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ローランドのSP-404ってどう使うの?
多機能サンプラーの底知れぬ実力を探る!

電子楽器メーカー〈Roland(ローランド)〉の「SP-404」シリーズはサンプラーの名機として音楽シーンで愛され続け、今年で誕生から20周年。それを記念して、「スチャダラパー」のANIさん&ナオヒロックさんが手がけるブランド〈SAMUEL(サミュエル)〉、さらに〈TOKYO CULTUART by BEAMS〉がタッグを組み、「SP-404」をモチーフにしたアパレルを製作しました。でも、そもそも「SP-404」、ひいてはサンプラーって一体何ができるの? 愛用者である「Donuts Disco Deluxe」の3人とセク山さんから、その魅力を探ります。

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左:Donuts Disco Deluxe

左からAFRA・ANI(スチャダラパー)・ロボ宙の3名による、DJとMCとヒューマンビートボックスのユニット。70年代のアメリカ・ブロンクスで行われていた野外パーティ“ブロックパーティ“のライブ感や熱量を現代にアップデートする。大型野外フェスから日本独自のブロックパーティである盆踊りまで、音が鳴らせる場所ならどこでも活躍を約束。

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右:セク山

ダンサーや雑誌編集者などを経て、現在はDJを中心に活動。プロバスケットボールリーグ「Bリーグ:川崎ブレイブサンダース」のアリーナDJと全体選曲を担当する。

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曲づくりからステージまで。

まず、サンプラーって聞いても、どう使うのやら…。「SP-404」ではどんなことができるのか教えてください。

ANI いろんな機能が搭載されていて、ひとによって使い方が違うんですけど、それがいいんですよ。ぼくはビートを入れて、ライブで使っていますよ。パソコンより簡単に使えます。

セク山 ボタンひとつでビートを流せて便利ですよね。

AFRA 一発で頭出しができるんです。ビートをリストから選んで流すパソコンより、直感的に扱えるというか。

ANI ライブはずっとターンテーブルでやっていたけど、「SP-404」を使うようになってから曲の転換がすごく楽になりました。

アート、ファッション、カルチャーなど、あらゆるジャンルが融合した、五感を刺激する体験型セレクトショップとしてオープンした「ビームス ライフ 横浜」。その店頭で4月11日(金)にイベントを開催し、リハーサルの時間に話を伺った。

セク山 ぼくはDJのときに、効果音を流すサブ機として「SP-404」を使っています。

ANI その使い方も多いよね。レゲエのイベントでよく流れているピュンピュンって効果音もサンプラーが使われています。

AFRA それを見てSPシリーズのサンプラーの存在を知りましたよ。最初は効果音を流すために使う機材っていうイメージでした。

セク山 なくてもDJはできるけど、あったほうがおもしろい。ぼく、動物の鳴き声も入れていまして。カラスとか犬とか鷹とか。ボタンひとつでディレイ(音の遅延)をかけることもできるんですよ。

ANI そうそう。「SP-404」にはエフェクト機能も付いているんです。ロボ宙は「SP-404」を使ってライブしてるもんね。

ロボ宙 そうですね。インストを入れています。サンプラー1台でライブができるよって友達が譲ってくれて、使い始めたんですよ。

AFRA ぼくは、これひとつでビートをつくれるのがおもしろいと思っています。パソコンほど厳密につくれないからこそ、自分の感覚が頼りになるのがいいんですよ。サンプリングするときにエフェクト機能を使えば、この1台で原曲に味付けできて、サンプル音が広がります。

ステージのパフォーマンスからビートメイクまで使えるんですね。みなさんが「SP-404」を手に入れたのはいつですか?

セク山 2009年にリリースされた「SP-404SX」っていう前のモデルだから、10年以上前ですね。それが1台目でした。

AFRA ぼくも「SP-404SX」から使っています。

ロボ宙 ぼくはその前、2008年くらいには使っていました。SXの前のモデルだから「SP-303」が最初かな。現行の「SP-404MKⅡ」まで、いろんなモデルが出ていましたよね。

ANI ぼくも「SP-404SX」から。10年くらい前に「Donuts Disco Deluxe」でツアーをやるために買った気がします。

左が2021年に発売された現行機「SP-404MKⅡ」で、右が2009年に発売された「SP-404SX」。PCよりも小さく、持ち運びもラク。

そんな「SP-404」が20周年ということで、〈サミュエル〉、〈TOKYO CULTUART by BEAMS〉でアパレルを製作しました。長年愛用している機材とコラボレーションが実現して、いかがでしたか?

