SUSTAINABILITY

リアリティをもって、LGBTQ+を知る。

2024.11.19

INTERVIEWEE
  • B ALLY
    COMMUNITY &
    サステナビリティ
    推進部

Photo : Yumi Saito
Text : Maki Nakamura

社内の声を受けて今こそ勉強会が必要だった

誰もがジェンダーにとらわれることなく自由な自己表現を楽しめる環境をめざす社内コミュニティ、B ALLY COMMUNITYが誕生しました。きっかけは社内で実施されたLGBTQ+に関するアンケート。関心の高さが明らかとなった一方で課題も浮かび上がる結果に。そこで、サステナビリティ推進部と有志メンバーによるB ALLY COMMUNITYが勉強会を実施しました。初回はご自身もゲイであり、LGBTQ+メディアの代表を務める太田尚樹さんを講師に迎え、7月にビームス本社で開催しました。

B ALLY COMMUNITYのメンバーはそれぞれが異なる部署に所属しながら、有志としてこの活動に参画している。

Q.まずは、仲間を知ることから!お互いを理解、尊重し、自由にカミングアウトできる社会へ

A.B ALLY COMMUNITYが掲げるスローガンは、「Know Your Neighbors」。まずは仲間のことを知ることから始め、お互いを認め合える組織になることを目標としています。コミュニティの名称にもなっている「ALLY(アライ)」は、LGBTQ+の方々を理解、支援する人々のこと。ですがこのコミュニティでは、「アライになることを強要はしない」というのも、大きな方針のひとつとしています。異なる考え方を尊重しつつも、みんながありのままに働けるオープンな社風を醸成する。これが、B ALLY COMMUNITYが大切にするマインドです。

(Photo)
オリジナルで製作したステッカー。

教えてください、太田さん!教えてください、
太田さん!

「ビームスさんは、直接お客様と接する企業。私のメッセージが伝播する速度が速いと思うので、緊張しますね」と、太田さん。LGBTQ+の概念的な理解を深めてもらうことはもちろん、みなさんの日々の暮らしに持ち帰ることのできるヒントを提供したい、と話す。

PROFILE

  • 太田尚樹
    編集者、ライター。ゲイ。主に動画コンテンツを制作、発信するLGBTQ+オウンドメディア「やる気あり美」代表。NHK「美少女戦士レイワヤン」シリーズ脚本、演出。雑誌『ソトコト』で、「ゲイの僕にも、星はキレイで肉はウマイ」を連載中。ほか、講演会、企業内研修講師などでも幅広く活動中。

SEMINAR PART 01SEMINAR PART 01

「佐藤・田中・高橋・鈴木」の総人口より多い?
周囲にいるはずのLGBTQ+が見えない理由
「佐藤・田中・高橋・鈴木」の
総人口より多い?
周囲にいるはずのLGBTQ+が
見えない理由

第一部の前半は、太田さんの講演会。LGBTQ+に関する「知識」と「意識」を高めるための内容をお話しいただきました。知識面としては、「LGBTQ+=セクシャルマイノリティの方の総称のひとつ」、「SOGI(ソジ)=性的思考・性自認など、セクシャリティに関する概念」といった、言葉の定義。そして、「公共のトイレに入りづらい当事者もいる」、「同性パートナーの病室に入れてもらえないこともある」など、当事者が抱える具体的な悩みの紹介へと続き、参加者もどんどん真剣な表情に。一見ほめ言葉として言ったつもりでも、「マイクロアグレッション」として相手を傷つける可能性があることなど、私たちが気をつけるべきポイントについてもわかりやすく解説してもらいました。「LGBTQ+の総人口は、佐藤・田中・高橋・鈴木の総人口より多いといわれています。いないのではなく、“見えていない”だけ。カミングアウトのリスクを考えて、公言しない人も多いのです」。そんなリアリティのあるお話が続き、気づきの多い時間でした。

座談会には「B ALLY COMMUNITY」の竹村、前田、小峯に加え、サステナビリティ推進部・今井が参加。進行役は太田さん。

第一部後半は、「B ALLY COMMUNITY」のメンバーも参加しての座談会。社内アンケートの回答をもとに、意見交換をする形で進行しました。なかでも盛り上がったのは、「社内にまだまだ偏見がある」というトピック。「飲み会の場などで、配慮に欠ける発言を聞いたことがある」、「お互いのファッションを認め合う社風なのに、メンズ/レディースといったアイテムのカテゴリーに固執する傾向がある」など、実体験を伴った多くの発言がありました。対談を経て太田さんは、「僕らだって、『あの言い方はよくなかったかな』と、あとから反省することがよくあります。日々、どうしたらもっと相手に優しくなれるか、心にとめていただきたいですね」と話しました。

SEMINAR PART 02SEMINAR PART 02

特製のコミュニケーションカードを使って
テーマを議論する、少人数制のワークショップ開催!
特製のコミュニケーションカードを
使ってテーマを議論する、
少人数制のワークショップ開催!

