つくり手の想いに注目!商品に改めて光を当てるサステナブルなマーケット
『PASS THE BATON MARKET(以下、PTBM)』は、2019年に始まった新しい形の蚤の市。「Relight The Stock, Relight The Culture, Relight The Local.」をコンセプトに、2025年3月で開催18回目を迎えたイベントです。第4回から出展しているビームスが、PTBMと共感するポイントは? さらに、その先に目指すサステナブルな未来の形とは? PTBMディレクターの休場瑞希さんと、ビームス サステナビリティ推進部(兼 ロジスティクス本部)の本間征東さんにお話をうかがいました。

ブランドもお客様もwin-winなマーケットブランドもお客様も
win-winなマーケット
INFORMATION
- WHAT'S PTBM?
- PASS THE BATON MARKETは「倉庫に 文化に 光を当てれば、」を合言葉に、企業が持つデッドストックや規格外品など、何かしらの理由で商流が途絶えて行き場を失ってしまった商品たちを販売する新しいマーケット。ものとともに出展の背景や、通常では世の中に出回らないその“訳”を⽣活者の⽅々に伝えていくことで、企業と⽣活者とともにこれからの消費の在り⽅について再考するキッカケとなる場を作ります。倉庫の奥で眠れる、価値ある資産を今⼀度振り返り、ものの選び⽅やものとの付き合い⽅を再考できるような視点の発信もしています。
PASS THE BATON公式インスタグラム
PTBMが向き合うのは、企業やブランド、産地が抱える“もったいない”や“困りごと”。倉庫に眠るストック、規格外品、他にも販売上の様々な事情により流通機会を失った商品に改めて光を当て、生活者のもとに届けようという取り組みです。というのも、それが誰かにとって価値のある商品であったとしても、既存マーケットでは売り手と買い手を引き合わせる機会が限られていました。そこで、これまでにない“幸せな出会いの場”としてスタートしたイベントこそが、PTBMなのです。

コクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」で3月1日・2日の2日間開催。開催中は天候にも恵まれ、会場はひとりで買い物を楽しむ方、カップル、親子連れなどたくさんの人たちでにぎわいました。
出展商品のカテゴリーに関する制約は、ほとんどなし。PTBMが大切にしているのは、そのものづくりに共感できるかという点です。ビジネス視点で売れる可能性が高いかよりも、「自分たちがワクワクできるかどうか」がポイント。現在は年に3~4回、それぞれ2日間の催事としてコクヨ東京品川オフィス「THE CAMPUS」で開催されています。
もともと〈PASS THE BATON〉は、個人と個人をつなぐリサイクルショップとして2009年にスタートしたブランドです。東京・表参道、丸の内、京都に店舗を構え、所有者の想いを添えて販売するという手法で注目を集めました。その後、社会的なサステナビリティ意識の広がりも受けて、常設店舗としての役割を卒業。現在は、企業のストックに光を当てる『PASS THE BATON MARKET』というスタイルで運営されています。






食べ物からファブリック系、食器類、カバン、アパレルなど様々な企業やお店が参加。倉庫に眠っていたものや、廃材を利用したアイテムなど、サステナブルにつながる商品が並びました。
ワクワクとサステナブルが同時に叶う、“おとなの文化祭”ワクワクとサステナブル
が同時に叶う、
“おとなの文化祭”
対談者PROFILE
- ビームス サステナビリティ推進部(兼 ロジスティクス本部) 本間征東さん
- 長年ビームスの物流を担当。商品在庫だけでなく、シーズンの入れ替えや店舗移転などで出てくる備品の倉庫管理をしているので、ビームスのものの流れを誰よりも知っている。現在はサステナビリティ推進部として、培ってきた物流のノウハウを活かした取り組みを行っている。
- PTBMディレクター 休場瑞希さん
- パリで服飾の専門学校を卒業。帰国後はスタイリストのアシスタントなどを経験したのち、スマイルズに入社。店舗勤務を経て現在はPTBMディレクターとしてイベントを統括している。
本間:当初のPTBMの合言葉が、「日本の倉庫を空っぽにしよう」でしたよね。自分はずっと物流を担当してきたこともあって、まずそこにすごく共感したんです。さらにもうひとつ、「商品以外のものも販売していい」って言われて。これはおもしろそうだぞ、と。
休場:初回参加時に、ハンガーとか椅子とか、ビームスさんから店舗什器が持ち込まれた話は、社内でも伝説になっています(笑)。
本間:当時、店舗什器用の倉庫管理もやっていたんですけど、もう本当にパンク寸前だったんですよ。
休場:そうなんですよね。「倉庫に眠っているもの」っていうと、皆さんまず在庫商品を思い浮かべると思うんですが、実際はそれ以外にもたくさんある。これは、表に出たらまずい話というわけではなく、一般の方には単純に知られていない世界なんですよね。でもそこにも魅力的なアイテムが眠っているんだから、積極的に光を当てていきましょうよ、というのがPTBMの想いだったんです。
ビームスさんはそのコンセプトを最初からばっちり理解してくださったので、さすがすごくクリエイティブな企業だなって思いました。
本間:いやでも、椅子は予想以上の売れ行きでした。普通に常設店舗で家具を売っていたら、2日間で3脚、4脚売れるなんて、ありえないですからね。大型の什器も、PTBMのほかの出展者さんから問い合わせがきて、無事に売却できました。それもあって、ビームス倉庫の過密問題は、現在では解消傾向にあるんです。
休場:その言葉を聞けて本当にうれしいです。でもさらに最高なのは、ビームスさんっていつも、PTBMを純粋にすごく楽しんでくれていますよね?
本間:ほんと楽しいんですよ。“おとなの文化祭”みたいな感じが。
休場:文化祭…、わかります。しっかりとした企業の責任あるおとなが、届けたい商品を携えて本気で楽しみに来ている、みたいな。そういう空気感がPTBMにはありますよね。
大型什器が売れたのには
びっくり!
PTBMには驚かされます。


