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石川県が震度7の大地震に見舞われ、多くの人々が被災した2024年1月。石川県輪島市にあった漫画家・永井豪の記念館もまた全焼してしまった。しかし奇跡的に同館所蔵の原画やフィギュアが焼失を免れ、別の場所に移管されている。このことを報道で知った〈マンガート ビームス〉のディレクター橘髙は、石川県出身の永井豪さんとのコラボレーションでチャリティー企画のTシャツを発案。売り上げを被災地の寄付に充てるという提案に永井さんの賛同も得て、永井豪キャラ大集合のTシャツの受注販売が決定しました! 今回は橘髙と永井さん率いる「ダイナミック企画」のオフィスを訪問し、自身の漫画家のルーツから、何度も甦る自作のキャラクター、そして創作にかける熱意などについて話を伺います。
1945年生まれ。石川県輪島市出身。石ノ森章太郎のアシスタントを経て、1967年に『ぼくら』(講談社)11月号にて『目明しポリ吉』を発表し漫画家デビュー。多彩な表現で幅広い作品を手掛け、代表作に『ハレンチ学園』『あばしり一家』『デビルマン』『マジンガーZ』『キューティーハニー』などがある。現在は、日本漫画家協会理事、石川県観光大使も務めている。
2007年入社。アルバイトからはじまり、ロジスティック部を経て、アウトレットを統括する部署で働きながら学校でデザインを学ぶ。学校卒業後に制作部へ異動し現職に。アニメ、マンガ、アイドルが大好き。
Instagram:@rx78_tmg
橘髙 永井先生は故郷の石川県にお住まいの頃、手塚先生の漫画『ロストワールド』に影響を受けて漫画家を志したそうですね。
永井 まだ幼稚園に入園前です。4歳ぐらいだったと思うんですけど。ぼくは5人兄弟の4番目ですが、一番上の兄が金沢市で寄宿生活を送っていたんです。それで家に帰ってくる時に金沢の書店で、手塚先生の漫画を4タイトル買ってきてくれました。『メトロポリス』、『ロストワールド』、『拳銃天使』、『ファウスト』です。4人の兄弟に渡して、小さい子から先に取っていいよっていうので、下の弟が一番ブ厚い『拳銃天使』を取って、ぼくが『ロストワールド』を選びました。『ロストワールド』は地球編と宇宙編に分かれた2冊だったので、1冊の漫画より2冊がよいと思ったんですね(笑)。
永井 吹き出しの字がまだ読めないものだから、兄に読んでもらいましたが、結局4タイトル全部を兄弟で回し読みしたんです。『ロストワールド』は次々と登場人物が死んで、ミイちゃんというウサギの男の子も死んで、ヒゲおやじしか生き残らないというシリアスな展開です。当時の子供向け漫画で、キャラクターがどんどん死ぬ、こういう作品を描く手塚先生は凄いなぁと子供心に思いましたね。手塚先生は戦争の残酷さを実際に知っている人でしたから、“子供にはこういうのを与えておこう”ではなく、たとえ残酷な描写があっても、それを子供たちに伝えることを躊躇しない真摯な創作姿勢でした。そのために世の大人たちから不買運動などの突き上げを喰らいましたが、それに負けず漫画を描き続けましたね。手塚先生のそういった影響をもろに受けていると思います。ぼくも裸だらけのエッチな『ハレンチ学園』を連載していた頃、PTAから散々な目に遭いましたけど…。
橘髙 石川県の被災で「永井豪記念館」が全焼された時、グレートマジンガーの立像が焼失を免れたことで、マジンガーが石川県の復興のシンボルのようだと言われています。グレートマジンガーも内包する『マジンガーZ』に関する思い入れというか、作品を描かれていた頃の思い出などを聞かせていただけますか。
永井 子供時代に『鉄腕アトム』や『鉄人28号』に親しんだ身としては、本当に寂しい限りでしたが、ちょうどロボット物が廃れていた時代だったんですよね。ロボット物って少年漫画の王道じゃないかと思っていましたので、何かできないかなと考えていたんです。しかしアトムの2番煎じになっちゃいけないなと思うと、なかなかよいアイデアが出なかったんです。その時、操縦者が自動車みたいなもので乗り込んでロボットを操縦したら面白いんじゃないかと考え付いたのが『マジンガーZ』です。人間が乗り込んで操縦するロボットなんて、いまではもう世間に溢れかえっていますが、その元祖…というかスタート作品になれたことは大変嬉しいですね。
橘髙 永井先生の大ヒット作でもある『マジンガーZ』は、アニメと漫画でそれぞれの魅力がありますよね。当時はほぼ同時進行でしたが、どのようにバランスを取っていたのでしょうか?
