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年々スケールアップしていく、「TOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)」。二週に渡って開催される2025年の今年、「ビームス カルチャート」はWeek1:12月11日(木)~12月14日(金)に参加します。気になる中身は、〈TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)〉をはじめとした、ビームスのアート・カルチャーを扱うレーベルのアートブックや関連商品を販売するスペシャルブースの展開に加え、アーティスト3名によるZINEの販売とその場で描かれる即興似顔絵。最後となる三人目は、イラストレーター・ペインター・デザイナーと様々な肩書きで活躍するnorahiさん。norahiさんお気に入りのZINEも合わせてご覧ください。
アーティスト
桑沢デザイン研究所卒業後、イラストレーター・ペインター・デザイナーとして国内外で活動するアーティスト。書籍や雑誌、音楽やアパレルのアートワークを中心に手がける。2024年には自身のイラストレーションを使用したアパレルブランド〈YOLK〉を立ち上げた。好きなものはホラー映画、絶叫マシン、音楽、たまご。
Instagram:@norahi
(取材前に犬の話でひとしきり盛り上がり…)なかなか犬のお話が尽きませんが(笑)、犬のZINEをつくるくらいお好きなんですね。
norahi そうですね。はじめて実家で飼ったのが犬ということもあって好きです。あとでお話ししますが、今回のZINEは犬がモチーフです。
普段から描くモチーフも犬が多いんですか?
norahi 傾向としては好きなモノや、犬や猫などの好きな動物を描いていたら、それを見て「いい」と思ってくださる方が増え、依頼されることも多くなってきました。あとは、こういうちょっと訳の分からないものも好きで、想像上のものをらくがきで描いたりしますが、基本的には自分が見たものからインスピレーションを受けることが多いかもしれません。
ビームスとは、何度もお取り組みしていただいてますね。
norahi 〈トーキョー カルチャート by ビームス〉で、今日着ているようなスウェットなどのアパレルをつくらせていただいたり、今年は韓国でシールのイベントをさせていただいたりと、色々と面白いことをさせてもらっています。
ご自身でブランド〈YOLK〉を手がけるくらいだから、元々ファッションはお好きなんですよね。
norahi そうですね。靴下が特に好きで靴下を扱う会社に入ったりして、服飾雑貨や身につけるものを考えるのがすごく好きでした。そこから派生して、イラストの仕事と「身につけること・身につける方法」の仕事を絡めてやることが増えていっています。
服をキャンバスとして絵を描くのがそもそもお好きだったんですね。
norahi ですね。絵を観るのも好きですが、絵が自分の体の上に乗るのが面白いなと。「こういうのがあったらいいのにな」というのをよく考えていたので、それが今のお仕事になっていると思います。
今日もお持ちいただいていますが、制作時はタブレットで描かれることが多いですか?
norahi その前に、まず愛用しているこのアイデア帳にボールペンなどでスケッチし、それをタブレットに取り込んで本描き(清書)するという形が多いですね。アイデア帳には、文章もスケッチも全て書き込みます。
今回の『TABF』で販売されるのは、どんなZINEか教えてください。
norahi タイトルは『AFTERLIFE DOGS』で、亡くなった犬のその後の世界を描いています。特定の誰々ちゃんというモデルはいなくて、その子たちのその後を想像して全部自分の中でデフォルメして描きました。私の脳内にいる犬という感じですね。
このページの「POTATO DOG」も?
norahi この子だけはモチーフが実際にいて、以前実家で初めて飼った犬なんです。初めての犬だったので、何をあげちゃいけないか分からず、フライドポテトをあげちゃったりしてました。早死にしたわけではないのですが、亡くなった時に「それが原因だったんじゃないか」と家族で大反省したくらい。今回「ポテトのこの子だけは入れたい」と思い入れました。
その犬とのエピソードを教えてください。
norahi 亡くなる一週間前の写真が残っています。私がワーキングホリデーに出発した直後に亡くなってしまい、イギリスで夢に出てきました。ある夢では、美術館で絵を見ていたら、向こうから走ってきて、リュックを投げてまた行っちゃったんです。リュックの中に光が入っていて、ホームシックで落ち込んでいた私を元気づけに応援してくれたという印象的な思い出です。私が多感だった時期にいてくれたこともあり、亡くなって9年経っても、こうやって形にするくらい思い入れがあります。
犬のエピソード以外に、もう一つのインスピレーション源として缶バッジを持ってきていただきました。
norahi これは学生時代に尊敬している先輩が「好きそうだから全部あげる」と言ってくれたもので、すごく大切にしています。常に机の前に置いて、考えすぎて頭がショートしそうな時に鎮めるために眺めることが多いですね。この缶バッジは、人の絵や生き物っぽいものなどがすごく自由に描かれていて、自由な発想が必要な時に、これを見返して頭を一度リセットするといった使い方をしています。今回は、缶バッチを見ながら、自由に形を変えられたら面白いのに、と思ったんです。例えば「イモになったら楽しいかな」と考えていたら、犬のポテトの話を思い出して繋がり、今回のデフォルメされた形の犬たちが生まれました。
norahiさんが楽しんでいるからなのか、「犬の死後」がテーマとはいえ、このZINEに悲壮感は全くないですね。パッケージも可愛い。
norahi 楽しく暮らしてるといいなという気持ちで描きましたね。樹木希林さんが本の中で「死ぬことに対して人間は重く考えすぎ」とおっしゃっていてすごく共感しました。私のおばあちゃんも「みんな死ぬのよ」と言っていて、死自体をあまり深く考えなくてもいいのかなと。
norahiさん自身の死生観も反映されているんですね。このZINEをつくる上でこだわったポイントも教えてください。
norahi 紙質は、ノートっぽいザラザラした質感でいきたいと思いました。スケッチしたままをリアルに見るようにしたいのと、カジュアルにまとめているのでシンプルな感じにしたいなと。また、あまり説明書きは入れないようにしました。想像してもらう方が面白いかなと思ったので。
『TABF』で行う似顔絵についても教えてください。
norahi 「似顔絵ステッカー」をやります。このステッカーについてですが、本の枠を今回のために描きました。そこへタブレット上で、枠内にお客さん自身や動物の顔、タイトルを描きこむと、架空の本の表紙をその場でステッカーとしてプリントできます。アートブックのフェアなので、本にちなんだものがいいだろうと考えました。
norahiさんは、ZINEをこれまで何冊くらいつくられているんですか?
norahi 学生時代にコピー用紙でホッチキスで止めるようなZINEを10冊くらいつくっていました。社会人になってペースが落ちましたが、トータルで20冊いかないくらいだと思います。フリーペーパーを配布している棚にゲリラ的に差し込んだり、今じゃ考えられないですね(笑)。つくるだけじゃなくて、今でもZINEは好きでよく買います。
お気に入りのZINEを3冊持ってきてもらいました。
最後に、『TABF』で楽しみにしていることを教えてください。
norahi 去年も行きましたが、人の熱気がすごくて、みんな楽しそうにしていました。『TABF』は、国籍も様々な人が集まり、とてもエキサイティングなイベントなので、いろんな人に会うのを楽しみにしています。また、このフェアをいいきっかけとして、ZINEをつくっていけたらいいなと思っています。
『TOKYO ART BOOK FAIR 2025』情報はこちら
カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。