休場:ビームスさんは初期から参加してくださっているんですけど、正直なところ本当にありがたかったんです。PTBMも開催18回目を迎えて、おかげさまで徐々に世間的な認知度は上がってきているかと思います。でも当初はやっぱり、得体の知れないイベントだったと思うんですよ。
本間:御社の野崎社長が、話を持ってきてくれたんですよね。
休場:ビームスさんが、最初の営業先だったって聞いています。やっぱり新しいことを始めるのであれば、ビームスさんのような影響力のあるブランドに参加してもらいたかった。あとはやっぱり、一緒にワクワクすることが仕掛けられそうっていう、同じバイブスを持っている部分が大きかったんだと思います。
本間:ワクワクするムードと、倉庫のパンク状態の解消。この両面において参加意義があるイベントっていうのは貴重だと思います。
休場:私たちが新たな出展候補者とお話をするときには、かなりの期間をかけて密に打ち合わせを重ねます。「有名ブランドだから」
とか、「売り上げが上がりそう」とかそういう視点ではなく、「商品の背景に想いがあるか」を第一に考えています。そのうえで、どこに光を当てればお客様により伝わるのか、それを大事にしていますね。
本間:だからだと思うんですけど、PTBMに来るお客さんって、「安いから」で買い物をしていない印象なんです。本当にかっこいいものが欲しくて、きちんと商品を選びに来ているというか。そこが、アウトレットやファミリーセールとまったく異なるんです。
休場:そう、何かが足りなくて、それを割安に買いたいっていう方たちではないんです。「何かおもしろいものがありそう」って、宝探しのような気分で足を運んでくれて。さらに、商品の背景にある価値をちゃんと知ろうとしてくれるんですよね。
本間:それが結果として、企業側にとっても生活者側にとってもサステナブルにつながっているわけですから、最高です。
ビームスさんとなら
一緒にワクワクすることが
できると思ったんです!


マーケットが寛容になるほどに、ものづくりはワクワクできるマーケットが寛容に
なるほどに、ものづくり
はワクワクできる

休場:日本のものづくりのクオリティは本当にすばらしいんですが、販売の基準においてはもう少し寛容になってもいいんじゃないかと思う部分があります。たとえば、売る側から見たら訳アリ品でも、使う側にとってはそこまで大きな問題じゃないことも多いですよね。PTBMのお客さんは、そのあたりを理解してくださっていることもあって、これまで一度も商品に対するクレームがきたことないんです。対面販売でそれが実証できたので、オンラインマーケットにも取り組み始めました。
商品開発においても、売れなかったときのリスクを考えると、つくり手が本当にやりたいことに挑戦できない風潮があるように思います。たしかに、振り返ったときに倉庫が在庫品でいっぱいだったら、次のチャレンジに取り組むのって難しいですよね。でもPTBMがあることで、少しでもこの状況を解消するお手伝いができれば、もっとワクワクする商品が生まれてくるんではないかと考えています。
チャレンジを続けて、
さらにワクワクする企画を
発信していきます。


ビームスのブースでは、洋服はもちろん、店頭ディスプレイとして使われていた椅子やガラス瓶、雑貨類などが並びます。普段ビームスの店頭でも見ることのないユニークな品揃えに、多くの人でにぎわいました。
本間:店舗備品の話でいうと、今回は初めて流木を販売したんです。アクセサリー類をレイアウトしていたものなんですが、「これはさすがに需要ないんじゃない…?」って社内で話していて。でも蓋を開けてみたら、ものすごい売れ行きだったんです。今後もそうした新たなトライを続けて、ものの持つ価値発掘に取り組んでいきたいですね。
社内のエリアマネージャーたちの間でも、PTBMに対する関心はすごく高いんです。ビジュアルマーチャンダイザーという商品レイアウト担当のスタッフがいるんですが、彼らからも、「この備品、PTBMにどうでしょう?」っていう提案が出てくるようになってきました。
さらに今後は、在庫商品に光を当てることにも改めて注力していきたいと思っています。出品アイテムのセレクトは私が在籍しているサステナビリティ推進部で担当しているのですが、「これ、かっこいいな、かわいいな」っていう純粋な気持ちで選ぶのが、本当に楽しくて。今後もその想いをたいせつにしながら、サステナブルな取り組みとして継続させていければと考えています。


今回のマーケットでは、ホリデーシーズンなどに使用していた期間限定デザインのショッパーを再利用しました。

店頭のディスプレイなどで使用していた椅子も販売。座れなくなってしまった椅子でもプロップとしての需要があることが分かりました。
PTBMのような
楽しいサステナブル活動が
ビームスは大得意!
これに限らず協力していきたいです。
