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ビームスが思う理想の男性像

"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。

今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。

本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。

ダッフルコートの深み

a fashion odyssey | 鶴田啓の視点

ダッフルコートの深み

 

このコラムの連載が始まって、早3か月。今回が10回目の「a fashion odyssey」である。
が、過去9回にわたって「洋服の話をロクにしていない」ことに気付いてしまった。いや、自分の中ではずーーーーっと洋服の話をしていると(むしろ洋服の話しかしていないと)思っているのだが、テーマが音楽や食べ物や写真や映画だったりして「洋服そのものの説明」は、確かにしていない。「洋服の話をしなさい」と誰かに怒られたワケではないのだけれど、たまには洋服そのものの話でもしてみようかと思う。お題は「ダッフルコート」。

北欧に住む漁師の仕事着だったダッフルコートが、のちに英国海軍の防寒着として採用された云々、というルーツ物語はさておき。ダッフルコートと言えばジャン=ピエール・レオ、ジャック・ニコルソン、アート・ガーファンクル、小沢健二、あたりを個人的には思い出してしまう。なんだか「男っぽくてワイルドな体育会系」と「知的で優しそうな文系」のイメージが入り乱れている感じがする。それもそのはず、ダッフルコートには二面性があるのだから。

二面性と言うと大げさな感じがするが、一括りに「ダッフルコート」と呼ばれているものには大きく分けると二つのタイプがある。一つは「海軍仕様のゴツいタイプ」、二つ目は1970~80年代に街向けのアレンジとして生まれた「上品なお坊ちゃんタイプ」。前者はGLOVERALL(グローバーオール)の「モンティ」に代表される「麻紐で取り付けられた3つの木製トグル、ハードな圧縮をかけたガチガチに硬い素材」の海軍仕様。そして後者は「革紐で取り付けられたホーントグル、肉厚だけど程よく軽いダブルフェイス構造の生地、フラップ付きのパッチポケット」が特徴で、これはMONTGOMRY(モンゴメリー)社の「ウインザー」というシティ向けモデルが雛形になっているようだ。そして「ウインザー」の系譜にある文系タイプが、いわゆるフレンチアイビーの文脈で語られるダッフルコートである。「モンティ」のミリタリー的な男っぽさよりも、生地感が柔らかくカラーバリエーションも豊富でホーントグルの高級感も相まって、1990年代にはHERMÈSやOLD ENGLANDなど、ハイソなフランスブランドがこぞって英国製のダッフルコートをリリースしていた。

同じころ(20~25年ほど前)にInternational Gallery BEAMSのオリジナルで英国製のダッフルコートを取り扱っていた。スタッフ間では「UKダッフル」と呼ばれており、手頃なプライスと本格的な作りでお客様にも人気を博していた。実はこのコート、TIBBETT(チベット)というアウターメーカーで生産された英国製のオリジナルだった。TIBBETT社は英国海軍にダッフルコートを供給していたIDEAL CLOTHING社を買収した経緯を持ち、つまりTIBBETTのダッフルコートこそミリタリーダッフルの後継なのだが、更にTIBBETTが誕生100周年を記念して社名変更したブランドが前述のMONTGOMRYである。

しかし当時BEAMSで展開していたTIBBETT製「UKダッフル」はミリタリーで男っぽい「モンティ」型ではなく、文系路線の「ウインザー」型だった。MOORBROOK社のヘリンボーン生地、革紐で取り付けられた水牛のホーントグル、フードと一体型のチンストラップ。つまり、海軍ダッフルの系譜にあるTIBBETT社ですらも文系ダッフルを作るくらい、1990年代のファッションは今でいう「ヘリテージ感」とは無縁の時代だった。当時のオザケンこと小沢健二の世界観も勿論、文系ダッフル。ガチガチに固い圧縮ウールとバサバサの麻紐、木製のトグルでは原宿あたり風を切って歩けないのである。原宿といえば僕が高校生の頃、鮮やかなHERMÈSオレンジ色のダッフルコートを着ている藤原ヒロシを某・メンズ雑誌の連載ページで見たときは、かなり驚かされた。当時は学生が着るイメージだったダッフルコートもメゾンブランドにかかればここまで洒落て見えるのか!そして、HERMÈSのコートをRED WINGやLevi’sで平然と着崩してしまうこの人いったいナニモノ?と、熊本の片田舎に住む高校生は思った。その頃、僕はへちま襟、麻紐&木製トグルのショート丈ダッフルを着ていた。それも精いっぱいの小遣いを貯めて3万円で買ったものだった。原宿も明治通りも文系ダッフルも、遥か遠かった。

