マリーエレーヌ ドゥ タイヤックのジュエリーを楽しむ女性たちのスタイルジャーナル
—幼い頃からさまざまな国での暮らしを経験され、世界中を飛び回っているマリーエレーヌさんですが、現在はどんな暮らしをされているのでしょうか。
リビアで生まれて、幼少期をレバノンや中東地域で過ごし、12歳でパリに移住しました。現在の拠点であるパリにいるときは、オフィスや自宅で過ごすことが多いです。インドのジャイプールにアトリエがあるので、今でも頻繁に旅をしていますが、どこにいても同じルーティンを保つようにしています。1日の始まりは、ヨガか太極拳から。年齢を重ねてからは、適度な運動と質のいい睡眠を心がけています。
—ロンドンでファッションの仕事をされていましたが、どういうきっかけでジュエリーの道に?
幼い頃から宝石に夢中でした。GIA(米国宝石学会)で学ぶためにロンドンへ語学留学をしたのですが、80年代のロンドンのファッションシーンはとてもパワフルで楽しかったので、思わずそっちの業界に飛び込んだのです。20代の頃、帽子デザイナーのフィリップ・トレイシーのもとで右腕として働いていた時期があったのですが、クリエーションにひたむきな情熱を注ぐ彼の姿を見ているうちに、私も彼のようにならなきゃと思いました。そこで、自分にとっての原点であるジュエリーの世界に戻ろうと決めたんです。
—それから、1996年に自身のブランドを立ち上げたのですね。
当時は〈ミュウミュウ〉や〈ジル サンダー〉などのミニマルな服が人気で、私も好んで着ていたのですが、そういったファッションに合うジュエリーがほとんどありませんでした。アンティークジュエリーか、70年代のエルサ・ペレッティのデザインくらいだったかしら。女性たちの自由なライフスタイルの中で、ファッションと調和するジュエリーをつくろうと思いました。
—ジャイプールの熟練の技術を融合させ、それまでなじみのなかったカラフルな半貴石を取り入れることで、宝飾業界の常識を覆すジュエリーを生み出しました。色石にまつわる印象的なエピソードはありますか?
ジャイプールの老舗ジュエラー「ジェム・パレス」の職人との出会いは忘れられません。最上階に美しい自然光の入る白い部屋があって、そこで真っ白な服を着た年配の職人が石をカットしていました。彼はとてもエレガントでした。私は、一つひとつの石とじっくり向き合う彼の隣に座って、カッティングの技術を学びました。今でも幸せな記憶として心に刻まれています。
もうひとつの思い出は、インドのビハール州を旅したときのことです。ブッダが悟りを開いた聖地として知られていますが、インドでも犯罪率の高い危険なエリアでもありました。私はそこで、マフィアのような風貌の人に出会いました。彼は小さな包みを持っていて、その中から直径3cmほどある大きなダイヤモンドを取り出し、私に見せました。一見それは、ただのさえない石のようだったのですが、外で陽の光にかざした瞬間、まるで息を吹き返したかのように美しく輝き始めたんです。それは本当に魔法のようでした。何百万年もの歳月をかけて、美しい石を生み出す自然の力に感銘を受けました。
—「ジュエリーは男性が女性に贈るもの」という固定概念にとらわれず、「自立した女性が自分のために楽しむもの」というこれまでにない価値観を提案されてきましたね。
創業当初から、男性よりも女性の顧客が多かったです。彼女たちは経済的にも社会的にも自立していて、自分のためにジュエリーを購入し、自由な感性で身につけていました。初めての給料で私のジュエリーを買ってくださる方もたくさんいらっしゃいました。そういった喜びをジュエリーとして形に残す行為は、私たちにとって特別なことです。もしもこれが60年前だったら、話はまったく違っていたでしょう。私は時代のムードを感じ取り、彼女たちが求めるものを深く理解できたのだと思います。
—MHTのジュエリーには、一般的な18Kよりも金の含有量が高い22Kが使われているのはなぜでしょうか。ジュエリーをデザインするうえで大切にしていることを教えてください。
