DAIWA PIER39

PROJECT
DAIWA PIER39
CLIENT
ダイワ(グローブライド)
YEAR
2020

DAIWAの新ライン<DAIWA pier39(ダイワ ピア39)>をビームスが商品ディレクション。「大自然」と「都会をシームレスに繋ぐ架け橋」という考えを提案するこのラインは、都市生活を満喫するためのデザインと、フィッシングを楽しむためのアイディアが共存するアパレルコレクション。これまで培ってきたフィッシングシーンでの経験の中に見出した発想を、日常というフィールドの中でもサポート出来るこだわりが細部にまで表現されている。釣りという趣向から生まれたリアルクローズが「DAIWA PIER39」。

Order

釣りというアクティビティの魅力に触れることの少ない若い層に向けた、ファッション的なアプローチでのブランド開発プロジェクト。ビームスはクリエイティブのブレーンとして参加し、ダブルネームではなくDAIWAブランドとしての単なるギアではない「ライフスタイル」軸のオリジナル・ウェアブランドをプロデュース。

Issue

素材面や技術面における圧倒的な優位性を含めて、環境的には無限の可能性を感じたが、プロダクト開発のタームがファッションにおけるものづくりのタームとは比べものにならないほど早いスピードであることと、ブランドの世界観の表現という視点でのコミュニケーションの必要性を共有する必要があり、チーム全体での与件の整理に多くの時間を費やしました。

Ideas

プロダクト開発においては”大自然と都会を繋ぐ架け橋”としての存在を提案し、エントリークラスがファッションを楽しみつつ釣りに必要不可欠である機能性とディテールを搭載。ブランドコミュニケーションの視点では、プロダクト開発と同時進行でコミュニケーションビジュアルをディレクションし、ファッション業界へのリーチを念頭に置いたアプローチの展示会までをトータルでプロデュースしています。

VOICE

  • 日高正幸
  • プロデューサー

プロジェクトがスタートした当初は、釣りの魅力に触れる機会の少ない若い層に向けた新たなウェアブランド開発はもちろん、コミュニケーションをとるためのコンテンツづくりに関しても課題を抱えていましたが、具体的なアウトプットイメージは設定されていませんでした。ただ、そういう状況だからこそ「BEAMSチームなら何かしてくれそうだ」というDAIWAのみなさまからの強い期待を感じていました。そこで私たちは、まずはお互い「そもそも何ができるのか」を模索することから始めました。「何をするか」を探すのではなく、課題そのものがなんなのかを探っていく作業です。このイニシャルのプロセスで、お互いに腹を割って話すことが大事なのですが、みなさん覚悟を決めてプロジェクトに関わっていただけたことで後の工程がとてもうまくいったんだと思っています。
打ち合わせを重ね、課題がクリアになったところで、プロダクトそのものディレクションは中田にすべて託し、僕はそれ以外のPRの部分を担当しました。ビームスのメンバーは誰もが、販売されているひとつのプロダクトを見る時に、その周辺に販売や流通の方法論、価値の伝え方、コミュニケーション設計など、本当にたくさんの要素が絡み合ってそのプロダクトの価値を構成しているのだということを体感的に理解しています。逆説的に言えば、例えばプロダクト自体で差別化が難しかったとしても、伝え方次第でその価値を向上させることが可能だと考えている。このプロジェクトの場合、釣り市場に置けるDAIWAというブランド価値が圧倒的なので、僕たちは出し惜しみすることなくファッションに振り切れました。だからこそ「PIER39」については、コンセプト設計はもちろんデザインや技術的にも最高の完成度だと感じていましたが、ビームスというブランドネームを表に出さない完全プロデュース案件としては初の取り組みだったので、その価値をお客さまにきちんと伝えられるかどうか一抹の不安はありました。だから、PRでできることはすべてやりきることにしたんです。DAIWAのプレスルームで開催する予定だった最初の展示会のタイミングに、ファーストコレクションのイメージビジュアルやルックが全部整った状態を目指したのです。実際、プロダクト開発と同時にビジュアルコミュニケーション用の素材を制作するのは困難を極め、展示会の設計も含め、あらゆるコンテンツの制作プロセスがすべてタイトなスケジュールの中で進行していきました。サンプルが上がったその日にコーディネートを組み、翌週にロケに出てそのままレイアウトを引いて、翌週展示会を迎える、というような(笑)。ただ、そうした難しい状況でも、最後まで質を追求しながらやり切れる粘り強さもまた、ビームスの強さのひとつかもしれません。実際、展示会は大盛況で、釣り業界だけではなく、アパレル業界の中でもかなり大きな話題になりました。
僕たちはプロデュースに関わる上で、主語はあくまでもその企業自身であり、ビームスは「通訳者」であるという意識を常に持っています。そのためには、企業やブランドが何を一番伝えたいのか、そしてどこに課題があるのかをできる限り正確にヒアリングしなくてはいけない。そのあと、どこに関わるメンバー全員でゴールを共有し、そこに降り立つためのコミュニケーションを設計してきます。その際、誰をアサインするかが最も重要な作業です。それは僕たちがプロモーションにおいても、表現においても、ものづくりにおいても、それが属人的であればあるほど魅力的がアイデアが生まれるものだと考えているから。今回の「PIER39」プロジェクトのように、ディレクターが全力で自分のカラーを出せる環境が整った時には、ものすごい強さを発揮する。幸いビームスには個性的かつ、独自のノウハウを持ったディレクターが数多くいます。だから組み合わせがうまくいけば、どんなソリューションでも必ず成功させられると確信しているんです。

