カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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KYOTOGRAPHIEとKG+の楽しみ方。2日目

〈BEAMS CULTUART(ビームス カルチャート)〉の岡田さんから誘いを受け、行ってきました、京都まで。目的は、〈BEAMS CULTUART〉も参加した、『KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭(以下、KYOTOGRAPHIE)』および『KG+』を体験すること。1泊2日で心ゆくまで楽しんだ旅の記録。1日目のこちらに続き、2日目に巡った展示を交えながら同イベントの魅力を紹介します。

『KYOTOGRAPHIE』と『KG+』とは?

『KYOTOGRAPHIE』は、京都を舞台に毎春開催される国際的な写真祭です。2013年に始まり、世界中から写真家やアーティストが参加し、京都の歴史的建造物やモダンな空間を会場にして、10を超える展覧会が行われています。毎年テーマが決められ、2025年のテーマは「HUMANITY」。そして『KG+』は同じく2013年からスタートした、『KYOTOGRAPHIE』のサテライトイベント。これから活躍が期待される新進気鋭の写真家やキュレーターの発掘と支援を目的に、意欲ある参加者を広く募集して展覧会を開催しています。両方合わせると160以上の展示が行われ、その展示場所も膨大です。『KYOTOGRAPHIE』のアプリ上では、各展示が地図上に表示されて便利なので、ぜひダウンロードをお忘れなく!


App Store


〈BEAMS CULTUART〉の岡田森之介さん。ファッションはもちろん、音楽、お笑い、アートが好きで、休日は美術館や映画館へ足繁く通う。以前は坊主頭がトレードマークだった。ブログも見てね!

10:00 node hotel

澄毅『Les fantasies - かつて / そこに / あったもの-』

初日とは打って変わって、2日目はあいにくの雨。徒歩とタクシーを駆使して回ります。この日は、「KG+」の展示プログラムの一つ、澄毅による『Les fantasies - かつて / そこに / あったもの-』からスタート。

場所は、「node hotel」というアートとデザインを融合させたブティックホテル。“アートコレクターの住まい”をコンセプトに、宿泊そのものをアート体験とするユニークな空間です。世界中のギャラリーやアートフェアで収集されたアーティストの作品を、1階のパブリックスペースをはじめ、全25室の客室にも展示し、アート作品と暮らす生活を体験することができます。

このホテルの一階のカフェダイニング・バーで展示されていた『Les fantasies - かつて / そこに / あったもの-』の大きな特徴は、写真に施されたカラフルな刺繍。ただ写真を撮るのではなく、刺繍を加えることで、平面だった写真が物質的なアートピースとして立ち上がってきます。「作品がどうなっているのか実際に観てみたかったという」と、岡田さんも興味があった様子。

「写真だけであれば、ネット上でもある程度の情報は伝わるものですよね。でも、この展示のようにフィジカルなものは、直に観たい。しかも、細かな刺繍だから自分のペースでゆっくりと観られるカフェスペースというのはうってつけの場所だと思います」(岡田)

このカフェスペースでは、今回の作品に倣い、カラフルなチョコスプレーとゼリーを使ったアート感満載のオリジナルのお皿でスイーツを提供するなど、作品との親和性が高いのも見どころ。難点としては、カフェスペースだと和みすぎて、ついつい長居してしまうのが玉にキズです(笑)。

KG+ FOR COLLECTORS 04

・澄毅『Les fantasies - かつて / そこに / あったもの-』
📍VENUE:node hotel
住所:京都府京都市中京区蟷螂山町461
会期終了

13:00 嶋臺ギャラリー

『Sharing Visions The Heartwork of Kyoto Journal』

お昼休憩をはさみ一行は、有形文化財に指定されている「嶋臺(しまだい)ギャラリー」へ。1883年に再建された建物は、築140年以上という歴史的な建造物で、内部には土間や畳敷きの座敷があり、まさに京都の伝統的な町家建築の一つ。