永井 最初のスタートラインで東映アニメーションに、こういうものをやりますと設定資料みたいなものを全部つくって渡したんです。アニメと漫画では制作過程が違いますから、テレビ放送と漫画連載を同時進行で進めていこうと話し合いました。マジンガーの前の『デビルマン』は、漫画がどんどんテレビアニメの内容とかけ離れて行っちゃったものだから(笑)、マジンガーも進めていくうちにそうなるかも知れないけど、そこは漫画とアニメをお互い好きにやって行きましょうと。『デビルマン』は漫画とアニメの展開が大きく違っていたので、マジンガーはなるべくそういうズレが生じないよう、設定書をつくって渡したんですね。
永井 最初にロボットのスケッチを1枚、東映アニメーションのプロデューサーに見せたら固まってしまって「これ、社に持って帰っていいですか?」って言われた後、このロボットに乗っている主人公はどんな少年なのか、ヒロインはいるのかとか、いろいろな質問が来たものですから、こりゃ名前も含めて細かく設定をつくりこまなきゃなぁと思ったんです。
橘髙 『マジンガーZ』は、私ももちろん拝見しています。先生が新しい物に取り組まれる時、いろいろな所から受けた影響を採り入れて、ご自分の描きたいように描くという創作姿勢に、共感を得ています。作品から力強さを感じるというか…。
永井 ありがとうございます。まず自分が楽しまなけりゃ、他の人も楽しめないだろうと思うんですよね。そういう姿勢でいつも自分で楽しみながら漫画を描いてます。
橘髙 今回コラボTシャツの絵柄に使わせていただいた、「永井豪記念館」オープンの際に描かれた先生のキャラクターの集合絵ですけど、キューティーハニー、デビルマン、マジンガーZと、アニメで有名なキャラが割と大きめに描かれていますよね。
永井 ええ、そうですね。やっぱりそれは、ぼくの作品はアニメと漫画と両方でできたもので知っている人が多いかなと…。漫画だけのキャラよりも映像化されて海外の人も知っているぼくの作品の中でも認知度の高いキャラを大きく描こうと、そういう最大公約数的な認知度による考えです。もちろん、映像化されていない漫画だけの作品でも好きなキャラクターは多いんですけども、メジャーさで考えるとアニメにもなった作品を選ばざるを得ないですね。
橘髙 もうちょっと大きく描きたかったな…みたいなキャラっていますか?
