スタッフ「コヴァ ヤジー」の記事

インディアンジュエリー放浪記 其の四  「いぶし銀の魅力」

みなさん、こんにちは。

先週に続き、いつも通りの温かい目で、今週もよろしくお願いします。


ビームス プラス 原宿での何気ない会話から…ウチの店の雰囲気にフィットするインディアンジュエリーってどんなのですかね?先週のワークウエアの件とも繋がっていますが、なかなか悩ましいお題だと思います。

以前にメルマガ(BEAMS PLUS TIMES)で「装飾が少なく控え目な佇まいのモノ」と濁したのですが、それって具体的に何?と強めに訊かれもしました。国会さながら発言の意図を問い詰められて追い込まれたワケですw

独断ですが、意図としてはインディアンジュエリー創成期の技術、流れを汲んだいわゆるオールドスタイルを指しています。鍛治職人が自前の限られた道具で銀製品を材料に作ったような雰囲気、表情のジュエリーです。

Jock Favour、Jesse Robbins、FTCあたりが目立った作り手、工房でしょうか。この辺の方々はサウスウエストの先住民族ではありませんが、意欲的にオールドスタイルをリバイバルさせています。


Jock Favour、Jesse Robbins、FTC


経過とともに酸化、硫化によるくすみ、黒ずみも雰囲気の一部になり、愛用品として肌身離せない感覚が芽生えてきます。


ボクの私物、いぶし銀の脇役達


こういったジュエリーは飾り気のないアメリカンカジュアルに自然に溶け込んでくれるだけでなく、ドレスアップした際には鈍い光沢が控え目に主張してくれもします。直球本格派のビームス プラス衆には悪くないハナシですw

写真はないのですが、たまにお世話になっている現地のビンテージディーラーのオヤジの格好で、トラックキャップを被って、ワークシャツをゆったりしたジーンズにタックイン、スクエアトゥのローパーブーツ。そこに古びたオールドスタイルのジュエリー、力が全く入ってないんです、ファッションなんかじゃなくて。ブースでオレンジを剥いて食べながら「コレどうだ?」と手首のお宝級を自慢げに見せて、こっちの目がキラキラした瞬間に「売らないけどな!」おい、返せ時間を。

東京ではあんなオヤジにまず遭遇しませんが、ボクの中ではほぼ正解なのかな、と少し感じていて、ビームス プラスの問いに対する答えに近いのかも、と感じてもいます。

いろいろ話し始めるとキリがないので今回はこのあたりで。ゆっくりと愉しみましょう、オトナ?らしく焦らずに。

ぜひ、気軽にお越しください。


※26日(金) 20:30〜インスタライブ予定


コヴァ ヤジー

インディアンジュエリー放浪記 其の三  「本格派の弱点」

みなさん、こんにちは。

先週に続き、いつも通りの温かい目で、今週もよろしくお願いします。


今週は19日(金)からビームス プラス 原宿でインディアンジュエリーフェアが始まります。さり気なくコジつけていこうかと筆を執った次第です。

まずは軽いお題から…「ワークウエアとインディアンジュエリーの相性」克服し難いテーマです。ん?相性イイんじゃないの?と突っ込まれそうですが… ビームス プラス衆はワークシャツ&ワークジャケットにワークパンツと来たらワークブーツで締める?のが普段着なんです、引き算ナシで。さらにインディアンジュエリーを合わせると…アレ?なんで?ソコです!リアルワーカーにはジュエリーなんて作業に不要、邪魔ですから。出で立ちが本格的になればなるほどジュエリーの存在がわざとらしく見えて浮きがちなんです。

今回はハッキリ言います。スポーツ、ワーク、ミリタリー、トラッド、どれも直球のままだと溶け込みません。十分に肩の力の抜けたコーディネートになら合うハズです。つまりビームス プラス得意の直球スタイルを抑えめ控えめに加減するほど、インディアンジュエリーとのバランスは良くなる、という皮肉な関係にあります。直球でグイグイ押す本格派にはちょ〜っと… ボクもかつてビームス プラス 原宿にいた頃、そんな自問自答からインディアンジュエリーを思う存分着ける気にならなかったですね〜 結局、ビームス プラスを離れて本格派から技巧派への転向を余儀なくされ、今では独りよがりに存分愉しんでいます。

ビームス プラス 原宿の店内に入ると、赤みがかった照明と鬱蒼とぶら下がったウエア類が視界を遮る独特の世界観?に圧倒されがちですが、直球本格派ではない方々にも、ぜひ気軽にいろいろ観て愉しんでいただきたいお店(のハズ)なんです。BDシャツは着ないけど軍パンはBEAMS PLUSが気に入ってる、無地のカットソーが好みで色違いで揃えてる、毎回アウターのファブリックに注目してる、ALDEN以外の靴を時々チェックしてる等々、そんなノリでインディアンジュエリーも観ていただけたらと図々しく期待しています。さらに、スタッフの着け方を参考に観に行く、なんて方がいらっしゃったらたいへん恐縮ですが嬉しいですね〜


