カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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刺繍でカルチャーをサポートするArena Embroideryの軌跡。

ニューヨーク・ブルックリンに拠点を置く刺繍スタジオ〈Arena Embroidery(アリーナ エンブロイダリー)〉が手がけているのは、〈Supreme(シュプリーム)〉やNBAなど、誰もが知る名だたる顔ぶれ。刺繍でファッションシーンを世界的に支える影の立役者が、初めて製作したオリジナルプロダクトを引っさげ、「ビームスT 原宿」でポップアップショップを開催しています。〈Arena Embroidery〉は、一体何者なのか、どういった経緯で世界的ブランドの刺繍を施すようになったのか。主宰するロッコ・アリーナに直接話を訊き、その全貌を探ります。

profile

ロッコ・アリーナ

アメリカ・ペンシルベニア州・フィラデルフィア出身。2018年にニューヨーク・ブルックリンに刺繍スタジオ〈Arena Embroidery〉を設立し、さまざまなブランドやアーティストのグッズなどを手がける。刺繍アーティストとして活動していた経験を活かし、今年から〈Arena Embroidery〉のオリジナルプロダクトを展開。

最前線を刺繍でバックアップ。

まず、〈Arena Embroidery〉を設立した経緯を教えてほしいのですが、そもそも刺繍を始めたきっかけは?

ロッコ もともとミュージックビデオを制作したくて、ニューヨーク大学で映像を学んでいたんですよ。卒業してからロサンゼルスに引っ越し、HIPHOPのミュージックビデオを作っていました。でも、〈NIKE SPORTSWEAR(ナイキ スポーツウェア)〉から、オーダーメイドのウェアの製作に誘われ、そっちの道へ進むことに。そこでアパレルの技術を習得すると同時に、刺繍も始めたんですよね。当時は、刺繍アーティストとして活動していて、2018年にニューヨークへ戻ってから〈Arena Embroidery〉をスタートしました。

現在〈Arena Embroidery〉は、いろんなブランドの刺繍を手がけていますよね。

ロッコ 〈Supreme〉は昔からの付き合いだし、〈NIKE SPORTSWEAR〉からの依頼で忙しくさせてもらっていて、音楽業界でもラッパーのDrakeのアイテムも製作しているかな。ただ、〈Arena Embroidery〉の名前は出していなくて、あくまでOEMとしてやっています。

そのなかで、特に印象に残っている仕事は?

ロッコ 一番思い出深いのはNBAのプロジェクト。地元のチーム『フィラデルフィア・セブンティシクサーズ』のためにデザインしたキャップをつくらせてもらったし、『トロント・ラプターズ』が初優勝を飾った際のチャンピオンジャケットをつくれたのも本当に嬉しかった。

そういった繋がりは、どうやってできたのでしょうか。

ロッコ ロサンゼルスのころから含めると、刺繍のキャリアは13年。現在のコネクションができ上がった一番の理由として考えているのは、単純にまじめに働いていたから。手がけたアイテムに〈Arena Embroidery〉の名前が出なくても、すべてコラボレーションと認識して扱い、細部まで気を配って、自分たちのクリエイティビティを注ぎきるつもりで作業しています。それは、クライアントに価値があるだけじゃなく、ぼくらにとって刺激的でやりがいがあるし、利益以上に得られるものがあるんです。

現在使っている刺繍機は、〈LQQK STUDIO(ルックスタジオ)〉のアレックス・ドンデロから譲り受けたそうですね。アレックス・ドンデロとは、どんな関係なんですか?

ロッコ 一緒に育った幼馴染。ぼくは2016年にアレックスから譲ってもらったけど、アレックスはジャック・グリアー(アーティスト・〈IGGY NYC(イギーNYC)〉デザイナー)から譲り受けて、ジャック・グリアーはニューヨークの〈NIKE(ナイキ)〉からもらったそうで。当初アレックスは〈LQQK STUDIO〉で刺繍もやろうとしていたみたいだけど、結局やらないことになって、ぼくの手元にきたわけです。

初めて刺繍をしたとき、どんな感覚でしたか?

ロッコ 刺繍機に、自分が描きたいことを“教えた”って感覚。自分がイメージしているものを細かく指示して、刺繍機がつくり上げたものを実際に自分の目で確かめた、という感じでした。

どんなところが刺繍の魅力?

ロッコ ぼくの刺繍は、機械を使うし、デジタルとアナログな部分がある。その3つの手法で表現できるところが魅力かな。

〈Arena Embroidery〉は4人で運営されているそうですね。どんなメンバー?