永井 いやぁ~、それはもう…! ぼくの漫画はタイトル数からいくと300から400作ぐらいあるので、アニメ化とか気にしないで、どれでもメインにしていいよと言われたら何でも描きますがね(笑)。まぁ、誰でも知っている、幅広い年齢層に知られているという基準で考えると、ハニー、デビルマン、マジンガーということになりますよね。
永井 (Tシャツを拡げながら)うーん…こうやって見るとアニメ、実写など映像化されてない作品を探す方が難しいんじゃないかな? 『キッカイくん』と『オモライくん』はアニメになっていませんけど、『けっこう仮面』は実写のVシネマとアニメになりましたし、『デビルマンレディー』もアニメ化されました。『手天童子』はどうだったかな? …ああ、アニメになりました! ビデオアニメに。『バイオレンスジャック』もビデオアニメ化されました。『ハレンチ学園』は、テレビドラマと映画を合わせて5作ぐらい実写化されましたね。テレビドラマ版は放送当時、東京12チャンネルで高視聴率の記録をつくって、10年間ぐらい破られなかったとか(笑)。
橘髙 おお~!! 近年のデビルマンのアニメ化で、Netflix配信作品の『DEVILMAN crybaby』には、BEAMSの店舗が登場したり、〈TOKYO CULTUART by BEAMS〉とのコラボレーションアイテムを制作させていただきました。
永井 『デビルマン』は、『オモライくん』の直後に描き始めた漫画ですね。『オモライくん』はぼくも好きな作品なんだけど、垢(あか)から下水からウンコまで汚いネタを使い続けて、アイデアに段々限界が出て来たんですよ。どうすればこれ以上、汚いネタが出るかなーって苦しくなっちゃって。
一同 (笑)
永井 そこに『デビルマン』のアニメ放送に合わせて漫画連載を始めることになりました。そうなると抱えている複数の連載の中から、どれか1本を止めなければならない。それで『少年マガジン』の『オモライくん』を終わらせて、入れ替わりに『デビルマン』を描くことになったんです。
橘髙 『デビルマン』は何度もアニメが制作されていますが、ハニーも繰り返し映像化されていますね。私も『キューティーハニー』、大好きです。
永井 ハニーは男の子向けに描いた漫画だったんですけど、女性からも支持されて、それは嬉しかったな。変身の時にオールヌードになっちゃうので、女性が見たら怒るんじゃないかと恐る恐るだったんですが、そんなこともなく。一瞬だったら裸を見せてもいいわ、と思っている女性が多かったのかな。
一同 (笑)
永井 ハニーは歳を取らない、まさに究極の永遠不滅の女性像というキャラクターなんです。
橘髙 少年誌で女性を主人公にすることで、当時反対されたというお話を聞いたことがありますが。
永井 はいはい。ハニーの前身は『あばしり一家』の菊の助なんです。そもそも『週刊少年チャンピオン』の創刊にあわせて新連載が欲しいということで、いまの仕事のペースでは量的に無理だからと断ったのに、毎日毎日スタジオに押しかけてこられたので、根負けして連載の話を請けることにしたんです。そういう経過で『あばしり一家』を描いたら、編集長から猛反対されたんです。「女の子の主人公はダメですよー!」って。
一同 (笑)
永井 なんだよ、あんなに頼んできたのに(笑)。「少年誌で女の子の主人公は、過去に手塚先生を始め、いろいろな先生が挑戦して失敗してるんです。だから止めて下さい」っていう調子でしたけどね、でもぼくは手塚先生じゃないし、永井豪だし…って。
橘髙 ハハハハ。その頃は、複数の雑誌で連載されていたじゃないですか。ジャンルが違う漫画を描き分けるのは大変じゃありませんでしたか?
永井 それはもう、キャラクターを描くとスッとそのキャラの世界に入って行っちゃうので、テレビのチャンネルを切り替えるみたいに、どんどん別の世界に頭を切り替えて、並行連載で苦労したことはないですね。1日に3本の原稿を並べて、あっちをやったり、こっちをやったり。でも週刊連載を5本抱えていたときは流石にキツかった。1日に1本あげられればいいやと思いながら描いてました。だけどその合間にも、予告用のカットを描いて下さいとかインタビューだとか舞い込んでくるので、1日1本という自分の予定も狂い始めて、2日に1本に変えてもらったりとかね。結局、週刊連載4本に減らしてもらいました。
橘髙 先生が最近、ご覧になった映画で気になった作品はありますか?
永井 今年に入ってからのものでいいなら、『デューン 砂の惑星 PART2』、『マッドマックス:フュリオサ』、それから『猿の惑星/キングダム』、あとは…『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』かな。
橘髙 えーっ!? 新作映画、たくさん観られていますね! 連載を持ってお忙しそうなのに凄いです。
永井 いや、週刊連載を数本かけもちだった時代を思えば、いまはもう楽勝なので(笑)。毎週金曜日になると、日曜のチケットを予約してシネコンで観ていますよ。基本的にはSFとかファンタジーが好きですけれど、それに限らず気になったらどんなジャンルの映画でも観ます。マーベルヒーロー映画は最近ちょっとハズレも多くて元気がないね。CGをふんだんに使って、現実にない映像をつくり出すことは凄いと思うんだけど。
橘髙 漫画では注目されている作品や作家さんはいらっしゃいますか?