同じアイテムを色違いで着用、ブーツはLucchese


アローナジャネックレスに8連と3連のヒシネックレス


眼光鋭いオウルカチナのボロタイと5連のターコイズネックレス


今回は、ビームス プラス ディスプレイ職人衆の頭領 Mimoto と打ち合わせしながら、新しい提案、切り口として、ウインドウにフェアの告知でインディアンジュエリーをコーディネートしました。シャンブレーカウボーイシャツに4Bダブルジャケットでネックレスやボロタイを自由に重ねて組み合わせています。素朴なファブリックとの相性がなかなか面白く、BDシャツに3Bジャケットだと出せない力の抜けた雰囲気だと思います。サウスウエストに旅行して、セドナでイイ買い物をして、早速気分良くジュエリーを着けて歩いてるかのような…羨まし〜

コジつけにすらどうか…な内容をダラダラと綴りましたが、暖かくなり衣替えと合わせて、インディアンジュエリーも気軽にご覧いただいて気分転換になればと思います。念の為、財布もお持ちいただいて…

気ままなご来訪お待ちしております。

※19日(金)19:30〜インスタライブ予定


コヴァ ヤジー


インディアンジュエリー放浪記 其の二  「異文化への先入観」

みなさん、こんにちは。

2ヶ月振りですが、今回も温かい目でよろしくお願いします。


たまに「インディアンジュエリー」の在り方について議論されてるのを見かけます。血統、技法、デザイン等々いろんな項目を条件に絞り込む、振り分ける、割と真剣な口調です。「○○のコダワリは○○族では1番でしょ」「○○技法なら○○族じゃないと」「やっぱり行き着くのは○○なんだよな〜」ボクは苦手なんで加わりません。でも小声で「それ楽しいの?」とだけ。

 京都で仏閣に熱心な外国人に話しかけられて「よくご存知ですね〜でも日本独自の宗教観ですから、他所の方には…」あ〜ツマラナイ。美味しいカルボナーラを平らげて「美味しかった〜でもシェフが日本人だから本場のじゃないけどね…」あ〜バカバカしい。逸れましたが、どれも口先ばかりで愛情が足らない気がしますね〜

そういえば、ローマッ子が東京に来て、パスタに感動した、イタリアよりも美味しくて毎日通ってるって言うので、そんな名店いったいどこにあるんだ?って聞いたら、誰もが知る近所の和風パスタの店だったっていう。(実話) でもコレ、日本人とイタリア人の柔軟な感性がうまく混ざった文化交流です。

ボクのハンドメイドに対する愛情表現は、モノに出会ってしまったら、まずは財布とよ〜く相談する。運良く手に入れたからには作り手の喜ぶ顔を思い浮かべながら身に付ける、愛用する、だけです。わざわざ作り手の出自にまで踏み入って、ジュエリーを格付けしたり、定義したがるなんて余計なお世話じゃないかな…と思いますね〜

モノに惹かれていくうちに作り手のコトもゆっくりと知りつつ理解を深めていくのがフツウの愉しみ方です。ただ、作り手が名高いからイイ物だとすぐに信じ込んだり、逆に見慣れない新しい試みを、容易く異端だと決めつけてしまう考え方は、どこか豊かじゃない、愉しんでない気がします。まあ、思い込みに縛られるのも縛るのも一方でご自由だとは思います、肝心のジュエリーが活きるのであれば。


ある日の右手。上からナバホ族、コチティ族、ノンネイティブ、ラグナ族。指輪は左からホピ族とノンネイティブ


ボクはビームスのスタッフなので、服と同じでジュエリーの組み合わせにも意外性が少しはないと愉しくないな、と。どうせなら先入観にとらわれず、自分の好きなようにジュエリーを組み合わせて、それまでになかった相乗効果、イイ表情が生まれたらな〜とフザケ半分マジメに思っています。


ある日の左手。入れ替わって加わったのはナバホ族作者不明のブレスレット、ノンネイティブ×ナバホ族のターコイズ付きリング※和風パスタ


最近では、インディアンジュエリーを音楽や料理と似通ったモノだと感じるようになりました。もちろん古典、定番はありますが、様々な偶然、空気、試みが混ざって生まれる意外性、独創性も大きな魅力の一つだと感じています。

ビームス プラスも揺るがない軸足を基点に、絶えずイイ音、イイ味を探し続けている点では少し共通しています。新しさを追求していたはずが古き良さを見直していたり、古きを訪ねていたら新しいアプローチになっていたりと。

