス ハウス 丸の内・ショップスタッフ。ファッションの楽しさを少しでも多くのお客様にお伝えできるよう。常に新しい提案が出来る様に、自分自身も貪欲である事。趣味はご飯を食べること。飲むこと。主に後者。最近は日々のことを交えたショップブログを書くことが日課になりストレス発散にもなっている。皆さまのちょっとした空き時間を埋めて、クスッと笑えて読みやすい文章を模索中です。