文系ダッフル真っ盛りだった1990年代後半、BEAMSのドレス部門で取り扱っていた英国製ダッフルコートと言えば、前述の「UKダッフル」と、ご存知INVERTERE(インバーティア)だ。INVERTEREと言えば、MOORBROOK社の傘下にある高級アウターブランドとして同社のヘリンボーン生地を使い、フランスの名だたる高級メゾンへ文系ダッフルコートを提供していた名門中の名門。15年前、International Gallery BEAMSの店頭に並んでいたのを最後にして、(MOORBROOK社の倒産に伴い)しばらくの間ご無沙汰だったが、昨年ついに「あの」MOORBROOKヘリンボーンを搭載したINVERTEREがBEAMS fの仕入れで復活した。「あの」と言うのには訳がある。肉厚で、軽く、凹凸がはっきりと出る(しかし裏には出ない)、仏・高級メゾンも愛した「あの」ヘリンボーンはMOORBROOK社の倒産と共に、どの生地メーカーでも再現不可能な幻の生地となっていたのだ。しかし、そのMOORBROOKが所有していた(世界に4台しかないという)旧式の織機を英国の古参生地メーカーJOSHUA ELLISが3台も買い上げていた。これにより、JOSHUA ELLIS社は黄金時代のMOORBROOKヘリンボーンと同じ生地を織り上げることが出来るようになる。かくして2019年、BEAMSの店頭には「あの」ヘリンボーン生地(JOSHUA ELLISネーム)を載せたINVERTEREのダッフルコートが久しぶりに並ぶことになったのである。ちなみに、2008~10年ごろから徐々に「ヘリテージ」というキーワードがファッション界のあちこちで囁かれるようになり、BAND OF OUTSIDERSのブレイクによるボタンダウンシャツの復活や、THOM BROWNEを発火点とするALDEN人気の再燃をUMIT BENANが更に後押しするなど、“アメトラ”の復権に伴いアメリカの100年企業にスポットライトが当たり始めたのもこの頃である。また、ここ5年の間にアンティークウォッチやヴィンテージミリタリーにも注目が集まり始め、結果としてガチガチの海軍ダッフルをヴィンテージディテール満載で再現したGLOVERALLの「モンティ」がヘリテージな海軍ダッフルとして人気の的になっている。GLOVERALLは第二次大戦後に払い下げ品として放出された大量の海軍ダッフルを民間に販売する会社としてスタートしているので、そもそもは自らがアウターを生産していた「メーカー」ではない。しかし、その後は生産背景を持ち、裏地がチェック柄のスクール用モデルなどを時代に合わせてリリースしていったため、今やダッフルコートブランドとしての知名度は抜群となっている。ということで、僕も久しぶりにダッフルコートを着てみた。キャメル色のINVERTEREにFOXフランネルのグレースーツ、足元は(写っていないが)黒スエードのチェルシーブーツを合わせている。赤いタートルネックは10年前に買った英国製のHARDY AMIES。スペイン製のバスクベレーとボストン型のサングラスはご愛敬、といった感じ。結果として文系でも体育会系でもない着こなしになってしまったが、これもダッフルコートならではの振り幅の広さか。

ともかく、長い歴史や時代ごとの変遷を知ればダッフルコートがなんだかロマンチックなアイテムに思えてくる。オープンテラスのカフェや銀杏並木が似合う大人のコートとして、この冬、皆様のワードローブに一着加えてみては如何だろうか。このコートの多面的な魅力に触れると、ミッドナイトブルーのタキシードの上に(あえて)ダッフルコートを羽織ってしまえるほど、その懐の深さに甘えたくなる。まるで「MR_BEAMS」が描く男性像のようにクラシックでチャーミングなコートだと思う。

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