クリスと出会ってから意気投合するのにそう時間は掛からなかった。
彼がロードアイランド州のイーストグリニッチという小さな海辺の街の出身で、イタリア系アメリカ人3世だというルーツから、これまでどんな人生を歩んできたかを聞いていくうちに、人として興味を持った。僕自分も周りの人に比べると破天荒というか、良く言うと様々な人生経験をさせてもらってきたけれども、彼の人生は物語とか映画なんじゃないかと思うくらい面白くて衝撃的だった。
ミッドセンチュリーを代表するファニチャー・デザイナーの1人ジェンス・リゾムの別荘の近くに住んでいたことや、スラッシャーのTシャツを着て、サーフィンとスケートに明け暮れていた幼少期の話も聞いた。ブラッグフラッグ、サークルジャークス、マイナー・スレットなど80's USハードコアのライブを見に年上の兄について行きライブハウスに忍び込んだ話など。ハイスクール時代には人生に大きな影響を与える恩師に出会い、それがきっかけで芸術、文学の扉が開けたとか。ちなみにクリスは恩師から勧められた食に関する本がきっかけで15歳からベジタリアン生活を続けているらしい。アートスクールに進学後、ハンドビルドのバイクに跨りロードバイク競技に明け暮れた時期があったり、当然サーフィンと創作活動にも没頭していた。卒業後は20世紀を代表する現代美術家「ロバート・ラウシェンバーグ」に師事していた。現代美術の巨匠を間近にみることで、自分がアーティストとして活動していく後押しにもなったそうだ。その後、アーティスト活動を行いながら、米国内とカタールの大学で美術教師として教鞭を振るったり、空いている時間で世界中を旅して回っていた。そして30代でニューヨークへ戻り、アーティストとして活躍しながらコンデナストのフォトスタジオのクリエイティブディレクターのキャリアを積んだ。ある日立ち止まり、アーティスト、フォトグラファー、サーファーという自分が抱えている3つの異なる世界を一緒にしたらどうなるかな?と思い立ってピルグリム サーフ+サプライをスタートするまでの話はとても刺激的だ。いつかクリスに会うことがあったら是非聞いてみて欲しい。
ビジネスパートナーとなった今でも関係性が変わらないのは、何かウマがあった、気が合ったというのが、お互いにとって最適な表現なのかもしれない。事実、今でも彼は僕を人に紹介する時、ビジネスパートナーではなく、「brother from another mother」と紹介してくれている。*直訳すると、異母兄弟、アメリカでは親友を超えるマブダチという意味