こんにちは、藤本です。
先日、日本の映画シーンの中でも個人的にファンである濱口竜介監督の最新映画『悪は存在しない』を鑑賞し、フランス的な美学やセンスというものに改めて興味が湧いています。
前回のブログでもご紹介したOPNのライブに出演していた石橋英子氏から、ライブ・パフォーマンス用の映像制作を依頼されたことがはじまりとなったこちたの映画。(実はその石橋英子氏のライブ・パフォーマンス作品『GIFT』の東京公演も見に行きましたが、素晴らしい内容でした。)
やっと日本での鑑賞が叶い嬉しく、その嬉しさのあまりつい舞台挨拶の回のチケットを購入して行きましたが、キャスト陣とのトークのやり取りなどでもとても腰が低く、丁寧に言葉を紡いでいて、「あぁ、想像していた通りの方だなぁ。」と初の生濱口さんを堪能でき、とても貴重な体験でした…!
濱口監督の作品は、主にセリフの積み重ねや反復によって映画の解像度を高めていく印象でしたが、今回は自然に囲まれた長野県水挽町(架空の町)を舞台に、まさにヴェネチアでの「ゴダール風」という評判の通り、息を呑むような静謐さと緊張感を纏ったサイレント映画のように構築された前半。そして徐々に濱口節ともいえる雄弁なセリフが降りかかって、最後には音と映像を研ぎ澄ました世界(ある意味自然を捉えたような世界)に戻り、またゴダールのような雰囲気で終えます。
細かいストーリーの紹介はネタバレになるので控えますが、一回見ただけでは理解しきれない難解さもありながら、「他者との相互理解なんて、根底の部分では難しい。むしろ無理ですよね」というような濱口監督の通例テーマは健在で、より即興的なアプローチや車中でのカメラワークが光っていて絶妙でした。
なかでもとあるシーンで、その町の区長が述べていた
「水は低い所へ流れる、上流の方でやったことは必ず下に影響する」
という言葉。現代社会の構造や政治・組織に対する批評性であったり、形を変えれば何にでも置き換えられるそのセリフの妙はやはり濱口監督ならでは。また石橋英子氏の音楽はなくしてこの作品は完成しなかったと監督が述べていた通り、音楽も素晴らしく、二人の手によって“うまく言葉にできないもの”=“なにものでもない何か”をかたちにしていく、その過程(インタビューなども読んだ上で)にも圧巻です。特装版パンフレットには7インチも付いていて、細かいところまで配慮が効いた作品でした◎
こういった抽象的な余韻を堪能できるものはやはりフランス由来の芸術に行き着くのかなと感じ、改めてフランス映画をはじめ、映画音楽ももう少し掘り下げようと思っているこの頃です。
さて、そんな石橋英子氏の音楽に惹かれているところに、先日スウェーデンのAxel Petersénという映画監督による2023年作品『Shame on Dry Land』の映画音楽が到着しました。こちらを手掛けたのは、なんと昨年ヴォーカル作品を発表して話題になっていたスウェーデン出身のシンガー/ディープハウス系のプロデューサー、そしてOUR LEGACYなどのモデルとしても活動するBaba Stiltz(ババ・スティルツ)!
【LP】Baba Stiltz / Shame on Dry Land〈Public Possession〉
価格:¥5,500(税込)
商品番号:29-67-1018-526
2024年の最優秀長編映画サウンドトラックに贈られるGuldbagge賞を受賞した作品で、彼のこれまでの作風とは異なる側面を披露する今作。波が寄せては返すを繰り返しながら、潮が引いたり、満ち足りするように、ゆっくりと楽器の音色を増したり、曲の色合いを変えながら、時間とともに静かに流れていく、まさに石橋英子氏の映画音楽とも共鳴するような音世界を繰り広げます。
作品自体はそもそも日本で公開されていないので見れていませんが、海外の映画評論家にも「1970年代のネオノワールアメリカ映画を思い出させる」と評されているように、音楽とアルバムアートワークだけからでも、どことなく映画の異質な情景が浮かんできます。
Miles Davisが手掛けたヌーベル・バーグの旗手Louis Malleによる映画『死刑台のエレベーター』の映画音楽を今っぽく解釈し、さらにアンビエント~エクスペリメンタル要素を増したような雰囲気で、そういった影響も少なからずあるのではないかなと感じさせられたり。
続いてご紹介するのは、またしても映画音楽です。
【2LP】Jakob Bro / Music for Black Pigeons Motion Picture Soundtrack〈Loveland Records〉
価格:¥5,720(税込)
商品番号:29-67-1087-526
〈ECM〉からの諸作で知られるデンマーク出身のギタリスト/コンポーザー、Jakob Bro(ヤコブ・ブロ)が音楽を手掛けたドキュメンタリー映画『Music for Black Pigeons』のサウンドトラックの2枚組アナログ盤です。
デンマークの実験的なドキュメンタリー映画制作の第一人者として知られる映画監督のJorgen LethとAndreas Koefoedが、14年間もの長い歳月を費やして完成させたジャズ・ミュージシャンの生き様を描いた同映画。“音を聞く意味”とは、演奏する時のミュージシャン側のフィーリング、など、ジャズ・ミュージシャンが創作する際の姿勢にフォーカスを当てているそうで、非常に興味深い作品です。
サントラにはBill Frisell、Lee Konitz、Paul Motian、高田みどり等錚々たるメンバーが参加し、広々とした空気感の中紡がれる叙情的でありながらスウィング感も感じられる、じっくりと聴きたいジャズ作品に仕上がっています。先ごろリリースされたShabakaやAndre 3000の新作がお好きな方にも刺さるはず…!こちらは店頭のみの展開です。
なんだか今回は映画縛りになりましたが、フランス映画のオススメありましたらぜひ教えてください。
近日中の出勤日は、11日、13日、15日、16日です。
それでは店頭でお待ちしております!
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