カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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アートが生まれるところ。Vol.4 OKI KENICHI

クリエイターたちの制作活動の拠点となるアトリエ。その空間づくりは、人によってさまざまです。徹底的なミニマリストもいれば、インスピレーションにつながるたくさんのアイテムに囲まれてこそ心地よさを感じる人もいます。そんな個性豊かなワークスペースを訪ね、つくり手のパーソナルな一面を探っていくこの企画。四回目となる今回は、数多くのアーティストが活躍する福岡から東京に居を移し、ますます制作に磨きがかかるOKI KENICHIさんのアトリエからお届けします。

profile

OKI KENICHI

アーティスト。
人物を変形させることで思考を表現した抽象画、アルファベットを独自の形に変形させた文字作品、またはその2つを掛け合わせた作品をベースに、立体作品やインスタレーション作品なども発表している。2014年にはニューヨークへ渡り、「Bushwick Open Studios」の参加アーティストに選出。その後、国内のみならず海外での活動も続けている。ちなみに、部屋のDIYや作品に使う材料の物色のため、「モノタロウ」とホームセンター「スーパービバホーム」のチェックに余念がない。
Instagram|@okiiiiiiiiii

福岡にも似た、この街の空気感。

OKIさんといえば、福岡のアーティストという印象が強かったのですが、いつ頃東京に来られたんですか?

OKI 2年半前ですね。2023年の夏くらいだったかな。

アトリエの場所選びで、東京のど真ん中ではなく、多摩川を渡ったこのエリアにされた理由はありますか?

OKI 元々、写真家の西山勲さんという先輩がこの辺りに拠点を持たれていて。仕事で東京に行くたびに泊めてもらっていたので、この街に馴染みがあったのが一つ。あと、街の人…、特に飲食店なんですけど、なんとなく福岡の人に似ているというか、柔らかくて温かい感じがするんです。安くて美味しいものも結構あるし。福岡から拠点を移すにあたって、ここならストレスがないだろうなと思って決めました。近くに大きな森林公園があって散歩もできますし、精神的に安定できる場所なんですよね。

作業するときは、このデスクで過ごす時間が一番多いという。

福岡は「安くてうまい」の代名詞ですもんね。食が恋しくなったりは?

OKI まあ、ありますね(笑)。福岡は、工夫して美味しいものをつくっている感じがするんですよ。高くて素材が良くて美味しいものは全国にあると思うんですけど、安くてうまいっていうのは、何か食材を突き詰めていった結果なのかなって気がしますね。

改めて作品について伺いたいのですが、OKIさんは、昔からアーティストを目指されていたんですか?

OKI いや、全然。自分がアーティストになれるなんて、これっぽっちも思ってなかったですよ。絵を描くことはずっと好きでしたけど、大好きな『ドラゴンボール』の模写をしていたくらいで、アートを職業にするっていうイメージは全くなかったです。僕が絵を描いていることを知っていた、親しいセレクトショップの店長に誘われるがままに展示をしてみたら、絵が売れて。それがきっかけで、アーティストで食べていくということに初めてスイッチが入りました。

OKIさんのアトリエに飾られている、グラフィティアーティスト・Futuraの作品。

それまでに、憧れていたアーティストは?

OKI そもそもアートをちゃんと知らなかったので、憧れていたアーティストとかはいなくて。でも、福岡時代に見たFuturaが「初めて生で見たプロのアーティスト」で。作品がかっこいいのはもちろんなんですけど、描いている時の「姿」そのものがとにかくかっこよくて、ずっと見ていましたね。直接絵を描いてもらったこともあるんですよ。ほら、あそこに飾っているやつなんですけど。

蛍光色へのこだわりと、道具が生み出すいいハプニング。

作品もそうですが、お部屋の中にもポップなもの、特に蛍光色が所々にありますね。やはりお好きなんですか?

OKI 僕の中で一番テンションが上がる色なんですよね。作品の90%くらいには蛍光色を使っていますし、この部屋に蛍光色が多いのも、制作の時にテンションを上げるものを近くに置いておきたいから。これはすごく大切にしていることです。

蛍光色を好きになった「原体験」はどこにあるんでしょう?

OKI 中学生の頃かな。『ミュージックステーション』を見ていたら、X JAPANのhideさんがソロで歌っていて。その時、衣装も髪の毛も、もう蛍光色バリバリだったんですよ。「なんだこの個性的な人は!」って、子どもながらに衝撃を受けて。それ以来、僕の中で蛍光色=個性の象徴というか、個性的でかっこいい人を代表する色として完全に刷り込まれたんですよね。

制作道具についても伺いたいです。よくスプレーを使われていると思うんですが、そのこだわりはありますか?

