靴を凝視する人たち

柳 寛 2024.11.17

【LP】burrrn / blaze down his way like the space show〈Dreamwaves Records〉
価格:¥4,950(税込)
商品番号:29-67-1209-488

BURRN!はメタル雑誌。burrrnは日本のシューゲイズバンドです。日本のシューゲイズ・シーンは創成期から渋谷系やビジュアル系などとも混ざり合いながら発展していたこともあってか、本場UKとは少し違った独自のスタイルへと変化していったと思います。ウィスパーに歌うヴォーカルも、日本人としては耳馴染みが良くポップスとも繋がりやすかったのかもしれませんね。同ジャンルのパイオニアの1人で、My Bloody Valentine(以降MBV)のギタリスト、Kevin Shieldsは1960(〜90)年代の日本の伝説的バンド、裸のラリーズを愛聴していただけでなく、理想のサウンドとして掲げていたほどだったそうです。繊細で影のある雰囲気と轟音ギターが鳴り響くスタイルは、確かに随分と近い要素がありますよね。ということで、裸のラリーズが実は同ジャンルの元祖であるという説もあり、それを思うと日本は尚面白い発展の仕方をしているのかもしれませんね。

【限定盤LP】My Bloody Valentine / Loveless〈Domino〉
価格:¥6,490(税込)
商品番号:29-67-1193-813

個人的には、シューゲイズといえばJesus & The Mary ChainかMBV。この両バンドを永遠に聴いてしまい、同ジャンルの新たなバンドに出会ったときは、彼らに近いかどうかを考えてしまう自分がいます。

しかし、そんな渇望をburrrnはまさに満たしてくれるのです。聴いてまず数秒で本当に日本人でこんな音を出していた人達がいたのかと素直に驚きました。本作は2005年から活動をしている彼らのデビューアルバムで、RIDEのMark Gardenerがマスタリングを施し復刻されたもの。MBVの『Isn't Anything』やEP作品を想起させるトラックが揃っています。MBVの代表作『Loveless』は個人的には来世にも持って行きたいくらい好きなのですが、彼らのライブを見に行った際に、シューゲイズの本当の威力はそれ以外の作品にこそあったのかもしれないと思った記憶があります。ですのでこちら側に似ている音を聴かせてくれると尚興奮してしまいますね。


【LP】They Are Gutting a Body of Water / Lucky Styles〈Smoking Room〉
価格:¥5,060(税込)
商品番号:29-67-1095-526

そのことに関連して、フィラデルフィアのバンドThey Are Gutting a Body of Waterの新作アルバムも紹介させて下さい。これぞと呼べるような、ギターのリフも堪らないのですが、サンプリングを使用したり、ヴォーカルのピッチを極端に上げたりと、実験的なアプローチが多くあります。こう書くと、新たなジャンルへと進化したかのようですが、むしろシューゲイズの神髄へと接近したような興味深い一枚です。というのも、MBVのKevinもドラムのフレーズを過去の関係のない楽曲からサンプリングしたものを繋ぎ合せて作っていたり、ピッチベンド(音を上下させること)を極端に繰り返したり、当時としては実験的なことばかりやった上であの傑作達を生み出していました。そもそもウィスパーヴォイスと爆音ギターの組み合わせ自体が謎な組み合わせですし、それがなぜ気持ち良いのかも謎ですよね。音楽ライターが勝手につけたジャンル名とはいえ、靴を凝視しながら演奏していたところからシューゲイズっていうのもそのまま過ぎますしね。つまり、ナゾナゾ君です。