SUSTAINABILITY

ビームスらしいサステナビリティを伝えていくために。

2024.11.19

INTERVIEWEE
  • サステナビリティ
    推進部
    金城奈美

  • サステナビリティ
    推進部
    新谷かの子

Photo : Masashi Nakata
Text : Ryoma Sato

「地球らしく 私らしく ビームスらしく」を軸に進めるサステナビリティ。

アパレル産業は、自然環境にかかる負荷が特に大きいといわれている他、労働環境や人権、多様性など、社会的な問題も多面的に抱える業界です。2024年3月に新設された「サステナビリティ推進部」は、ビームスが一企業としてこれらの課題と向き合い、サステナビリティ経営の推進を強化するために設立されました。既存の価値観やルールにとらわれず、ビームスらしく、ポジティブに。サステナビリティ推進部に所属する2人に、ビームスがめざす持続可能な世界について話してもらいました。

左から、サステナビリティ推進部の金城奈美さん、新谷かの子さん。

PROFILE

  • 金城奈美 サステナビリティ推進部
    2005年に入社。人事採用・予算管理・出店サポートなどの店舗マネジメント業務を経て、CRMを経験。後にスタッフを通じて顧客のリアル店舗とECの相互的な行き来を促進するビームス独自の役割、オムニスタイルコンサルタントの立ち上げを担った。「サステナビリティ推進部」の発足にともない、各事業部のエシカルアクションを加速させるべく奔走中。
  • 新谷かの子 サステナビリティ推進部
    2020年に入社。丸の内・六本木でウィメンズドレスの販売スタッフとして勤務した後に、経営企画部へ異動。現在は「サステナビリティ推進部」に所属。学生時代からアパレル業界におけるサステナビリティには関心があった。ビームスの「つづく服。」プロジェクトの一環である「モノを売らないお店」に携わったことも。

サステナビリティに関する情報を、一人ひとりが自分の言葉で発信できるように。サステナビリティに関する情報を、
一人ひとりが自分の言葉で発信できるように。

金城:個人的な意見ではありますが、もともとビームスにはサステナブルアクションに関心のある人が多いと思うんです。「サステナビリティ」という言葉が世の中で謳われるようになる前から、環境や社会のために行動している人がたくさんいました。
新谷:素敵ですよね。でも、各々がいいことだと感じて当たり前のように取り組んできたことがほとんどだったので、属人的な取り組みもあり、社内で十分に周知されていないものも多かったようです。
金城:そうなんですよね。そういったことを体系立てて把握・推進していける社内体制が整っていませんでした。寄付やボランティアなどの活動も、各部署や個人起点の範囲にとどまっていることも多かったです。
新谷:例えば、創業10周年を記念して作られた、ビニール製のショッピングバッグ。長く親しまれてきましたが、ビームスのサステナビリティ活動の一環で、2021年にビニールからオーガニックコットンに生地が変更され、有料化されました。このコットンバッグの売上の10%は、国際NGOのオイスカが主催する「子供の森」計画に寄付されています。そういった活動ひとつをとっても、これまでは各部署ごとの考えや指標の元、バラバラに行われていました。
金城:でもそれだと、レーベルや個人の想いや意思に依拠しすぎてしまったり、それゆえ、時に引き継ぎが曖昧になってしまったりと、課題もありました。

そういった取り組み全体を把握し、旗振り役をすることがサステナビリティ推進部の仕事の1つです。
新谷:把握のために、これまで各部署や個人で行われてきたサステナビリティにつながる取り組みを整理し、リストにして可視化できるようにしました。必要に応じて各部署からの相談にも乗っています。
金城:それ以外では、サステナビリティに関する社内啓発も重要な仕事の1つです。サステナビリティに関する方針や社会貢献活動について、社員への浸透が課題となっているため、一人ひとりがサステナビリティを“自分ごと”として捉え、主体的に取り組めるよう、様々な施策を検討・実施しています。
新谷:多角的に検討して、さまざまな立場の人に伝えられるよう、サステナビリティ推進部にはモノづくりの部署や物流、店舗、人事といった、各部署からの兼任者を含めて、13人のメンバーが集まっています。一人ひとりが所属先のハブとして、自分の言葉でしっかりと周りに伝えられるようになったらいいですね。

体当たりで学んできたことが財産になった体当たりで学んできたことが
財産になった

「アパレル業界に入ってから見聞きしたことが、サステナビリティ推進部でのモチベーションになっている」というふたり。ビームスに入社後、ファッション業界のすばらしさを知った反面、抱える課題もたくさん目の当たりにしてきたなかで、体当たりで学んできたことは何にも代えがたい財産。そのたびに、2人のマインドはどのように変化してきたのか。そして普段の生活で意識するようになったことは——。 一問一答形式で回答します。

Q.SDGsやサステナビリティを意識しはじめたのはいつですか?

