口渇する砂漠の音楽

矢藤 ジョー 2022.10.07

こんにちは、矢藤です。


本日は自分の中でのここ数年のブームである砂漠、砂丘とも接続出来る作品の紹介をさせて頂きます。


まず誠に勝手ですがどのような経路でそれに至ったかと説明させて頂きます。


昨年公開されたドゥニ・ヴィルヌーヴによる『DUNE/デューン 砂の惑星』の鑑賞した皮切りに海とはまた違う砂漠、砂丘の深淵なヴィジュアルとハンス・ジマーの織りなす砂漠の音を取り入れた楽曲に魅了され、漫画『NARUTO』での砂を自由自在に扱うキャラクター我愛羅で言うところの砂縛柩(さばくきゅう)によって華麗に自分の脳内は砂に生け捕りになりました。


まんまと捕らえられてしまったものなので、より砂漠を密なものにすべく『DUNE/デューン 砂の惑星』のアイデアソースとして62年公開のデイビッド・リーン監督の『アラビアのロレンス』を鑑賞したり、砂丘の写真といえばで有名な写真家、植田正治の幻想的な砂丘の写真を浴びたり、とりあえず沢山の砂の質感のあるものに触れていました。


これらの地続きとして砂の手触りを感じる音楽とも接近。


西アフリカのニジェール共和国よりMdou Moctarのギターの斬撃にやられ、そこで"デザート・ブルース"というジャンルを知りました。


その系譜を辿るようにしてサハラ砂漠南部の音楽を専門としているレーベル<Sahel Sounds>よりLES FILLES DE ILLIGHADADやEtran De L'Aïrを通行。


そしてTinariwenへと辿り着きました。

Tinariwenは"デザート・ブルース"をより世に知らしめたマリ共和国のトゥアレグ族4人組のバンドです。


どれも密接な砂漠との関係性が反映されているデザート・ブルース音楽です。


一度聴くと喉が渇きそうになるほど砂漠の雰囲気が内包されています。


余談ですが(そもそもずっと余談)、喉が渇く体験といえば先程ご紹介したデイビッド・リーン監督の『アラビアのロレンス』も公開当時も観客の感想は砂漠のシーンが多くて喉が渇く映画だったなんて言われてるみたいですよ。

まあ、単純に3時間42分もあるからだと思うんですけどけどね。笑


そんなTinariwenらのサウンドの遺伝子源となる存在が今回のテーマとなる人Ali Farka Touré (アリ・ファルカ・トゥーレ)という西アフリカを代表するマリ出身のギタリスト兼シンガーソングライター。


この方こそが"デザート・ブルース"のパイアニアだそうです。その文脈で言えばもはや神ですね!


そして(やっと本題)今回御紹介するのがそんな故Ali Farka Touréに敬意を表してAliの息子でありマリのギタリストであるVieux Farka Toure (ヴィユー・ファルカ・トゥーレ)とテキサス出身のトリオKhruangbin(クルアンビン)によるコラボレーションアルバム『Ali』です。



【輸入盤LP】Vieux Farka Toure & Khruangbin / Ali <Dead Oceans>
価格:¥¥5,390 (税込)(税込)
商品番号:29-67-0397-512



Vieux Farka Toureは今作で初めて知りましたがKhruangbin×世界のルーツ音楽との掛け合わせという事で、Ry cooderとの掛け合わせ程の圧倒的信頼感があり、見事にまた一つお気に入りの作品となりました。


楽曲の内容は彼の最も印象的な作品のいくつかを再創造しており、オリジナルの楽曲をデザート・ブルースやマリの伝統音楽の意匠、威厳を保ちながらKhruangbinによる現代感覚のサイケデリックグルーヴがあるのがよく分かります。


ミックス面に関しても、ダブライクなリバーブの効いたスネアの恍惚とする心地良さや

オリジナル楽曲の野生的なポリフォニーを華麗に清潔感のあるスマートなハーモニーに変えていて楽曲の良さを推し進めています。


ルーツ音楽を取り扱うとどうしても土俗的な要素が強い故に主題が先頭に来てしまうことである一定の層のみの嗜好品レベルになってしまいまうこともありますが、呪術的なKhruangbinによって万人にも伝わりやすく綺麗に翻訳されています。


少し文脈はそれますがアレンジのバランス感はDeep Forestの楽曲にも近しいものを感じました。


Khruangbinなどのファンク好きや<Sahel Sounds>の音楽が好きな方にお勧めの一作です。是非に。