OKI いまは、『MONTANA CANS』というスプレーを使っています。日本で手に入るスプレー缶はおそらく全部試したんですけど、これが一番線の出方が自分好みというか、しっかり“締まって”くれる。飛び散らずに、輪郭のある線が引けるのが強みですね。

制作の中で、一番楽しいのはどんな瞬間ですか?

OKI 最近は、スプレーのコントロールしきれない部分が楽しいですね。スプレーって缶なので、ノズルの詰まり具合とかガスの残量で、その日によって出方が変わっちゃう。それをコントロールしようとはするんだけど、しきれない部分があった時に、そのちょっとしたズレがたまんなくかっこよかったりする。そこで一人でニヤニヤしています。伝わりづらいので、あくまで主観でしかないんですけどね(笑)。

OKIさんの作品には「花」のモチーフが多いですよね。

OKI これは、エレファントカシマシの『Easy Go』という曲からの影響で。「剛者(つわもの)どもの夢のあと 21世紀のこの荒野に 愛と喜びの花を咲かせましょう」という歌詞があって、すごく共感するんです。これは僕の勝手な解釈なんですけど、「21世紀のこの荒野」っていうのは、音楽でいえばコード進行は出尽くしたと言われたり、先人たちがいろんなことをやり尽くした後の今という時代のことなのかなと。だからまったく新しいものを作るのは難しいけど、せめて愛と喜びの花を届けたい、というメッセージだと思っています。そこから花のシリーズを描くようになりました。

上手いより痺れるかが重要。

他のアーティストの作風や、現代の美術界の流れなどは意識されますか?

OKI 正直に言うと、あまり外の世界は見ていないですね。変な意味ではなくて、僕の興味の対象が、どこまでも「自分の作品」の中にしかないんです。自分自身が作品を見て「これ、やばいな。かっこいいな」って心から思えるかどうか、自分自身に刺激を与え続けられる表現ができているかどうかが、僕にとっては一番重要なんです。そういう意味では、このアトリエは「この道具をこんな使い方をして描いてみたらどうなるんだろう」と実験したり、ひたすら自分との対話を誰にも邪魔されずに深めていくための場所ですね。

スプレーは乾くまでに時間がかかり、すぐに収納できない。そのため作品完成後は、釘を打ったベニヤ板に引っ掛け、完全に乾くのを待つ。

そういう意味では、技巧的に上手い下手というのはあまり関係ないですか?

OKI そうですね。感覚的な話ですが、人には同じ線に見えても、自分が描いたその線を見て自分が痺れるかどうか、というのは重要です。

今後の展望として、挑戦したいことはありますか?

OKI ずっと言い続けているのは、パブリックアートですね。自分の中では一番大きな目標です。 でも、その前に今はもっと、さっき言っていたような実験をする時間を増やしたいなと思っていて。実は今年、体調を崩したタイミングがあったんですけど、それがきっかけで実験することの大切さを再認識したんです。それまでは、ありがたいことに忙しくさせてもらっていた反面、試行錯誤する時間がどんどんなくなっていて…。でも、もう一度実験から始めようと思い直して、今は自分の絵をより良くするために、色々と試している状態です。そうやって、いつか来るパブリックアートの機会に備えたいな、と。

どうして「パブリックアート」という形を目指されているんでしょう?

OKI 僕の絵は、明るいテーマで明るい配色を使っているからですね。やっぱり、多くの人が行き交う街の中で、作品を見た人の気持ちがふっと明るくなるといいなって。いつか、大きな場所で形にしてみたいですね。

今、「BEAMS CULTUART TAKANAWA」で展示も開催されていますよね。

OKI はい、タイトルは『VERY MERRY ARCH』。2025年と2026年をつなぐタイミングで、パッと心が惹きつけられるような、そんなアーチを描くイメージで準備しました。東京に来てから「絵が柔らかくなった」って周りからよく言われるんですけど、その今の僕の空気感が一番出ている展示になっていると思います。自分の新しい挑戦も取り入れているので、ぜひ実物を見てほしいですね。

OKI KENICHI 個展『VERY MERRY ARCH』

会期

2025年12月12日(金)〜2026年1月12日(月・祝)


時間

11:00〜20:00


場所

ビームス カルチャート 高輪(ニュウマン高輪 North4F)


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
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きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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