ANI そりゃあ、もう、やった!!と思いましたよ。頑張らなきゃって。〈ローランド〉って、すごいメーカーですから。

AFRA 〈ローランド〉には名機がいっぱいありますよね。ドラムマシーンの「TR-808」とか、数々のクラブミュージックを支えていましたし。

セク山 「TR-808」はいまだに人気ですし、ダンスミュージックの基本ですよね。

Tシャツのイラストは、どなたが描かれたんですか?

ANI ぼくが描きました。ツマミをちょっと動かして、使ってる感を出してみたりして。

セク山 本当だ。いいですね。

ほかのサンプラーと比べて、「SP-404」のどんなところが気に入っているんですか?

ANI コンパクトで重くなくて、持ち運びしやすいんですよ。

セク山 そして、電池で動く。

ロボ宙 操作も簡単。

ANI ほかのサンプラーは操作が難しかったもんね。

AFRA サンプラーを触ったことない初心者でも使いやすいくらい操作が簡単なんです。

ロボ宙 とりあえず音を入れて直感的に触っていれば、なにかに使えます。

ANI 音ならなんでも入れられて、好きに使える。

ロボ宙 レコードと繋げられるから、レコードからも音を入れられますし。

セク山 そうですね。SDカードを使って音を入れることもできるから使い勝手がいいんです。

ANI 繋いじゃえば、ラジオでもテレビでも、なんでも音を抽出して遊べるんです。

AFRA まあ、「SP-404」はなによりも、コンパクトっていうのがいい。

セク山 本当にそう。リュックに入る大きさが便利なんですよ。

音が鳴るなら、どこでもSP-404。

ここからは、現行機の「SP-404MKⅡ」を開発した〈ローランド〉の白土健生さんにも参加していただきます。みなさんは、コンパクトで持ち運びしやすいところが気に入っていると話してくれました。そのポータブル性は意識していたんですか?

白土 そうですね。持ち運びしやすく、電池で駆動する。それで他社サンプラーと差別化を図ったと先代のエンジニアから聞いています。あと、「SP-404MKⅡ」ではモバイルバッテリーなどからでも給電できるようになりました。

一番右に座っているのが、「SP-404MKⅡ」の開発に関わった〈ローランド〉の白土さん。

2021年に発売された「SP-404MKⅡ」で、ポータブル性をさらに高めたと。

白土 リチウムイオン電池の搭載も考えましたが、重量やコストバランス、飛行機の預け入れ手荷物の規制など総合的に判断して、搭載を見送りました。

セク山 モバイルバッテリーが発火したってニュース、たまに観ますもんね。

白土 そうなんですよ。今回、3つの給電系統(ACアダプタ、単三電池、USB Type-C)に対応しており、ご使用される場所や用途に応じて、使い分けることができます。

初代「SP-404」の誕生から20年経っても、なおアップデートを続けているんですね。

白土 「SP-404」が誕生してから20年が経ち、使い方が浸透していくうちに、いろんな現場で使われるようになったんですよ。出先でビートをつくることもあれば、DJが効果音を流すために使うこともあります。たとえば、学校だったら演劇部で使われることもあるんです。

ANI 野球場でも使っていますよね。 “ファウルボールにご注意ください”って。

白土 プロ野球だったら12球団で使ってもらっています。

セク山 バスケの試合でも使われていますよ。

AFRA お祭りとかのイベントでも使えますよね。町内に1台あったほうがいい(笑)。

ロボ宙 マイクがあるところに「SP-404」ですね。

セク山 テーマパークのパレードでは、恐竜の鳴き声を再生していました。

白土 遊園地でも使ってもらっているんです。

案外、身近なところでも愛用されているんですね。

白土 ラジオ番組でも使われていますし、シャンパンコールでも役に立っていると聞いたことがあります。

AFRA 「SP-404」の銅像が立ってもいいくらい(笑)。いろんな場所で活躍していますね。

セク山 企業のパーティにDJで呼んでいただくことがあって、開催されるクイズ大会で「SP-404」をよく使いますね。出題するときの音だったり、ピンポーンとかブブーとか、クイズの効果音を入れておくとすごくスムースな進行ができます。

