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ビームスが思う理想の男性像

"MR_BEAMS"とは、ファッションをきちんと理解しながらも、
自分の価値観で服を選べる
"スタイルをもった人"のこと。
と同時に、決して独りよがりではなく、
周りのみんなからも「ステキですね」と思われる、
そのスタイルに"ポジティブなマインドがこもった人"のこと。

今回立ち上げたオウンドメディア#MR_BEAMSには、
私たちビームスが考える理想の大人の男性像と、
そんな理想の彼が着ているであろうステキな服、
そしてMR_BEAMSになるために必要な
洋服にまつわるポジティブな情報がギュッと詰め込まれています。

本メディアを通じて、服の魅力に触れていただいた皆様に、
ステキで明るい未来が訪れますように……。

ロストバケーション②

a fashion odyssey | 鶴田啓の視点

ロストバケーション②

 

さて、酷暑の盛り。前回から引き続き夏の靴・エスパドリーユの話を。

スペインとフランスにまたがる地方で生まれたこの靴は、たしかに海辺と夏のイメージが強く、着こなしは「開放的なリゾート地の屋外スタイル」に向いている物だと判る。実際に、映画『太陽がいっぱい』でアラン・ドロンが見せた着こなしはとても魅力的なものだったし、エスパドリーユスタイルの理想形としていつまでも僕らの心に焼き付いていることだろう。しかし、様々なブランドから街履き用エスパの提案がされている今日となっては、必ずしもマリンセーターや麻の開襟シャツに合わせなければならないわけでもない。アルマーニの白いスーツに合わせてエスパを履きこなした『マイアミバイス』のドン・ジョンソン、というほど極端な方向へ走る必要もあるまいが、今やハズしアイテムとしてのエスパドリーユもすっかり市民権を得ている。着慣れたコットンブレザーにマドラスチェックのB.Dシャツ、メッシュベルトでウエストマークしたホワイトジーンズを軽くロールアップして、足元は素足履きのスエード製エスパドリーユ…といったところだろうか。つまり、ローファーの代わりに使ってしまう感覚に近い。スリップオン・オフ出来る合理的なシューズという意味で、アメリカンスタイルとの親和性も感じられる。また、フランス軍に採用されていたレースアップエスパなども存在することから、グルカショーツやカーゴパンツなど昨今流行りのミリタリーアイテムとも普通に相性がよさそうだ。

そういえば、昨年の夏休み。緊急事態宣言が明けたとはいえ、まだまだコロナ禍で皆用心しながら過ごしていた2020年8月。家族サービスで海やプールに子供たちを連れていきたいのだが、密になってしまいそうで気が引ける。都内某所のホテルを避暑地に選んだ鶴田家一行は、予約制の室内プールを貸し切り状態で楽しむことにした。

5~6年前に購入したろうけつ染めのエスパドリーユはホテル内をウロウロするにもちょうど良く、かかとを踏みつけて履けばほとんどスリッパ状態。水陸兼用のスイムショーツにエスパを合わせてプールのフロアまで出かけて行けば、あとはシャツを脱ぐだけ。

プールサイドではもちろん履物を脱ぐのだが、泳ぎ終わった後に濡れた足で部屋まで帰るときもエスパドリーユならば何の気兼ねもいらなかった。一晩干しておけばすぐに乾くし、翌朝にはまた履いてプールまで出かけた。夕食時はレザーシューズに履き替えたが、エスパドリーユの室内履きも悪くないぞと思った瞬間だった。別に水場でなくとも、新幹線や飛行機内など靴を脱いでスリッパに履き替えたくなるような長時間移動の際にも便利そうだ。機内用のスリッパにはどうしても味気ないデザインのものが多く、かといってベルベットのルームシューズをわざわざ飛行機に持ち込むのは伊達酔狂に過ぎる。適当に履き古した布製サンダルぐらいがちょうどいいのではないか。エスパドリーユのお土産物的ルックスからは、ちょっとした旅情も感じることが出来る。

そもそも、エスパドリーユにしてもウエスタンブーツにしてもオイルドジャケットにしても言えることだが、クラシックアイテムには「本来の使い道=TPO」が確かに存在する。しかし「作り方やデザインが昔から変わらない」普遍的なものであるがゆえに、「都会で着るに値する懐の深さ」が感じられるのではないか。

コロナ禍のせいで、ハワイのビーチもベニスの運河も夏のリゾート地は遥か遠くになってしまったが、エスパドリーユが放つ「お土産物的異国ムードのノスタルジー」は都会暮らしにちょっとした華を添えてくれるような気がする。洗いざらしのシャツを無造作に袖まくりしてトロピカルウールのリラックスパンツを穿いてエスパドリーユを素足で突っかければ、夏の銀ぶらスタイルにも悪くない。ビーチサンダルよりも、よほど大人っぽさが薫る。失ったものを嘆くばかりでなく、楽しみ方は自分で増やしていくしかないのだ。

またいつか、ニースやマヨルカの海岸沿いで笑って出会えるその日まで。

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