ここで展示していたのは、二つ。

アソシエイテッドプログラムとして、畳の間で展示していたのが、インディペンデントな自費出版の雑誌『Kyoto Journal』から選りすぐりの写真記事を抜粋した『Sharing Visions』。この雑誌は、年3回(1回の印刷版と2回のデジタル版)発行され、国内外の寄稿陣は全員ボランティアという、商業メディアとは一線を画した制作体制で、京都・日本・アジアの多様な伝統と現代のクリエイティブな暮らしを紹介しています。

「どういう意図でどうやって撮ったかという写真の背景が語られていたのがすごくよかったです。記録用の写真のなかにも文脈が生まれるというのは、写真論特有のものだと思いますが、それを感じとれる展示でした」(岡田)。

Lee Shulman & Omar Victor Diop
『The Anonymous Project presents “Being There”』
Supported by agnès b.


もう一つは、Lee Shulman & Omar Victor Diopによる『The Anonymous Project presents “Being There”』Supported by agnès b.。展示作品は、1950〜60年代にかけて北米で撮影されたものばかりで、家族の集合写真や友達との晩酌のシーンなど、一見するとどこにでもあるありふれたイメージです。ただし、すべての写真に写っている黒人の姿は、元から写り込んでいたかのように巧妙に写真に紛れ込ませたもの。1950〜60年代というのは、人種差別問題や公民権運動真っ只中だったということからも、この写真が持つメッセージ性はあきらかでしょう。

「めちゃくちゃわかりやすいプレゼンテーションで、プロフェッショナルな作品だなと。コンセプトがしっかりしていて、写真そのものというより、写真を使った現代アートとしての強度がすごく強い展示でした」(岡田)

KYOTOGRAPHIE 6、15

・Lee Shulman & Omar Victor Diop
『The Anonymous Project presents “Being There”』
Supported by agnès b
・アソシエイテッドプログラム
『Sharing Visions The Heartwork of Kyoto Journal』
📍VENUE:嶋臺(しまだい)ギャラリー
住所:京都府京都市中京区仲保利町191
会期終了

14:00 Kurasu HQ UG

顏鵬峻『Universal Signals』

お次は、写真家・顏鵬峻と美術作家・菅実花の二人展『Unreal-Real 輪廻重生』という、地下一階で行われている展示へ。

いくつかのテーマごとに展示されていますが、顏鵬峻による『Universal Signals』は、パッと見だと宇宙や銀河を捉えたスケールの大きな写真に見えます。しかし、その実は日常のなかに宇宙を見出していくシリーズであり、星雲や惑星のように見えるそれらは、地面に広がる油膜や焦げた電気鍋の底という、驚きに満ちた写真でした。

菅実花『人形の中の幽霊』

菅実花による『人形の中の幽霊』は、リボーンドールを撮影したシリーズです。リボーンドールとは、まるで赤ちゃんのようにリアルにつくられた人形のことを指し、元々は子供を亡くした両親を癒すためにつくられた、本物そっくりの人形です。

「どちらも神秘性を感じる展示だった」と岡田さんが感想を漏らしたように、元製薬会社の地下室だったという会場の雰囲気と相まって、死に対する畏れを体験した我々としては、スマホのスクリーンなどでは味わえない、“場としての力”を改めて感じずにはいられない展示でした。

KG+ PICK UP 31

・顏鵬峻 、菅実花『Unreal-Real 輪廻重生』
📍VENUE:Kurasu HQ UG
住所:京都府京都市中京区仁王門町5
会期終了

16:00 PURPLE

岩橋優花『光の根』

一つ前の展示に“当てられたのか”(笑)、足早に次々と展示を観てきたからか、疲れの色が見えてきたので、この後は京都らしいお茶と甘味で小休止。甘いもので体力と気力を回復し、意気揚々と向かったのは、アート写真集で定評のある出版社〈赤々舎〉と〈青幻舎〉が共同で手がけるスペース「PURPLE」の展示です。

ここでは、岩橋優花『光の根』の展示が行われ、在廊していた作家本人にも話を伺えました。この作品は二つのシリーズが組み合わさったものです。一つは、プロジェクターで過去に撮影した自分にとって身近なひとたちの像を投影したものを、モノクロフィルムで再度撮影したというポートレートシリーズ。もう一つは、作者自身の家族やその土地を撮影しているシリーズ。

