BEAMS F Brilla per il gusto International Gallery BEAMS Instagram Facebook Twitter Page Top

About Us

ビームスが思う理想の男性像

"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。

今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。

本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。

その香り、

a fashion odyssey | 鶴田啓の視点

その香り、

 

DOLCE&GABBANAは別に香水ブランドではない。けれど「あの曲」を聴いて「その香水」と言われたら「どの香水?」と考えてしまうのも人の性(さが)。DOLCE&GABBANAのお店には「あの香水、ってどれのことですか?」なんて問い合わせも、頻繁にあるのだろうか。

ちなみに「その」「あの」は文法上「連帯詞」と呼ばれるものであり、「そのジャケットを取ってくれる?」や「あのコート素敵だったわね」といった具合に、その後にくる名詞を修飾する役割を持つ。そして「この」「その」「あの」は指し示す領域の違いこそあれ(ほとんどの場合)話し手と聞き手が同じ特定のものを思い浮かべることが出来る場合に使われる。となると、曲の聴き手にもDOLCE&GABBANAのスタッフにも、誰にも分からない「その香水」とはいったい「どの香水」の事なのだろうか?

時代のヒット曲と呼ばれるものには、この手のマジックがしばしば巧妙に忍ばせてある。それがフックとなり、一般大衆の心は無意識のうちにキャッチされてしまうのだろう。瑛人の「香水」という曲の場合は、自分の気持ちを独白する歌い手(僕)と相手(君)の二人にしか特定できないはずの「その香水」の香りを(ブランド名は出すけれど、銘柄までは出さないというチラ見せの状態で)大衆にまで「どんな香り?」と想像させた時点で、既に大ヒットが決まっていたのかもしれない。あの頃、君と僕の間にだけ存在した香り。それは秘密のことであり、歌い手(僕)の独白を立ち聞きしているだけの第三者(リスナー)には分からない。敢えて想像させる。この手法は人の心を動かすためには何よりも効果的だったりする。例えば、この曲で描かれる香りが「甘口のバーモントカレーを食べながら大きな口を開けて笑う君のその香り」だったとしよう。バーモントカレーの「あの香り」を誰もが想像・特定できるのだが、むしろ特定出来過ぎてしまうが故にセンチメンタルな密(ひそ)やかさに欠ける。しかし、これが「甘口のバーモントカレーを食べながら大きな口を開けて笑う君のその笑顔」となれば、リスナーは「その笑顔」がどんなものか想像が膨らむし、個人的な「あの人」の笑顔まで思い出してしまったり、ちょっと切なくなってしまったり、同じ甘口カレーでも随分と心象風景が変わってくる。つまり人の心を動かすには「特定できる」と「特定できない」(言い換えれば「経験」と「想像」)のブレンドとさじ加減が重要であるという事。もし、この歌詞を書いた彼が「ファッションブランドとしては有名だけれど、香水ブランドではないので香り自体はそれほど広くは知られていない」という視点でDOLCE&GABBANAを選んだのだとしたら、相当な確信犯だと思う。CALVIN KLEINの「ck-one」では具体的に過ぎるということなのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昔からよくある「ブランドマーケティング」の視点。「ブランド」とは、その名前を聞いて連想される事象が多ければ多いほどブランドとして確立されていることになる、という。逆に、ブランドとして成立していないものの名前からは、何も連想できないという事だ。

例えばユニクロから連想されるのは「ファストファッション」「安い」「フリース」「ヒートテック」「エアリズム」「ブラトップ」「佐藤可士和」「柳井正」「JW ANDERSON」「JIL SANDER」などなど、別にファッションに詳しくなくても様々なキーワードが次々と思い浮かぶ。それがユニクロというブランドの強さである。ある意味ではユニクロと対極に位置するエルメスの場合はどうだろう?「高級」「ラグジュアリー」「老舗」「馬具」「鞄」「バーキン」「カレ」「JOHN LOBB」「MARTIN MARGIELA」「アップルウォッチ」「オレンジ」…こちらも枚挙にいとまがないほど数多くのワードが連想される。勿論、人によってはネガティブなイメージが浮かぶこともあるだろうが、いずれにしても「あのエルメス」「あのユニクロ」という連体詞とセットで語ることが出来るこの2社は圧倒的に強いブランド性を有しているのだと言える。ファッションビジネスにおいてブランド性が重視されるのは消費行動に直接訴求するからであるが、これは別にファッションに限った話では無い。地域振興を考える自治体から見てもブランド性とは一大事なのである。例えば「フリースが欲しい」や「九州旅行で温泉に入りたい」などと思ったときに、「ユニクロ」「パタゴニア」「湯布院」「黒川」と、人々が連想する優先順位がそのままブランド性の強さを表しているということだ。

しかし、このブランド性に繋がる「認知」が思わぬところから手に入る場合がある。冒頭に挙げたようなポップソングの影響などはその最たるもので、「香水」と検索すると予測変換でトップに出てくるブランド名は「CALVIN KLEIN ck-one」でも「CHANEL N°5」でもなく今や「DOLCE&GABBANA」であり、「DOLCE&GABBANA」と検索すると「ニット」でも「ジャケット」でもなく「香水」と予測されてしまう。かく言う僕も、近所にある行きつけの寿司屋では「渋野日向子プロのゴルフウェアを作っている会社・ビームスの人」として60~70代の常連客の間で認知されている。実際に「ビームス」と検索すると、かなりの確率で「ビームス ゴルフ」という第二ワードが予測されて出てくる。

弊社は1976年の創業以来、コロナ禍の中でも今年45周年を迎えることが出来た。これまでの歴史の長さから、ビームスのブランド性、つまり一般のお客様に認知してもらう連想ワードも45年前に比べると随分と増えた事だろう。「セレクトショップ」「地球儀マーク」「設楽洋」「ポパイ」「原宿」「渋カジ」「コラボ」をはじめ、最近では「渋野日向子」「宇宙服」「SSZ」、本コラムをお読みいただいている方には「中村達也」や「西口修平」といった個人名もそのひとつであろうか。

しかし、日本のファッションをリードする企業としては「あのビームス」となってからが勝負である。すべてが過去の「経験」どおりに収まってしまうとツマラナイ。すでに定着したパブリックイメージを、ときには良い意味で裏切りながら、ドキドキするような「想像」をお客様に提供する。特定のビームスと、未だ見ぬビームス。「あのビームス」と話したときに「どのビームス?」と返ってくるような、多面体のような魅力を持ち続けたいものである。

ちなみに、大人の男性たるもの実際に香水を身に付ける場合は、やはりあからさまではない方が良い。その場で他人にブランド名や銘柄が言い当てられるほど強いものではなく、別れて自宅に帰ったころになってフッと思い出すような「あの香り」くらいの方が長続きするのかもしれない。

Share

Other Posts

もっと見る

Related Post