第二部はワークショップ形式です。異なる部署から集まった、6名ほどのグループに分かれ、ディスカッションテーマが書かれたカードから3枚を選択。そのお題について、それぞれの考えを話し合っていきます。「当事者が言われたら嫌な言葉ってなんだろう?」、「自分とは違う考えをもつ人と働くとき、あなたならどうする?」、「『多様性』って、そもそもなんだろう?」など、さまざまな内容が書かれたカード。ステッカーと同様、デザイン課の有志メンバーたちが、この日のためにオリジナルで作成したものです。ルールは、「思いやりをもった、オープンで対等な発言を心がける」、そして「相手の考えを否定・非難しない」。ディスカッション後には、「自分の現場に持ち帰って共有したいこと」を発表してもらいました。当日のディスカッション内容をいくつかご紹介します。

Q.みんなが気持ちよく過ごせる未来ってどんな未来?

A.みんなにやさしい未来を考えるうえで、あるグループでは「ジェンダーレストイレ」についてさまざまな視点から意見が交わされました。「設置したけれど、まったく使用されていない例を聞いたことがある」という参加者もいて、多様性というワードのもとに取り組みが形骸化することを懸念する声も上がっていました。

Q.嫌いな人、いる?その人ってどういう背景があって、そうなったと思う?

A.これは、当日太田さんが即興で追加してくれたお題。「瞬発的に相手を批判するのではなく、ちょっと立ち止まって想像力を働かせてみませんか?」という、提案の意味も込められています。「自分の感情をコントロールするよう常日頃心がけている」という発言から、「傷ついたり、ムカつくと、背景を考える余裕がないときもある」というコメントまでさまざま。最終的には、「どんな会話をするにしても、関係性次第で状況は大きく変わってくる」「相手の背景を考えたり、思いやりを持った発言が大切」という気づきがありました。

ディスカッションには、運営メンバーも参加。グループ内の積極的な発言を促す。「LGBTQ+の知識を基礎から学びたい」という人から「周囲に当事者の友人が多い」という参加者まで、個々をとりまくシチュエーションはさまざま。こうしたトピックについて、部を越えて真剣に話し合う貴重な機会となった。

AFTER THATAFTER THAT

2時間の勉強会はあっという間!
それぞれが“自分ごと”として持ち帰るきっかけに
2時間の勉強会はあっという間!
それぞれが“自分ごと”として
持ち帰るきっかけに

第一部1時間、第一部1時間、たっぷり2時間の勉強会。でも、まだまだ話し足りない!とばかりに、終了後も残り会話をする様子が見られました。まずは「知る」こと、そして相手の意見を「聞く」こと。失敗してもいいから、その反省を踏まえて知識と意識を高めていきたい!という前向きな決意が、参加者の表情から見てとれました。運営メンバーは何を感じたのでしょうか? 終了直後、ふたりからお話を聞きました。

PICK UP

TODAYS IMPRESSION

今日の感想

  • 「知りたい!」という、みんなの熱意に感動
    ある程度知識をもったうえで臨んだつもりでしたが、社会的な動きなども含めて新しい話題が多く、とても勉強になりました。ワークショップでは、「もっと知りたい」というみんなの熱意が感じられてうれしかった! これからも積極的な発信を続けていきたいです。(小寺)
  • インタラクティブな仕掛けで、多くの学びが
    講演だけでなく、座談会やワークショップも同時開催したことで、学びの多い場になったと感じました。私はステッカーとカードのデザインにも関わったのですが、こうして実際アイテムにすると、みんなにもメッセージが届きやすいな、って。うれしかったですね。

さらに、講師として登壇いただいた太田さんに、勉強会を通してのビームスの印象や、今後ビームスに期待することをお聞きしました。太田さん、本日は本当にありがとうございました!

MESSAGE

  • 参加することは、“相手を理解したい”という気持ち
    終始、ものすごい熱量を感じました。講演もとても真剣に聞いてくださっているのが伝わってきましたし、ワークショップでのディスカッションも、かなり盛り上がっていましたよね。何よりも、こうした勉強会に、これだけの人数が足を運んでいるということがすばらしい。それってひとえに、「相手を理解したい」という想いがあってこそだと思います。企業としての経済活動もきちんと回しつつ、一人ひとりが自由にはばたける職場環境を両立する。この難しいお題に対して、ビームスのみなさんなら、必ず挑戦していけると確信しました。「多様性」という言葉が、どこか面倒なものを片づけるときに使う“便利ワード”のように扱われることも増えました。言葉だけを一人歩きさせずに、どうすれば多様な人々が包括された社会づくりに貢献できるか、ぜひ今後もリアリティをもって知識と意識を高めていってもらえたらうれしいです。お招きいただき、本当にありがとうございました!