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丹羽 望 2023.07.27



【180g重量完全限定盤】坂本龍一 / 千のナイフ〈日本コロムビア〉
価格:¥4,180(税込)
商品番号:29-67-0749-500




1978年発売のソロ初作。その当時既に楽理に強い新進気鋭の鍵盤奏者として、様々なセッションに引っ張りだこ。ちょうどYMO(イエロー マジック オーケストラ)稼働前夜のタイミングとも重複。新しい音楽に理解のあった日本コロンビアと契約し、スタジオの空き時間を活用したレコーディングを経て完成。が、当初はあまりにも前衛的過ぎてレコード会社は困惑。初回プレスは僅か400枚!で、200枚がレコード店から返品されたというエピソードも。


ちなみに私はその200枚のうちの1枚を郷里愛媛県松山市の奇特なレコード店で入手。確かYMOの2作目をリアルタイムで聴いて、遡って買った記憶が。(自慢話です。笑)



この様に、当初は難解と見做されていたものの、参加したYMOの知名度上昇に伴い、今作への理解も進み完売。また、YMOのレパートリーとして今作から3曲が採用され、何度かリアレンジされ登場。それがまたしびれる様なカッコ良さで、アレンジによって楽曲が様々に変化する事を耳で学んだ記憶が。(ご機会があればYMO版も是非ご一聴を。)





帯のコピー(惹句)が素晴らしい...

ゲストも豪華。



以前に、坂本教授のラジオだったか?で、ピアノは音色そのものが音楽の歴史を背負っていて、一方でシンセサイザーはそんな文脈とは無縁の新しさが良い...という内容のコメントを聞いて大いに納得。シンセサイザーをクラシック音楽のシュミレート的に用いたものが多く、あまりピンと来なかったのはそういう理由だったのか!と。



さて内容について。やはり最もフェイバリットのタイトル曲。イントロのヴォコーダーによる、とある詩の朗読から怒涛の展開。シンセサイザーによるベースサウンドがかなりのインパクト。ベースギターのサウンドも大好きなのですが、それとは異なる恐ろしく分厚い響きは何度聴いてもノックアウトされます。そしてリズムがレゲエの様であり、サンバの様でもありダンサブル。2曲目はアルバム中で最も抽象的な印象。どこか密林を進む様な。たぶん当時のレコード会社首脳陣をビビらせたのはこの曲かと。3曲目は高橋悠治とのピアノ連弾が軽やかで楽しげな印象。後年ピアノ独奏のセルフカバーも。4、5曲目はシンセドラムの音色が心地良く、KRAFTWERK(クラフトヴェルク)的なポップ感。そしてラストはYMOでもお馴染みの大名曲。オリエンタルな主旋律とレゲエを連想させるリズムが絶品。そしてやはりベースサウンドがカッコ良すぎ。終盤のギタリスト渡辺香津美によるアブストラクトな演奏も凄い。



と、この様に色々な音楽的要素が混交していて、聴く度に異なった部分に耳が反応し新しい発見がある...奇跡の様な作品。昔聴いた時も、そして今聴いても年代もジャンルも超越している傑作。

今回の復刻にあたりオノ セイゲンによるEQ調整が施されているのもポイント。




そして実はサウンド以外にも魅力がたくさん。高橋幸宏のスタイリングによる坂本教授。(ウェア類のクレジットも記載。)こんな作者本人の姿をジャケットに用いたところも斬新。現代音楽のアルバムでこんなデザインはまず見かけない。




加えて、中身のライナーノーツは当時のものを忠実に復刻。若くてイカれていた教授の文章に翻弄されるのも一興。(当時中学生だった自分には難解過ぎる文章でビビりました。)



野心的でアナーキーだった坂本教授を未だご存知ない方に是非おすすめです。癒し成分は少なめですよ。


以上、

ビームス プラス 原宿

ポストパンク/ニューウェーブ担当

丹羽でした。






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