A.金城:思い返せば、初めて意識したのはかなり小さいころ。場所は出身地である沖縄です。父と船に乗り、海でよく遊んでいました。 その船は底がガラス張りになっていて、海底がのぞけるようになっていたんです。きれいな海でサンゴや魚を観察していたときの思い出が、いまの仕事の原点になっている気がします。

A.新谷:学生時代から環境問題に関心がありました。でも決定的だったのは店舗スタッフとして勤務していた時で、シーズンの変わり目に洋服の梱包資材が大量に発生しているのを目の当たりにして、衝撃を受けたのを覚えています。頭では分かっていたけれど…。消費者としてお店に関わっていては実感できなかったことです。

Q.サステナビリティに関して、私生活で取り組んでいることはありますか?

A.金城:お恥ずかしながら、声を大にして言える活動はしていなくて…。プラスチックの使用を減らすとか、マイボトルを持ち歩くとか、小さなことを日々積み重ねるようにしています。それと、日常的にエシカルな情報に触れるようにしたり、仕事で経験したことは、伝えられる範囲で娘にシェアするようにもしています。

A.新谷:私も大々的に行動しているわけではないのですが、買い物のとき、選択肢がいくつかあるなら環境にいいほうを選ぶようにしています。あとはエコバッグを持ち歩いたり。個人でできることは少ないけれど、「裏を返せば企業でできることはたくさんある」と考えられるようになったのは収穫でした。周りの同世代に私のような仕事をしている人が少ないので、インターネットやSNSでリサーチをしたりしています。

Q.「地球らしく、わたしらしく、ビームスらしく」について、どんな印象を持ってますか?

A.金城:ビームスらしいと思います。抽象的なワードなので、「何を言ってるんだろう?」と最初は感じましたが、そうやって考えさせることが目的なのではないかと(笑)。押し付けではなく、いい意味でどうとでも捉えられる言葉にビームスらしさを感じています。

A.新谷:トップダウンではなく、社員一人ひとりに考える余地のあるところがいいなと。自発性を大事にするビームスらしいスローガンだと思っています。最後に「ビームスらしく」と入れているところが、特にビームスっぽいですね(笑)。

Q.サステナビリティに関して参考にした書籍や作品があれば教えてください。

A.金城:知見のある方にオススメいただいた書籍や作品を参考にしたり、関連資料は読み込みました。サステナビリティ推進部が発足する前に、経営企画部がまとめていたデータは大変参考になりましたね。

A.新谷:大学一年生の時に授業で観たドキュメンタリー映画は大きな気づきを与えてくれました。ファストファッションの裏側を捉えた『ザ・トゥルー・コスト』という作品で、華やかなファッション業界の裏側に迫った内容が当時の私にはショッキングでしたね。それ以降、サステナビリティに対して先進的な取り組みが多い欧米諸国を参考にしながら、勉強するようになりました。社会・環境課題を包括的に考えて向き合い、非常に高い水準でビジネスを行っている企業に与えられる「B Corp™」の認証機関が公認した初の日本語書籍『B Corpハンドブック』は参考になります。

(Photo)
ライアン・ハニーマン/ティファニー・ジャナ著『B Corpハンドブック よいビジネスの計測・実践・改善』バリューブックス・パブリッシング

ビームスで、私たちにできること。
究極の最終目標は、
サステナビリティという言葉をなくすこと。
ビームスで、私たちにできること。
究極の最終目標は、
サステナビリティという
言葉をなくすこと。

新谷:常に広い視点・新しい視点を持ちながら、私たちにできることを着実に続けていきたい。究極の最終目標は「サステナビリティ」が浸透して、その言葉自体がなくなること。また、サステナビリティは競争ではなく、共創が重要だと言われています。私個人や私たちの部署、あるいは会社だけでできることは限られていますが、「一人の百歩より百人の一歩」を胸に、これからも前向きに周りを巻き込みながら取り組んでいきたいです。

サステナビリティも、ビームスらしく。
環境や社会にいいことを、どれだけ楽しめるか。
サステナビリティも、
ビームスらしく。
環境や社会にいいことを、
どれだけ楽しめるか。

金城:いまは、SDGsを意識することが当たり前の社会になりました。でも同時に、“サステナ疲れ”という言葉もよく耳にするようになった気がします。サステナビリティへの取り組みは、「必死に努力しなければならない」という義務感やプレッシャーを伴うものとして捉えられがちですが、私たちサステナビリティ推進部では、環境活動や社会貢献を「いかに楽しむか」という視点で捉え、ポジティブかつ持続可能な取り組みを推進して考えています。社員一人ひとりが楽しみながら主体的に参加できるような施策を企画・実施することで、サステナビリティを企業文化として根付かせ、より良い社会の実現に貢献したいと考えています。