ゴールド本来の色と風合いが好きです。純金は柔らかすぎてジュエリーには適さないため、それに最も近い22Kを使っています。ゴールドは美しい素材ですが、希少な天然石もまたしかり。ゴールドと色石を組み合わせることで、すべての石の美しさを引き立たせたいと思っています。そのために、隣り合う石の色選びにも妥協はしません。
—マリーエレーヌさんのジュエリーにパワーをもらっている人はたくさんいますが、他のジュエラーと違う点は何でしょうか。
始めたばかりの頃は、とても小さな会社でした。資金もないので、できることは限られていましたが、常に自分に正直に、そして自分がハッピーになれるクリエーションだけをしてきました。そうすることで、お客さまにもそれが伝わると思っています。また、気持ちよく仕事できるように職場環境を整えているので、多くのスタッフが長い年月を共にしてくれています。日本では15年以上在籍しているスタッフが何人もいますし、パリのチームも同じ。みんな家族のような存在で、チームで協力し合っています。
—「色石の魔術師」とも呼ばれるマリーエレーヌさんですが、普段の服にも色を取り入れていらっしゃいますか? ご自身のスタイリングについて教えてください。
色なしでは生きられないと言えるほど、子どもの頃から色に魅了されてきました。家の中もワードローブも、たくさんの色であふれています。基本的にはその日の気分で服の色を選ぶので、今日のように赤やピンクでまとめる日もあれば、ホワイトとシルバーだけの日もありますし、デニムもよく着ます。ときには空の色に合わせて服の色を選ぶこともあって、例えば空がグレーなら黄色い服を着たくなります。
服に求めるのは快適さです。柔らかくて心地いい素材が好きなので、カシミアのニットをよく着ています。ルシアン・ペラフィネとはとても親しかったので、彼のセーターをたくさん持っています。あと、クレイジーな柄のスカートが大好きです。
服に合わせるジュエリーはだいたい同系色で、例えばピンクの服を着る日は、ピンクトルマリンをつけることが多いです。意識的にやっているわけではないのですが、自然とそうなります。
私はすべての女性に色石を気軽に取り入れてほしいと常々思っています。ジュエリーはコスメティックのようなもの。顔まわりに美しい色を添えれば、肌のトーンや色合いが変わりますから。
—マリーエレーヌさんから見て、「センスのいい人」とはどんな人でしょうか。
細部にまで気を配れる人だと思います。見えるところだけでなく、見えないところにも。誰かに見せるためではなく、自分自身のためにそれをしている人こそが、洗練された人だと思います。
—最近心を動かされたことを教えてください。
個人的なことですが、先日、叔母が80歳の誕生日を迎えました。100人規模の盛大なパーティが開かれたのですが、とても温かくて楽しい時間でした。ケーキが運ばれてくると、叔母の子どもたちが踊りながら彼女を囲んで祝福していました。叔母はパーキンソン病を患っていて、日に日に動くことが難しくなっているのですが、それでも人生を祝うその光景が本当に素晴らしく、胸を打たれました。
—日々の生活の中で、大切にしていることは何ですか?
愛する人たちと過ごすことです。家族はもちろんですが、大好きなチームと働くこともそう。ジャイプールのアトリエにいる間は家族と離れているので、チームと親密な時間を過ごします。若いチームなのですが、彼らと仕事をするのはかけがえのない時間です。
—マリーエレーヌさんが「自分らしさ」を感じる瞬間はどんなときですか。
ひとりで過ごす朝の静けさが好きです。ヨガをしたり、日の出を眺めたりしていると、とても穏やかな時間が流れます。自然に囲まれているときもです。フランスではよくガーデニングをしています。そよ風を感じ、鳥のさえずりを聞いていると、幸せな気持ちになります。
—年齢を重ねて得られたものは何ですか?
知識と自信です。どちらも若くして得るのは難しいと思います。若いときは、自分に確信が持てないですから。
—逆に、歳を重ねても変わらないことは?