  • 中田慎介
  • ディレクター

釣具に関してトップクラスのシェアを誇るDAIWAですが、若い人々に対して釣りの楽しさを伝えるためのアプローチを模索中でした。実際に会社に伺ってみると、ゴアテックスを始め様々な最先端の素材が揃っていて、トータルでどんなものでも作れる素晴らしい環境でした。この機能性と素材をベースに、僕らなりのフィルターを通してウェアをプロデュースしたら絶対かっこいいモノができるとすぐ確信しましたね。コンセプトを設計する上で最初に考えたのは、若者の生活スタイル。ウィークデーに一生懸命仕事して、金曜日は朝まで夜遊び。そんな彼らが朝そのまま釣りに行くとしたら…。街で着ているファッションのまま竿だけ持って釣りに行けるような気軽さがあれば、オール明けに「ちょっと釣りをしに行こうかな」と思ってくれるかもしれない。そこで「釣りのためのおしゃれなウェア」ではなく「釣り“も”できるおしゃれな普段着」を作ってみたらどうだろうという感じで、視点を180度変えてみた。そのアイデアをDAIWA社内にファッション好きな方がいて、とても面白がっていただけたんです。もちろんファッション的なアプローチだからといって、雰囲気やディテールだけを「釣りっぽく」するようなものづくりは僕らのスタイルじゃない。どんなプロダクトをプロデュースする時にも、ディレクターはその背景にあるカルチャーを深掘りして、ニーズや魅力を自分自身で腹落ちさせてから、理にかなったものづくりをするのがビームス流なんです。例えばこのプロジェクトでも、街着のようなセットアップにルアーケースやタックルボックスがぴったり入るというような、釣りに絶対に欠かせない機能性を付け加えたり。逆にジャケットは、あえて古いフィッシングやハンティングの要素をデザインに取り入れたりしました。いわゆる防水マウンテンパーカーなんかを作ったとしても、面白さは何も伝わらないですからね。最初から「フルコレクションを作る」というのは想定外でしたけど(笑)。
「角度を変えてみる」というプロセスは、ビームスチームに受け継がれてきた文化みたいなものですね。もちろんプロデュースの仕事においてディレクションを担当する際には、その企業の方々やブランドがそれまで大切にしてきた「アイデンティティ」を軸にあらゆるソリューションを設計していくことがなによりも重要です。ただ僕らはそのアイデンティティの核となる部分を、まずは少し違った視点から見てみるようにしています。つまり、物自体は変えないけど「見る角度」を変えてみるということ。プロダクトが生まれた歴史的な背景や、そのカルチャーに身を置くユーザーが大切にしてきたこと、必要不可欠な機能性。そうした一見不可侵であるとも思えるような領域を、僕たちなりのフィルターを通して最初から見直すことで、新たな価値が生まれる「余白」が見えてくることがあるんです。深掘りして、分解して、混ぜ合わせて、新たな化学応起こす、みたいなことを楽しんでるんです(笑)。
ちなみにブランド名の「PIER39」というのは、サンフランシスコの場所のことです。「都市と大自然がシームレスにリンクするライフスタイル」のもこのプロジェクトのコンセプトなので、DAIWAのアメリカチームに協力していただいて、コンセプトを象徴するような場所を探していただきました。僕たち自身が全力で楽しんでいたのと同じように、DAIWAのみなさんがプロジェクトをすごく楽しんでいらっしゃったこともとても嬉しかった。みなさん本当にピュアな方ばかりで、展示会の準備も含めて、かなりタフなプロジェクトでしたが、最高のチームワークで仕事をさせていただけました。