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ビームスが思う理想の男性像

"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。

今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。

本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。

十人 セレブレイト 十色

a fashion odyssey | 鶴田啓の視点

十人 セレブレイト 十色

 

本日のお題は「Diversity=多様性」。そして、多様性という概念を下敷きにした上で「色」についての話をしたいと思う。本題に入る前に、まずはこちらの写真をご覧いただきたい。

私、鶴田。ある日のコーディネート。ヴィンテージのコットンラグを使ったベストはM’s BRAQUE、リネンのショーツは10年前のUMIT BENAN、インナーのシャツは数年前に買ったヴィンテージで、まだフランス製だったころのHartford、シルク100%。リネンのキャップはもう7~8年は被っているJames Lock、シューズは昨年買ったGUIDIのもの。って、別に自分のコーディネートを解説・お披露目したいわけではないのだが、色に的を絞ってもう少しだけ話を続けさせていただきたい。

朝、家を出るときはいつもどおり2~3分でパパっと着替えてきたのでそんなことは思わなかったのだが、写真になった自分を客観で見て、ここで注目すべきは「黒」だな、と。全体的にはシルクやリネンなどの自然素材を中心にしたナチュラルカラーリングコーディネートなので、普通ならば足元は「茶」だろ?と。仮に色はそのままで、アイテムをリネンジャケットやコットンパンツ、シルクのプリントタイに置き換えてみても、セオリーでは間違いなく「茶靴」を合わせると思う。では、何が僕を「黒に走らせたのか?」と考える。

それは「髭」である。

厳密に言うならば「あご髭、および眉毛や瞳」ということになる。クラシックアイテムのコーディネートでは「色を拾う」なんてことをよく言うが、よくよく考えなくても肉体だってコーディネートの一部。当然、肌や体毛の色もカラーコーディネートの中に含まれるのだ。上のコーディネートをもう一度よく見て欲しい。ピンクベージュのシャツやライトブラウンのショーツは僕の肌の色に近く、黒いキャップや黒いブーツは僕の髭や瞳の色に近い。つまり、一見派手に思えるコーディネートも、カラーリングとしては「鶴田の生身の肉体にラグベストの赤を差しただけの同系色コーディネート」に過ぎないのだ。ほぼ本能的に、僕は黒のキャップとブーツを手に取ったことになる。髪や眉毛、瞳の色が黒い人には黒い服が良く似合う。1980年代前半に、ヨーロッパのファッションシーンを席巻した二人の日本人デザイナー(川久保玲と山本耀司)は、間違いなくそのことを確信犯的に利用したと思う。当時のヨーロッパ人にとって、黒は不吉な色。黒髪で黒い瞳を持つ、全身黒ずくめの東洋人デザイナーが提案したボロボロのルックは「黒の衝撃」として賛否両論の的になり、ほとんど封建的であったヨーロッパ人の美の基準を根底から揺さぶった。

それから数十年が経ち、小学生が使う24色入りの色鉛筆からは「はだいろ」という名前が消えた。20世紀の終わりにはインターネット回線が世界中に張り巡らされ、LCCの格安チケットが普及すると世界は急激に近くなった。多様性の入り口は拓(ひら)けた。それでも。2020年の世界ではBLM(Black Lives Matter)が激しく燃え上がり、2021年のSNSでは“#StopAsianHate”が叫ばれている。

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話題を変えよう。クラシック業界の(存命する)著名人の中で、僕が最もカッコいいと思うのはEdward Sexton氏だ。1960~70年代、ビートルズやストーンズ周辺の英国ロックシーンを皮切りに、後世のテーラー業界にも色んな意味で多大な影響与えたTommy Nutterの相棒であり、Nutterの斬新なシェイプやデザインを具現化してきた超・一流のカッターである。

Sexton氏は職人としての腕前もさることながら、スーツの着こなしも超・一流。僕の中では、永遠のベストドレッサーである。英国人男性としては小柄ながら、彼が得意とする構築的なスタイルのスーツを絶妙な色遣いとバランスで見事に着こなしている。