ロッコ ほかのメンバーは、エリカとアーロンとナルの3人。エリカとアーロンは、アートのコミュニティで出会いました。コロナ禍になったけど、スタジオを閉鎖したくなかったから、ミシンを使ってマスクをつくることに。15人くらい刺繍協会からひとを雇ったんだけど、そのなかにエリカとアーロンがいた。エリカには現在はスタジオのマネージャーをやってもらっています。そしてナルは、大阪出身の日本人。スタジオに持ってきてくれたポートフォリオのグラフィックのスキルに惚れて、一緒に働くようになった。ぼくを含めた4人がメインのメンバーで、忙しいときは2〜3人に手伝ってもらっていますよ。

初めての海外ポップアップ、初めてのオリジナルプロダクト。

今年の9月、〈BEAMS T〉のディレクターとバイヤーが会いに行ったタイミングで、ニューヨークのヴィンテージショップ「procell」でポップアップショップを開催していましたね。それはどんな経緯で開催することになったんですか?

ロッコ 「procell」のブライアンとジェスのセンスは素晴らしくて、ぼくらは長年、イベントやアパレルのサンプル製作を通じて、いい関係性を築いてきました。その結果、ポップアップショップを開催させてもらうことになったんですよ。

「procell」以外に、どんな場所でポップアップショップを開催してきた?

ロッコ クライアントのためにマーケットを開催したことはあるけど、〈Arena Embroidery〉単独でポップアップショップを開催したのは「procell」だけ。だから、〈BEAMS T〉から声をかけてもらって、すごく興奮したし、光栄でした。

ビームスには、どんなイメージがありましたか?

ロッコ ビームスのシーンに対する美学や着眼点が大好き。いろんなブランドとコラボしていて、影響力が大きいイメージが強いかな。ビームスが、ぼくらのモノづくりや芸術性を認めてくれて、オリジナルプロダクトを展開するモチベーションを上げてくれたことに、とても感謝しています。

オリジナルプロダクトはどれも素敵なグラフィックです。幼少期から好きだったことや、現在のインスピレーションに繋がっているものはありますか?

ロッコ 11歳まで読み方を習っていなかったから、絵を描くことが大好きでした。飛行機の模型をつくったり、アートを制作したり、スポーツをしたり。アートとスポーツの影響が、いまに繋がっているかも。

アートは、たとえばどんな作品が好きだった?

ロッコ 「フィラデルフィア美術館」に、サイ・トゥオンブリー(画家・彫刻家)によるギリシャ神話を題材にした『Fifty Days at ILIAM』というシリーズを展示している部屋があるんだけど、その場所こそ幼少期からアートが好きなぼくをつくり上げたと言っても過言じゃない。何度も何度も訪れていますからね。

ちなみに、好きな音楽や映画は?

ロッコ Ruff RydersやClipseやOutkastなどのHIPHOPが、現在の自分のポストモダンな考え方や自由な思想の基礎になっていると思う。好きな映画は『E.T.』。今日までのすべてのインスピレーションに繋がっています。

話を戻しますが、オリジナルプロダクトのデザインは、なにからインスピレーションを受けましたか?

ロッコ デザインは、製造業の現実、ニューヨークの競争、そしてスポーツから着想を得て描きました。インスピレーションの参考として具体例を挙げるなら、ニューヨーク市の〈Tiffany & Co.(ティファニー)〉、ニューヨーク州バッファローの〈New Era®(ニューエラ®)〉。名古屋の刺繍機メーカー〈Tajima(タジマ)〉は熟練しつつも革新的で、究極のインスピレーションの源です。

コレクションのなかでも、蝶と蛾のデザインが印象的。なぜこのモチーフを選んだんですか?

ロッコ 蝶と蛾は、幼虫と成虫の2つの人生がありますよね。成虫の蝶や蛾をモチーフに選んで、〈Arena Embroidery〉は現在2段階目、と表現しました。

最後に、今後の目標を教えてください。

ロッコ もっと世界を見てみたい。チベットやメキシコ、そして日本などの伝統的なテキスタイルをリサーチしたいな。〈Arena Embroidery〉としては、ファッションの中でも外でも、オリジナルプロダクトをもっと生産したり、ユニークなアイテムを作ることにエネルギーを注いでいこうと思っています。

INFORMATION

Arena Embroidery POP UP SHOP ‘’exhibition match’’

– 期間

2024年10月25日(金)〜11月4日(月)


– 場所

BEAMS T HARAJUKU


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
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きっと、そこにまた新たなカルチャーが
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