「『KYOTOGRAPHIE』は大物作家の作品を観られるのが魅力ですが、一方で『KG+』はこうやって作者ご本人とお話できたりと身近な関係で鑑賞できるというのがいいですよね。それにここ『PURPLE』は、ブックストアが併設されているから、話しやすい雰囲気でした。写真集もたくさんあり、何時間でもいられる場所です」(岡田)

そう、展示を観た後は本をディグる楽しさもあるのです。ちなみに岡田さんは、〈赤々舎〉がスタートした「AKAAKA BIRD」の第一弾としてリリースされた、本展示と同タイトルの『光の根』を購入。「PURPLE」店頭やオンラインでも購入可能です。

KG+ PICK UP 18

・岩橋優花『光の根』
📍VENUE:PURPLE
住所:京都府京都市中京区式阿弥町122-1 式阿弥町ビル 3階
会期:〜5月18日(日)

17:30 京都駅

JR『JR クロニクル京都 2024』
京都を離れる前に訪れたのは、京都駅の壁面を飾る、JRの大型展示。京都のひとびと505人のポートレートと京都の街をコラージュした、縦5メートル横22.55メートルの巨大写真壁画です。被写体一人ひとりの表情をつぶさに観られる楽しさを味わいながら、この大きさには圧倒されます。旅の最後を締めくくるに相応しい、パワフルな展示でした。この展示のみ、2025年10月頃まで展示が続くようです。

KYOTOGRAPHIE 8B

・JR『JR クロニクル京都 2024』
📍VENUE:京都駅ビル北側通路壁面
住所:京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町765-1 京都駅ビル 北側通路壁面
会期:〜10月13日(月・祝)

最後に、一日の工程のなかでは紹介できませんでしたが、いくつか印象に残った展示を紹介しましょう。

「Su」で開催されていた吉田亮人『The Dialogue of Two』は、とてもエモーショナルな展示でした。2017年の「KYOTOGRAPHIE」で発表した作品では、作者の祖母(88歳)と、いとこ(23歳)の2人の日常と、いとこの突然の自死によってその日常が終わりを迎えるところまでを描いたそうです。続いて、本作では、前作を一部取り込みながら、たった一人となった祖母を収めた写真が数々展示され、この二日間を通して、最大級に感情を掻き立てられる体験となりました。

インフォメーション町屋としても機能していた「八竹庵(旧川崎家住宅)」で観た、パレスチナを新しい視点で切り取った、Adam Rouhanaの展示『The Logic of Truth』も力強いものでした。スイカを美味しそうに食べる少年やサッカーに興じる子どもたちなど、日々の暮らしの美しさを捉える一方で、その裏側で続いている占領軍・入植者による暴力への抵抗というハードな現実も並列させます。鑑賞者は、メディアで流布しているパレスチナとはまたちがうイメージを感じ取ったにちがいありません。

また、Adam Rouhanaと同会場で展示されていたのは、土田ヒロミらによる『リトル・ボーイ』。もちろん1945年に広島市に投下された原子爆弾と同名で、その原子爆弾に関する展示です。

こういった社会性を宿したシリアスな展示から、クスリと笑えるようなユニークな展示まで作風の幅広さは、「KYOTOGRAPHIE」および「KG+」の魅力です。その展示数は膨大で、ここで紹介したのはあくまで一部。今年は間に合わずとも、ぜひ来年の展示では、自身の五感で体験してみてください。

さて、数々の写真展示を経て、実に満足そうな岡田さんの言葉で、今回の「KYOTOGRAPHIE」および「KG+」の旅を締めくくることにしましょう。

「ここ数年このイベントに通ってきましたが、改めて京都のうまい飯と、クオリティの高い展示と、素敵な会場を楽しむことができました。これほどのレベルで、街のいたるところまで実装した展示は東京にはありません。京都にしかないこのオリジナルのイベントを、来年もぜひ楽しみたいですね」(岡田)

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭

オフィシャルサイト

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