セク山さんがクイズ大会で使用しているパッド。かなりお気に入りなんだとか。

ANIさんとセク山さんは〈京浜電子〉で、どのパッドにどんな音源を割り当てたかメモしておく「SP-404 NOTE BOOK」をつくっていましたよね。

セク山 「Donuts Disco Deluxe」のライブで、ANIさんがどのボタンにどんな音を入れているかメモした紙を「SP-404」の下に敷いていたんですよ。すごく便利だなって思って真似したんですけど、もっと使いやすくできると思って、ノートをつくってみることにしました。

ANI 〈ローランド〉に一声かけておこうと思ったけど、そういう問い合わせは受け付けていないって注意書きがあったから、ひるんじゃって勝手につくっちゃいました(笑)。

白土 最初はアンオフィシャルでしたが、「SP-404MKII」では、〈ローランド〉オフィシャルになったんですよ。ラッパーのリリックノートに使われていたミード社のコンポジションブックをサンプリングしているのがおしゃれですよね。

ANI ノートのデザインはいろんな案があったんですよ。キャンパスだったりツバメだったり。

セク山 サイズは「SP-404MKⅡ」と同じにして、一緒に持ち運べるようにしました。

「SP-404」と同じくコンパクトなサイズ感で、ブースに立てかけやすい。縦書きで使っても、横書きで使っても、プリクラなんかを貼ってもいいらしい。

ノートにメモしておかないと分からなくなるくらい、たくさんの音が入っているんですね。音源は最大でいくつ入れられるんですか?

白土 すべて使うと、2560曲入れられます。

すごい数…! DJやアーティストではないひとが「SP-404」を使うなら、どんな使い方ができますか?

白土 私の子どもたちは、「SP-404MKⅡ」を経由してYouTubeを観ていますよ。そうすれば音質がよくなるし、気に入ったセリフとか必殺技を録音してストックしていて。ラジオと繋げば、番組を録り溜めすることもできますし。

AFRA エフェクト機能で録った音源をいじって遊ぶこともできますね。

ANI 1曲まるまる録音できますからね。

ロボ宙 ひとりでライブをするときは、1時間くらいのステージになるように曲を入れていますよ。DJモードも使ってみたいと思っているんですよ。

DJモードとは?

白土 「SP-404MKⅡ」で初搭載した機能です。CDJの代わりに「SP-404」を2台繋げて使っているひとがいたんです。それを見て、持ち運びが便利なモデルなのに2台も準備するのは大変だと思って、1台でなんとかできないかと考えたのがDJモード。通常モードだと音はカットイン・カットアウトで出ちゃいますが、DJモードならフェードイン・フェードアウトのコントロールが可能で、ロングMIXもできるようになりました。

サンプラーなのにDJもできるんですね。

白土 そうなんです。たとえばBPMが100と120の曲を繋ぐとき、自動で速さを調整してくれるシンク機能も搭載しています。

セク山 シンクもできるんですか。

もしかしたら、あの名盤もSP-404で!?

愛用者でも、知らない機能がたくさんあるんですね。

白土 正直、機能を詰め込みすぎたと思っています(笑)。ただ、スイスのアーミーナイフ(十徳ナイフ)みたいだと言ってもらうことも。あれって、よく使うツールは1個か2個じゃないですか。でも、ひとそれぞれ使うツールが違うし、あったら便利。そう言われて、すごくしっくりきました。

DJモード以外に、少し変わった機能はありますか?

白土 40秒ほど自動で常時録音しているので、たとえばビートを制作しているとき、録音していなくても過去にさかのぼることができるんです。スキップ・バック・サンプリングという機能です。

AFRA その機能を使ってみたいんですけど、まだタイミングが来ていないんですよ。

セク山 全然知らなかった!