上の写真(右下)は有名な一枚なので、(上の画像だとよく見えないと思うので、気になる方は検索してみて欲しい)見たことのある読者もいるだろう。10年近く前にこのスーツスタイルを見たとき「痺れるほどカッコいいな」と感嘆した僕は、どこからソレが来るのかを(写真をまじまじと見ながら)分析した覚えがある。氏が着ているのは4つボタンダブルブレストのネイビースーツ。4つボタンのダブルブレストと言えば、ウインザー公が思い浮かぶ。Sexton氏と同じく、背が高くなかったウインザー公は仕立て屋に4つボタンのダブルブレストを注文。身長をカバーするために、上着のシェイプ位置を少し上に上げたらしい。真贋定かならぬ逸話はさておき、Sexton氏のネイビースーツはどう見てもシェイプ位置が低い。ボタンは下1つがけでVゾーンの重心も低いし、ゴージも低い。上着丈もパンツ丈も短くない。高齢なりに痩せているが、スーツをピチピチに細くする様子もない。つまり「当たり前」と言えば当たり前なのだ。そして、フィッティングやシェイプの話は一旦置いておいても、氏の着こなしが異常に洒落て見えるのは色使いから来るものだと個人的には思う。ピンホールカラーのクレリックシャツにネイビーのレジメンタルストライプを合わせたVゾーン。ストライプのオレンジとポケットスクエアの色をリンクさせているところまではパッと見れば分かるレベルだが、秘密はそこにはない。

実はクレリックシャツのボディとなっているピンクは、やや桃色がかったSexton氏の顔色と抜群にマッチしているし、白いシャツ襟はシルバーに輝く白髪と見事なリフレインを感じさせる。そして、やや浅めのブルーがベースとなったネクタイ。この似合い方がやはり尋常ではなく、10年前の僕は目を皿のようにして写真を見直してみたところ、答えを見つけた。そう、彼はBlue Eyeなのだ。ややグリーンがかったような青色の瞳は(華奢な骨格や低い身長と同じく)Edward Sextonが元々持って生まれた色ということになる。つまり僕が持つ色とは根本的に異なっており、だからこそ、僕にはSexton氏のコーディネートをコピーすることができない。そして、それはSexton氏が僕の真似をできないことと=(イコール)でもある。今やネット上に着こなしの元ネタはいくらでもタダ同然で落ちている。セレブリティのSNS、世界中のファッションスナップ、過去のベストドレッサーのアーカイブ。しかし、それらをそのままコピーする行為がどれほど「多様性」という概念に逆行するものであるかは想像に容易い。

SDGsやサスティナブル。世界の流れが変わる中でファッション産業は或いは悪役なのかもしれない。たしかに、売り方、買い方、作り方、様々な面で改善できることは山とあるだろう。それでも根本に立ち返って、僕は思う。「なぜファッションが好きなのか?」と。そして今ならこう答えるだろう。「ファッションは自分自身を祝福してくれるから」。自分が生まれ持たなかった色に羨望の言葉を呟き、他人の色の傘下に蕭々(しょうしょう)と収まりながら生きてゆくためのファッションはもはや要らない。見ず知らずのセレブリティを飾る色よりも、自分の色を祝福する態度で洋服を選び身に付けるとき、そこには「消費」以上のものが生まれるのではないか。他人の色を気にする前に、まずは自分が生まれ持った色を鏡の前で確認するということ。受け入れるという事。真の強さはきっと、その色の中に隠れている。アフリカの民族衣装にちりばめられた鮮やかな原色は、彼らの持つ美しい褐色の肌に驚くほどよく映える。その美しいマッチングを前にして、僕は祝福という言葉以外のものを思いつかない。

ファッションはあくまでも自分の色を見つめる為のきっかけに過ぎないが、もしもその色を上手く輝かせることができれば、多様性の大海原へ飛び出していく自分自身の人生に祝福の汽笛を鳴らしてくれる存在もまた、ファッションであると思うのだ。

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