カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
気づいたらいつもそこにあった。
世界各地で生まれる新たな息吹を、
BEAMS的な視点で捉えて、育みたい。
きっと、そこにまた新たなカルチャーが
生まれるから。

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アートが生まれるところ。Vol.7 西村友輝

クリエイターたちの制作活動の拠点となるアトリエ。その空間づくりは、個性豊かで千差万別。この企画では、作品が生まれるワークスペースを訪ね、つくり手のパーソナルな一面を探っていきます。今回は、アルミホイルで包んだ物体を油絵具のような重厚さすら感じさせる筆致で描き出す西村友輝さん。そもそも絵を描き始めたきっかけから、あの独特な作風がどうやって生まれたのかまで、たっぷりと話を聞いてきました。

profile

西村友輝

頭の中に立ち上がるイメージを、アルミホイルが包んだモチーフとして再構成し、それを起点に主にペインティングを制作。現在、東京を拠点に活動中。

Instagram

アルミホイルで包むまで。

こういったインタビューを受ける機会はあまりないですか?

西村 実は人生で初めてです(笑)。

であれば、さかのぼってアートに目覚めたきっかけから聞かせてください。

西村 親が言うには、小さい頃から絵は好きだったみたいです。高校は美術・音楽・書道の専攻がそれぞれ集まった特殊なクラスがある学校に進学して。そのまま美術系の大学の日本画専攻に進みました。

西村さんが暮らすアパートの一室に設けられた、作品制作のためのアトリエ。

大学時代はどんな学生でしたか?

西村 かなり不真面目でしたね(笑)。専攻は日本画だったんですけど、絵はほとんど描いていなくて。在学中はずっとバンドと、図書館で映画を観る生活をしていました。卒業してからもフリーターをしながらバンドを続けていたんですけど、だんだん生活というより心のほうが立ち行かなくなってきて。なんとなく絵を描き始めたのが、20代後半の頃でした。

絵を再び描き始めたきっかけは?

西村 当時働いていた飲食店でポップアップイベントをするときに、個人のInstagramで告知みたいなことをやっていて。そのポップに手描きでイラストを添えたら反応が良くて、「あ、自分は絵が描けるんだったな」って思い出したんです。それで、紙とペンさえあれば描けるものから始めました。初めての個展もその飲食店で開催しまして、今の自分があるのは、その時の経験があってのことだと感じています。

西村さんの趣味嗜好が垣間見えるフィギュアや本、ゲーム機などがアトリエのあちこちに。

そこから今の作風まで、どういう道のりだったんですか?

西村 リゾートバイトで沖縄に行ったときに、浸食された岩の断面にすごく惹かれて、岩肌をとにかく描きたくなったんです。でもネットで調べると、有名な崖とか知られた石のある渓流とかってスポット化されていて、既視感のある場所なんですよね。それは描きたくなくて。それでオリジナルの断面が欲しくなって、佐賀県にある実家の庭でセメントの立方体をハンマーで割って、その断面を描いていた時期がありました。

対象物に自分で手を加えるのがおもしろいですね。

西村 その後、名古屋にまた戻ったんですが、スペースの問題でハンマーで石を割ることができなくなって。それで、モチーフに手を加えることでオリジナルなものを作り出す方向にシフトしていったんです。岩にスライムをくっつけて、まるで岩から生えているみたいに描いたり。コロナ禍のステイホーム期間は、岩を拾いに家を出るのすらイヤだった時期があって、タッパーに着色した寒天を大量に作って、それをカッターで削り出して透明な“岩”を作っていました。

そこからどうやって“アルミホイルで包む”に辿り着いたんですか?

西村 もともと好きだったフィギュアを描いたりもしていたんですけど、そのまま描くだけでは満たされない感覚があって。頭の中にあったイメージを再現しようとした時に、絵の具のパレット代わりに使っていたアルミホイルで、被写体を包んでみたんです。それを描いてみたら、これは描く価値があるものかもしれないと思って、そこから今の作風になりました。

何を包んでいるのかもすごく重要ですよね。

西村 「ビームス カルチャート 高輪」さんで展示中の作品は、好きなもの部門と憧れ部門がなんとなく混在しています。スケートボードのトラックやエアフォース1とか、スケーターカルチャーは完全に憧れですね。映画の『mid90s ミッドナインティーズ』のように、遠くから見てた感じです。好きなもの部門は、ミニ四駆、タートルズ、ゲームとか。

取材時にアトリエの壁にかけられていたのは、「ビームス カルチャート 高輪」で開催中の個展『Force is Mine』の展示作品。

岩、スライム、寒天の“岩”、そしてアルミホイル。なぜ西村さんは、もともとあるモノに手を加えたいと思うのでしょうか?

