AIの第6感、、DETAIL INC. / Mars Dust Globe スノードーム 図書館と満員電車は似ている。
そう言ったのは、初めて会ったにもかかわらず、やけに落ち着いた雰囲気の彼女だった。私は思わず、は？と聞き返した。
「だって、ほら」
彼女はそう言って、膝の上に広げた本のページを指でなぞった。「みんな、それぞれの目的地に向かってるのに、そこにいる間だけは、奇妙な一体感があるじゃない？」
その日は土曜の午後で、私は都心の大型図書館にいた。普段はあまり来ない場所だが、仕事の資料を探しに来ていた。窓際の席で、私は彼女の言葉を反芻する。
確かに、図書館の自習スペースは、まるで満員電車のようだった。誰もが黙々と自分の世界に没頭している。イヤホンで耳を塞ぎ、パソコンに向かう者、参考書に線を引く者、静かにページをめくる者。皆、それぞれの「目的地」――試験合格、論文完成、資格取得、火星移住――に向かっている。しかし、この同じ空間、同じ時間の中に、ぎゅうぎゅうではないけれど、確かに隣り合って存在している。
満員電車もそうだ。朝の通勤ラッシュ。押し潰されそうな空間で、皆が同じ方向へ、つまり職場へ、学校、目的地へと向かう。誰もが疲れた顔で、スマホを見たり、目を閉じたりしているが、その実、同じ車両に乗り合わせているという、漠然とした連帯感のようなものが、そこにはある。扉が開けば、我先にと降車口に向かうが、それまでは不思議な秩序が保たれている。
「でもね」
彼女は顔を上げて、私を見た。「決定的に違うのは、図書館の方がずっと心地いいってこと」
私は笑って頷いた。満員電車で感じるのは、圧迫感と息苦しさだ。一方、図書館では、静けさと、それぞれの知的な営みが発する微かな熱が、心地よい空間を作り出している。
「あなたは、何を探しに来たの？」
彼女は私に尋ねた。私は仕事の資料だと答えた。彼女はにこりと笑った。
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