自分が新しさと古さのどちらに向かっているのか、好みなのか、綴っていてもさっぱり分かりませんが、新しくも古くもない半端者であるコトを痛感してはいます…駄文はさておき、インディアンジュエリーフェアにお越しいただくと、どちらも豊富に取り揃えておりますので、目と手でお確かめいただくのが最善と思う次第です。

ビームス 神戸は14日(日)までの開催です。ぜひ、気軽にお立ち寄りください。


コヴァ ヤジー

インディアンジュエリー放浪記 其の一  「放浪の発端」

みなさん、はじめまして。

先にお詫びさせていただきますが、気ままな拙文です。どうか温かい目でお付き合いください。


巷でg’sとCHが若者のシルバーアクセサリー人気を二分していた90年代半ば、ボクは些細なきっかけから、インディアンジュエリー専門店を見て回るようになりました。※略してIJ

なんで人気のビッグ2に興味が湧かなかったのか?ん〜特に理由はなく、自分には全く向いてなかったんでしょうね…強いて挙げると「CHを巡る抗争」が身近で勃発していたりと、バイオレンスとは全く無縁の貧弱青年は、安全で自分好みの何かを探し求めていたような気がします。

近郊のIJ専門店を一通り見て回りました。すると店によって品揃えに特色、雰囲気がそれぞれあり、その違いが部族や作家によるものだ、と理解しかけた頃にはロックオンしていました。

その中でも、独特の意味ありげな絵柄が印象的な「ホピ族」のジュエリーには、いつのまにか心を奪われてしまいました。迷路のデザインに得体の知れない奥深さを感じたり、太陽が顔になっていて「ゆるキャラ」みたいで一目で親近感が湧いたことを今でも覚えています。

ただ財布が…ならせめて本だけでも、と買った二冊を四半世紀経った今でも眺めたりしています。それから十年後には、何の悪戯かビームス プラスで働いており、前述の迷路や太陽を暇を見つけては眺めていました。※仕事しろ

さらに十年後、なんと、あの名工がビームスに来て実演してくれることになりました。「Jason Takala」です。あの当時、本しか買えない若僧の心を鷲掴みにした迷路のリングの作家本人です。

といったドラマチックな展開も手伝い、ボクは今でもIJ青春を謳歌し、卒業の見込みが全く立たないワケです。


迷路(Man in the Maze)のリング各種、右の楕円型は92年制作の最初期に考案したデザイン(作家談)


来日を約束、ホルブルックにある作家の自宅で(16年3月)


興味を持って以来、そこそこ長い月日が経ちましたが、若い頃はIJとの距離がたまに離れたりもしていました。流行や風潮に左右される職業柄、腰を据える覚悟や余裕がまだ足りなかったのかもしれません。30代に入った辺りから徐々に集中するようになり、ここ10年間は没頭していました。良くも悪くも、色々と欲張らず、追いかけず、諦められるようになったんだと思います。巷での評価や価値、人気、噂はさておき、自分が着けるべき、と「縁」を感じたモノが手元に揃い始めました。


「縁」…昨年の夏、こんなコトがありました。渋谷のフェアが終了し、次の開催店舗への荷送りを終え、心にうつりゆくよしなしごとを報告がてら綴っていると、ふと開けた引き出しから憎めないヤツが…発送漏れ発覚。遅れてわざわざ送るのもちょっと…このリング、実は1年前にサンタフェでゴンゾーに(100kg超級)「こういうカワイイのを恰幅のイイ男が着けるのがイイんだよ」と作家からの直接購入をボクが横からアシストしたのと同一デザインなんです。まさか、ここで貧弱中年にも決定的なリターンパスが…Harrison Jim(ナイスガイ)の雰囲気を思い浮かべ良縁を感じ、仲間に招き入れました。さっそく娘に見せると「ハト?可愛いね〜」違います、勇ましいサンダーバードです…でも確かに溢れんばかりの愛嬌。よく観ると流行していた40年代頃のモノや、今の他のサンダーバードと比べて、どことなくユルくて、そこがイイ。

この納得までの安易さ、損ないを「縁」だと勘違いしてしまう陶酔感?こそ、何かに迷ったり、若さゆえ力みがちだったアノ頃にはなかった「脱力の極み」ですね〜


ハト、ではなくサンダーバードのリング、首からアローヘッドを提げてキメているのに迫力が…


可愛いリングの作家と、サンタフェにて(19年8月


いったい何をお伝えしているのか、よく分からなくなってきましたが…強引に締めますと、15日(金)から始まるIJフェアを、力を抜いてゆっくりと愉しんでいただきたいと、その一心です。

気軽なご来訪お待ちしております。


※脱線の続きはBEAMS PLUS TIMES (公式メルマガ) にて 1月13日配信予定


コヴァ ヤジー