私、今でも心は18歳だと思っているんです。実年齢なんて気にしたことがありません。変わらないのは、笑うことと、真面目になりすぎないこと。私にとっては重要なことです。
—素敵に歳を重ねるためのヒントをぜひ教えてください。
案じすぎないことだと思います。自分の見た目について気にしすぎるのはとても不幸なことです。何よりも大切なのは、適度に運動して正しい姿勢を維持すること。そして、加齢を素直に受け入れることです。
—ビームスのスペシャルカボションリングについてお尋ねします。リングの8石にはどんな思いが込められているのでしょうか。
ビームスの惑星モチーフのロゴにちなんで、太陽系の8つの惑星をイメージしました。簡単には見つからない、特別な色合いや輝きを持つ石だけを選びました。50周年の節目でコラボレーションできたことを、とても光栄に思っています。
—ビームスにはどんな印象をお持ちですか? 特別な思い出があれば教えてください。
優れたデザイナーのアイテムを扱っている素晴らしいショップです。東京に行くと必ず足を運びますし、いつもインスピレーションを与えてくれる場所です。そういえば以前、ビームスで2枚のセーターを買おうとしたことがあったのですが、その数日前に、姉がまったく同じものを買っていたという面白いハプニングもありましたね。
—日本にもマリーエレーヌさんのファンがたくさんいますが、日本の女性たちの印象は?
クラフトマンシップをよく理解していて、優れた教養とセンスをお持ちの方が多いです。それに、自分に似合うものをわかっていらっしゃる。ファションやジュエリーのスタイリングを、創造的なプロセスとして捉えている方が多い印象です。
—マリーエレーヌさんにとってジュエリーとはどんな存在でしょうか。
ジュエリーは、人間の一生よりも長く輝き続けるものです。そして、幸せな思い出や大切な人との絆を象徴することが多いです。人の魅力とはその人自身からにじみ出てくるものですが、ジュエリーを身につけることがさらなる自信につながります。困難な時代だからこそ、価値あるジュエリーが次なるステップへ導いてくれると信じています。
マリーエレーヌ ドゥ タイヤック
ジュエリーデザイナー
リビア生まれ。幼少期をレバノンで過ごし、12歳でパリに移る。ロンドンのファッション業界でキャリアをスタートさせ、ジュエリーデザイナーのディニー・ホールやクチュリエのヴィクター・エーデルシュタイン、帽子デザイナーのフィリップ・トレイシーらと働く。インドのジャイプールで熟練のジュエリー職人と出会い、石の持つ美しさに魅了され、1996年に自身のブランドをスタート。現在はパリと日本にブティックを、ニューヨークにショールームを構えている。
Marie-Hélène de Taillac Special Order for BEAMS 50th Anniversary
8 PLANETS CABOCHON RINGS
BEAMS 50周年を記念してフランスのジュエリーブランド〈Marie-Hélène de Taillac(マリーエレーヌ ドゥ タイヤック)〉に特別にオーダーした、太陽系の8惑星をモチーフにしたシグネチャー・カボションリングを、3月13日(金)に発売いたします。
それぞれの惑星を想起させるよう丁寧に選ばれたカラーストーン。色彩の美しさと、ブランドを象徴する普遍的なシグネチャーデザインは唯一無二の存在感です。
また、本スペシャルオーダーの発売にあわせて、フランス人アーティスト Audrey Fondecave(オードリー・フォンドゥカヴ)による描き下ろしのドローイング作品を展示いたします。またご来店されたお客様に先着で記念ポストカードをプレゼントいたします。
8つの惑星をイメージして描かれた繊細な作品とともに、特別なジュエリーが描く8つの惑星の世界をお楽しみください。
また、50周年を記念してお届けする特別なWEBコンテンツでは、ジュエリーデザイナー Marie-Hélène de Taillac さんへの対談インタビューをはじめ、彼女のジュエリーを愛用する女性たちを紹介しています。それぞれのインタビューでは、単なる愛用者としての視点だけでなく、ジュエリーを通して見えてくる彼女たちのライフスタイルや価値観、そして個々のアイデンティティを深く掘り下げています。
Marie-Hélène de Taillacの世界観と共にぜひご覧ください。
発売日:3/13(金)
ビームス ウィメン 原宿 1F 3/13(金)~3/22(日)