西村 僕も含めて、見る人がそれが何なのかを理解するまでに時間が生まれることに、すごく興味があるんだと思います。いまの時代、日常の中のあらゆる物事をすぐに理解しようとするプロセスが無限に続いている気がしていて。そこにずっと危機感というか、怖さと興味を同時に感じているんです。

それは、わかりやすさが優先される今の世の中への違和感、というようなことでしょうか。

西村 そうだと思います。わかりやすいラベルやイメージが先にきて、それで理解した気になってしまう。それは違うんじゃないかって。物事をこれはこういうものだと決めることの危うさを、ずっと感じてるんです。

たしかに西村さんの作品はアルミを介すことで、なにが包まれているのかつい気になって見入ってしまいます。

西村 たとえば、相手への感謝の気持ちと、その人とケンカして傷ついた悲しさが同時にあってもおかしくない。そういう、ちょっと気持ちの悪い整理の仕方や、宙ぶらりんの状態を許容する姿勢があってもいいんじゃないかと思うんです。

描く日々はシーシュポスの神話に似たり。

西村さんの絵は、スーパーリアリズムのように見えます。

西村 いえいえ。スーパーリアリズムの世界にはレジェンドがいますからね。僕のは、実際に近くで見てもらうと筆致はかなりラフです。薄い絵の具を塗り重ねてグラデーションを作り、筆跡を消していく、というのが本来のスーパーリアリズムの技法なんですけど、僕はそれを全くやっていません。筆跡は残したまま、少し距離を置くとアルミの質感に見えるように描いています。

どんな道具を使っているんですか?

西村 細かく描き込みたいアルミの部分は、細い線を描ける〈ARTETJE(アルテージュ)〉というメーカーの筆。背景は小学校とかでも使うような安いナイロン筆で描くという風に使い分けてます。水を多めにして、鉛筆で線を重ねていくように描いていくんです。日本画の受験対策で慣れ親しんだ、鉛筆デッサンの描き方に近いかもしれません。

西村さんの制作に欠かせない〈ARTETJE〉の筆。細やかな線を描ける点が愛用の理由だが、酷使によって筆先が割れてしまうため、頻繁な買い替えが悩みの種なのだとか。

絵の具は、専攻されていた日本画で使うものとは違うんですね。

西村 アクリル絵の具です。乾くと耐水になるので、塗り重ねができるんです。水があれば描けるので、すごく手軽な素材ですね。

アルミホイルにもこだわりがありますか?

西村 包む対象によって厚みを使い分けています。トゲトゲしていたり複雑な形のものは、厚手じゃないと破れちゃうんです。実は以前、『家主』っていうバンドのジャケットに石の絵を描いたことがあって。

西村さんが手がけた、『家主』の3rdアルバム『石のような自由』のジャケットアートワーク。

そのライブの打ち上げで「今は石じゃなくてアルミを描いてるんですよ」と話したら、スタッフの方が「うちアルミの会社なんですよ」って。後日、厚みの違うアルミホイルのサンプルを箱でたくさん送ってくれました(笑)。

運命的な出会いですね。ちなみに、名古屋から拠点を東京に移した理由は?

西村 やっぱり、絵を発表する機会と場所を増やすためですね。

このアトリエがある場所は、東京なのにすごく落ち着いているエリアですね。なにが決め手でしたか?

西村 内見に行けなかったので、候補の物件をGoogleマップの航空写真でひたすら見て、方角や周りの環境を想像しながら決めました。南向きで、近くに畑があって、日当たりが良さそうだったので。高校・大学からお世話になっている先輩がこの辺りに住んでいたのも、心強かったですね。

(部屋の中を見回して)あそこに貼ってある「STONE of SISYPHUS」とは?

西村 シーシュポスの神話って知っていますか? 僕も詳しくは覚えてないんですが、山の上に石を運んでは、また転がり落ちて運んで……という、それをずっと繰り返す話なんです。生産性のなさの象徴みたいに使われる言葉なんですけど、いや、これこそ自分がやるべきことだろうと。石を持ち上げていったらまた下に……というのを僕も繰り返す日々だなと思っているので、ポジティブな言葉として捉えています。

最後に、個展に足を運ぶ人へメッセージをお願いします。

西村 来てくれる時点で、もう嬉しいです。SNSで知ってくれている人の中には、作品がキャンバスに描かれた平面だと気づいていない方も意外といて。写真や立体物だと思われていることもあるので、実際に会場で筆の跡や、キャンバスという“物”としてそこに存在している姿を見てもらえたら、それだけでもう十分嬉しいです。

Force is Mine

会期

2026年7月10日(金)~7月20日(月・祝)


会場

ビームス カルチャート 高輪(ニュウマン高輪 North4F)


時間

11:00~20:00


カルチャーは現象。誰かと何かが出合って、
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きっと、そこにまた新たなカルチャーが
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