本創刊号では、アルプス地方周辺（ミラノ、ミュンヘン、チューリッヒ、ウィーン）を特集しています。アーティストが手がけた作品シリーズからファッション・エディトリアル、ルポルタージュ、アーティストのポートフォリオの複写に至るまで、多岐にわたる内容を取り上げています。

家の玄関先やチューリッヒのひっそりとした通り、すぐ近所の周囲の環境を振り返るところから物語が広がり、アルプス地方の都市であるチューリッヒ、ウィーン、ミュンヘン、ミラノなど、アンドレアス・コラーを取り巻く環境が反映されています。アルプスの山々、その窪地、山々によって隠されている場所、トンネルといった物理的な要素だけでなく、アルプスは想像力の領域としても存在しており、その想像の糸がページを通して紡がれています。テーマや作り方において、物理的な部分に重きを置き、どっぷり浸かり込んでいる本書は、触覚的に本の素材を楽しむことができ、印刷物ならではの喜びを感じさせます。

デジタル時代と20世紀後半の印刷文化を融合させたいという製作陣の情熱が、本誌の寄稿にしっかりと現れており、それを束ねる傘として「場所」と「ある種の折衷的なポップな感性」が機能しています。本号はまた、一種のジョージ・オーウェル的（作品『1984年』［1948年］の中で描かれた未来の全体主義社会的な監視社会）な動物の反乱も明示しており、もしかしたら擬人化された動物たちが、不在のスターやセレブリティの代わりを務めているのかもしれません。今号に寄せられたエッセイ、インタビュー、文学的テキスト、ファッション・エディトリアル、アーティスト陣の寄稿を読み解くことによって、我々は周囲との新たな関係の可能性を発見するかもしれません。あるいは、単純に軽快なエンターテイメントとして楽しむことができるでしょう。

【仕様・詳細】
・出版社：SERVICE(2024)
・頁数：276ページ
・サイズ：205x275mm
・ソフトカバー

※本書は印刷や製本、紙の性質上、折れや汚れがある場合がございます。不良品ではございませんので、あらかじめご了承ください。