おうち時間

2021.09.12









夢を見ていた気がする。




思い出せないが、海外を自由に渡り歩く、そんな夢。




コロナ禍で生じたストレスだろうか。




正直ほとんど覚えてはいないが。












9月12日。日曜日。カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める。








日頃目覚まし時計に叩き起こされているせいで、無意識に置き時計を手探りで探す。







あぁ、あったあった。






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しかし、もちろん目覚ましは作動していない。





昨夜設定を切ったのだ。








そう、今日は久々の休日。連勤で疲弊した身体を起こし、もう少し寝たかったな、とボヤく。







時間は午前9時。普段なら休日は短針と長針が最も背を張る時刻まで気を失っている男にとってはかなりの早起きである。







寝惚け眼を擦りながら、朝の日課であるコーヒーを淹れる。







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猫舌の男は淹れたてのコーヒーに口を付けるまでに時間を要する。





タバコに火をつけ、適温を待つ。






PEARL / US オイルライター
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紙巻きの半分が灰になり、そろそろか、とコーヒーに口を付ける。





漸く1日の始まりである。




期せずして早起きをしたお陰で1日が長い。




何をしようかと考えるが、全く頭も身体も動かない。仕方ない、とスマホを片手に椅子へ腰を落とす。






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愛用のクッションを押し潰し、考え得る限り最も堕落した格好で、回らない頭のケツを叩く(頭のケツという表現は如何なものなのか)。







今日は特にこれと言った予定は入れていない。



"I'm free."




自由であり、暇である。




そしてダラダラとネットサーフィンに身を乗じる。





服、家具、オーディオ、諸々、アテもなくダラダラと何かを探し続け、






ハッと時計に目をやると13時。






短針は軽く会釈をしていた。






意識が時空を飛んだ、のではなく、単なる寝落ち。やはり身体にとっても予想外に早起きだったらしい。






休日らしくて良い、と言い訳。







これで完全に覚醒。9月12日のスタートである。







ただ、時間も時間。そして何とも言えぬ天気。







男を起こす為だけに差した日光は遥か遠くで休んでいる。どうしたものか。








ひとまず食事である。当然料理なんてする気が起きる筈もなく、真っ先にレトルトに手を伸ばす。






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冷凍された、ラップにグルグル巻きの米を無造作に電子レンジに放り、解凍。





レトルトは昔から湯煎しかあり得ない。

謎のこだわりであるが確固たるものである。





調理時間10分。うち米の解凍と水の沸騰がほとんど。





簡素な、料理とも呼べない1品の完成である。




カレーを食べる為の食器を準備し、空いた腹収める。






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ご馳走様でした。






早々に歯磨きや洗顔などを終わらせ、予定の無い1日を埋めようと画策する。
















駄目だ、何も思い浮かばない。何もしたくない。



寝過ぎて怠い。怠惰の擬人化かと疑う程に身体が重たい。



ただ眠っていただけなのに外を歩いていた気すらするし、いよいよダメかもしれない。


インディアンチックな建造物が頭にチラチラ映るのは何故?







ひとまず冷蔵庫に目をやる。


幸い残り1食なら賄えそうだ。





これはもういよいよ外出の必要が無くなった。





そうと決まればやる事は1つ。






究極に贅沢な時間の費やし方。




ひたすらな映画鑑賞である。




今日はとことん「おうち時間」を楽しんでやる。








そして、ソファにまたよろしくと声を掛け、液晶に貪りつくのであった。











(この話はフィクションです。)




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