白土 スキップ・バック・サンプリングを搭載した経緯がありまして。最初に試作品が完成して、国内外のアーティストに使ってもらったところ、ビート制作中に録音していなくて「いまのよかったのに…」ってなることが多々ありました。そのひとりがFlying Lotus。

THUNDERCATやKendrick Lamarの作品を手がけた音楽プロデューサーのFlying Lotusが関係しているんですか。

白土 彼はいろんな機材を細かくチェックしていて、「昔のシンセサイザーに過去にさかのぼれる便利な機能があったよね」と話してくれたんですよ。それから着想を得て、スキップ・バック・サンプリングを搭載しました。

そんな裏話があったんですね! みなさんからもフィードバックがあれば、次世代の「SP-404」で採用されるかもしれませんよ。

セク山 前から思っていたんですけど、すべてのDJ機材が防水仕様になってほしいです。

ANI ビーチとか川でも安心だね。お酒をこぼしたりしても大丈夫。

白土 ブース越しにDJと乾杯すると、こぼしちゃう可能性もありますもんね。

セク山 お酒をこぼしちゃったら、もう大変。気をつけろって話だけど。

ANI 新しい機能か…。すでに全部の機能を使いきれていないし、操作も簡単ですからね。音の波形も表示されるようになったし。

白土 前モデルまで液晶に波形が表示されなかったので、耳で聴いてタイミングを合わせる職人技が必要だったんですよ。

セク山 それはそれで好きでしたよ。

AFRA 前モデルにはマイクが内蔵されていましたよね。

ANI カップ焼きそばの湯切り口みたいに(笑)。角にマイクがあったよね。

白土 内蔵マイクは外しちゃいましたが、いまならスマホで録音した音声をケーブルで繋いで入れられるようになっています。あと、ボコーダーとかオートチューンとか、声を変えられるエフェクトも搭載しています。

セク山 今日のイベントでやってみましょう!

ロボ宙 やり方わかんないけど(笑)。

セク山 そういえば、この前ANIさんから「SP-202」を譲ってもらったんですよ。

白土 1998年にリリースした「SP-202 Dr.Sample」ですか。最近、状態のいいものが出てこないんですよ。私もずっと探しているんですけど。

昔の機種ならではのよさもあるんですか?

白土 SPシリーズはモデルによって音が違うんです。使用している半導体が違うし、DSPの圧縮技術、要は録音用メモリの容量が少ないから圧縮して録音しなきゃいけませんでした。だから、昔のモデルほどLo-Fiな音になります。

セク山 そのLo-Fiな音がいいんですよ。

ロボ宙 好きなひと多いですよね。

HIPHOPのサンプリングで使われるようになったのは2000年に入ってからですか?

白土 そうですね。MadlibっていうHIPHOPのプロデューサーが、「SP-303」と小さいターンテーブルを持ってブラジルに行って、現地で手に入れたレコードを使ってホテルでビートメイクしている動画がYouTubeにアップされています。

AFRA それ、めっちゃ観ました。大好きな動画です。現地のドラマーとセッションする道中でビートをつくっていましたね。

白土 あと、噂話で真偽は分かりませんが、2006年に亡くなってしまったJ DillaというHIPHOPのプロデューサーが、入院中に「SP-303」を使っていたという話も聞いたことがあります。最後のアルバム『Donuts』に収録されている数曲は「SP-303」を使っていたとか、いないとか。

AFRA ぼくもその話を聞いたことがあります。諸説ありますけど。

セク山 J Dillaといえば、他社のサンプラーを使っていたイメージがあるけど、ありえる話だと思います。

ANI 病室のベッドの上で使うなら、小型の「SP-303」のほうがリアルですよね。

白土 「SP-202」や「SP-303」など歴代モデルの系譜を受け継いだ「SP-404」は、HIPHOPシーンから演劇部や野球場まで、幅広いシーンで愛用していただいたおかげで20周年を迎えることができ、〈ローランド〉きってのロングセラーとなりました。これからもよろしくお願いします!

じゃあ最後に、「SP-404」にいれているなかでも気に入っている音、よく使っている音をそれぞれ教えてください!

ANI’s Favorite Pad

ANI DDDのライブ始まりに鳴らすサイレンの音。結構長いので狼煙をあげる感じで使っています。

AFRA’s Favorite Pad

AFRA De La Soulが来日した際、楽屋で収録してもらった「Donuts Disco Deluxe」の超レアなシャウト。超貴重な宝物で、ライブでは必ず使用していますね。

ロボ宙’s Favorite Pad

ロボ宙 「テガキ」のインストトラックは、シンプルでミニマルなトラックですが、そのときのタイミング、出す音量などで、どんなシチュエーションにもハマる、お気に入りの1曲です。

セク山’s Favorite Pad

セク山 DJ中に使用するSEのひとつ。宇宙的な感じの音が好きで重宝しているんです。

カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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