小さい頃から、くせ毛に悩まされていた。
特に前髪がひどい。
朝、どんなにドライヤーで必死に伸ばしても、昼過ぎにはくねくねしている。
1時間目に体育があった日なんて朝の努力を笑うように、汗のせいですぐにくせ毛は存在感を示してきた。
私の身体の中で、一番自己顕示欲が強いのが前髪だった。
誰も気にしたりしないんだけど、前髪が決まらないと恥ずかしくて仕方ない。
みんなが私の波打った前髪を見て笑っている気がしていた。
今すぐ家に帰ってドライヤーを使いたい。
帰りのチャイムが響くまで、誰にも見られないように下を向いていた。
社会人になってからは、ヘアアイロンやストレートパーマを駆使して、私の前髪はまっすぐになった。
そしたら今度は前髪がまっすぐになりすぎて決まらない。
あの頃はあんなに直毛に憧れていたのに。
人間なんて、結局ないものねだりなんだ。と斜に構えた。
今思えば随分大げさな話だ。
そして、今。
昔ほどくせ毛がひどくなくなった。
私のくせ毛は、前髪の内側が強い。
そこだけをストレートパーマやアイロンで伸ばして、まっすぐな後ろの毛をもってきて重めの前髪をつくる。
そんな感じで、なんとなくうまく付き合えるようになってきた。
それでも。
朝、鏡を見ると浮き上がった前髪の自分。
もう何回くらい、自分の前髪を残念に思いながら朝を過ごしたんだろう。
そしてあと何回、私はこの前髪が決まらないとため息をつくのだろう。
こんな小さなことすらうまく行かないことが毎日起こる。
私以外の人にはとるにたらないことなのにな。
男の人にとってはどうなのかわからないが、女子にとっては「前髪」というのはとても特別な気がする。
「前髪」ひとつでその日のモチベーションが決まる。
前髪を少し切っただけ。
前髪が浮いている。
ただそれだけのこと。
それなのになにかうまくいかないと、きっとこの前髪が決まらないせいだなんて思った。
前髪は、いつも私のうまくいかないことを自己犠牲して受け入れてくれる存在だ。
ずいぶん前髪には苦労をかけてしまった。
そんな私のうまくいかない事柄を一手に引き受けてくれた前髪のおかげで、
私は前髪が決まらないことに昔ほど振り回されなくなった。
決まらない前髪と一緒に、なにも決まらない毎日を悩みながら過ごすのもいいかな。
なんて、今の私は思ったりもするのだ。
何という心境の変化。
前髪の癖がひどいなら、ヘアバンドでおでこ全開でいいじゃないか。
思いっきり短く切ってしまってもいいんだ。
もう、前髪が決まらないからって下を向いていた自分じゃない。
前髪を上げてみたら、なんだ世界は明るかったんだ。
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