永井 10年ぐらい前までは漫画賞の審査員をやっていたので、多くの漫画を読んでいましたが、そういう審査員の仕事は辞めたので、あんまり(漫画を)読んでいないです。ここ最近で読んだのは『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんが描いた『プリニウス』です。全巻読みましたが、イタリアのローマ帝国のお話で面白かったですね。とり・みきさんとの共作になっているので、ヤマザキさんに会った時にどうやって描いてるのか質問したんですよ。分業の方法とかね。あとは山口つばささんの『ブルーピリオド』は、絵のことがテーマになっているので興味が湧いて読みました。芸大を受験するとどうなるのか、とかね。実写映画にもなったので、観てみようかなと思っています。
橘髙 先生の漫画も実写映画やテレビアニメなど、いろいろな形で映像化されていますが、どれもスタッフを信じてお任せしている印象があります。そうやっていろいろな媒体を通じて永井先生の作品が、多くの人に触れるのは素晴らしいなと思うんです。
永井 そうですね、実写もアニメもつくることが決まれば、もうスタッフにすべてお任せしています。ぼくは一観客の立場で完成を楽しみに待っているだけなので、好きにやってくれればいいよってね。テレビアニメにしても原作の基本設定はつくっているにせよ、放送途中でここをこうしてくれとか、こう変えてくれとか、そういう注文を付けたりしません。一切口出しはしない主義なんです。どうぞ自由にやって下さいというと、制作スタッフから「そう言われても困るのですが…」って返されますけど(笑)。
永井 いま放送中のアニメ『グレンダイザーU』(※2024年8月現在:2024年7月よりテレビ東京ほかにて放送中)は、監督さんとシリーズ構成の人がとてもしっかりしているので、安心してお任せしています。第1回目の試写の時に、メカデザイン担当の方とお会いして、「マジンガーZの顔は『少年ジャンプ』の漫画版に合わせてデザインしています」と言われました。そう言われると、やっぱり漫画を描いた自分としては嬉しいですよね。鼻先が出ているか、出ていないかで、アニメと漫画ではマジンガーの顔立ちが違うんですけど。
橘髙 お話を伺っていて思いましたが、永井先生がずっと新しい創作を続けておられるのも、常に新しい刺激を受けているからなんですね。
永井 連載は連載で仕事を進めながら、こんなことをやりたいなと思っても時間的に無理かなぁというのもあるし…でも、その時々に考えたアイデアは貯めておこうと思っているんですよ。常々新しい物に触れて、「あっ、こういうやり方もあるんだな」と刺激や影響を受けて、自分が触れた映画や漫画からもインスパイアされて漫画のアイデアに繋がりますしね。映画館に出かけるのは週に1回だけど、山のようにある動画配信サイトで毎日何かしらの作品は観ています。
橘髙 今日はお忙しい中、どうもありがとうございます。石川県の早期復興と、永井先生の今後のご活躍をお祈りしております。
〈マンガート ビームス〉と漫画家・永井豪との初のコラボレーションが実現し、永井豪記念館のビジュアルを使用したグラフィックを落とし込んだTシャツを期間限定で受注販売します。
また本アイテムの売上より、制作費及び諸経費を除く収益を、能登半島地震復興支援として災害支援団体『公益社団法人シビックフォース』へ寄付します。
– 受注期間
2024年8月9日(金)11:00〜2024年8月25日(日)23:59
※9月下旬にお届け予定
※数量限定受注となるため、上限に達した場合受注終了
– 販売場所
ビームス公式オンラインショップ
ビームス ジャパン(新宿)4F TOKYO CULTUART by BEAMS
※詳細は、こちらよりご確認ください。
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。