どーも、こんばんは。
ビーミング by ビームス メンズバイヤーの藤尾です。
ようやくこれを紹介出来る。この帽子の企画を思い立ってから形になるまで、本当に長い時間を要しました。
正直、これ作るのにめちゃくちゃ頭もエネルギーも使ったし、周りのスタッフにもたくさんの意見を頂いたので、まさに元気玉みたいなアイテムです。
「ビーミング by ビームス オリジナルの最高にかっこいい帽子を作りたい!」
そんな単純だけどなかなか実現が難しい想いが、今ここに具現化。
B:MING by BEAMS 8パネル コーデュロイ キャップ
カラー:ブラック、ライトブラウン
価格:¥6,000-+税
商品番号:92-41-0456-745
最初に断っておきます。この帽子の説明は、相当長くなります。
簡単に書き終えることなんて出来ないし、端折ることもしたくない。
長いけど、最後まで読んでもらえると最高に嬉しい。
まずは何から話そう。
生産背景の話からかな。
生産背景とは、いわゆる誰にどこで作ってもらおうかということ。
デザインももちろんそうだけど、工場も大事になる。帽子といっても形が様々なので、得手不得手があるから工場選びも本当に重要になる。
数名のデザイナーさんに声を掛けました。良い帽子は作りたいけどビーミング by ビームスを見てくれているお客様に響く価格で作らなきゃいけないし、かと言って一切の妥協は許したくない。
そんな究極のわがままを叶えてくれるデザイナーさんはいるのだろうか、とモヤモヤ。
なかなか話が決まらなくて諦めかけていたところに、以前からお付き合いのあったとある有名帽子ブランドデザイナーさんから「いいですね!そういう楽しそうなこと、ぜひやりましょう!」と快いお返事を頂きました。
帽子好きな方なら必ず知っている大人気なブランドだし、決して安価だとは言えない価格でハイクオリティな帽子を展開しているから、絶対に断られると思った。
なのに二つ返事で受け入れてくれて、挙句には「うちで作ってるって言っちゃって良いですよ!(笑)」という言葉まで。
さすがにそれはブランド側に迷惑がかかっちゃうのではないかと思い、ブランド名は公表しないことにした。何故なら決してこんな価格で買えるようなブランドではない。ブランドのイメージを下げちゃうんじゃないかなって。
そしてそんな著名なデザイナー集団と、クオリティと金額のバランスが最高に良い帽子作りをスタートすることが出来ました。
ベストパートナーが見つかったので、次はデザイン選び。
初回作はベーシックで誰にだって似合うもの、そしてビーミング by ビームスが提案するクリーンカジュアルのスタイリングに合うものを作りたいと思っていた。若い人のカジュアルスタイルにも、大人の休日スタイルにもばっちり決まる、そんなのが良い。
シンプルだけな帽子なら簡単に作れちゃうんだけどそれだと意味が無くて、シンプルなんだけどしっかりと計算尽くされたデザインを落とし込みたかったし、もちろん素材もこだわりたい。
私が魅力的に感じる帽子を机上に並べ、その中から前述のイメージに近づけるようにデザイナーの方に相談をした。
バイザー(ツバ)の長さ・カーブの具合・クラウンの高さ・アジャスターの形状、全ての答えを一緒に出し、一切の妥協を許さない形に仕上げました。
中でも何度か修正をして苦労した部分がここ。

理想のバイザーに仕上げることで、ボディとの付け根に凹みが出てしまう。フラットバイザーだとパターン上どうしてもここに凹みが出るんだけど、かと言ってバイザーの形状を変更したくなくて、デザイナーそして工場側にも最大限の努力をして頂き、バイザーの美しさと凹みの解消を目指しました。
上の写真は敢えて目立つようにマークアップしていますが、実物ではほとんど気にならない程度まで修正をすることが出来ました。
どうでも良いことかも知れないけど、私にしてはとても大事な部分なんです。
そしてアジャスターの形状。
本来は、共地(本体と同じ生地)・ナイロン・レザー・ゴムなどの素材でテープを選んで、その雰囲気に合ったバックルを装着する。
ここでも今までとは違ったことをしたくて、ダブルリングを採用しました。
着想を得たのは、ベルト。ドレススタイルでダブルリングのテープベルトを着用することで、カジュアルダウンを図るスタイリングテクニックがある。
ドレスの中ではカジュアルダウンだけど、カジュアルなスタイルにダブルリングを採用するとドレスアップに近づけるんじゃないかなって考えました。だからこのカジュアルな帽子のアジャスターはダブルリングにして、上品な雰囲気を演出。
共地ではなくて、近似色のテープを選んだこともルックスのアクセントになっています。
お次はクラウンの部分。頭を包み込む部分だからこと、デザインの重要度も非常に高い。
一般的に多いのは6P(シックスパネル)という、六面に分かれたデザイン。それがベーシックで良いんだけども、一癖欲しくて8P(エイトパネル)にしました。
こだわったのはアイレット、そう、この金属の部分。

従来のものよりも非常に小さいものを選んでいます。ほんとはもっと大きいんですよね。
このアイレットは、腕時計のストラップに採用されているもので、とても小振りなんです。良いか悪いか、異素材のアイレットが放つイメージというのは強いものだから小さいものを選んで、八面のうち四面にしか付けず、逆にそれさえもアクセントにしました。
なんとか形のイメージは整ったので、お次は素材選び。もちろんのこと、すごく重要なポジションである。
デザインのみならず生地が生み出す表情は、アイテムへの印象をガラッと変えてくれる。カジュアルにもドレスにも、生地の持つ力で昇華してくれるもの。
秋冬に発売するから季節感を醸し出しながらも、上品な面構えが欲しい。手の届く価格だけど、安価な生地は採用したくない。
そんな思いから選んだのは“ドビーキャラメルコール エアータンブラー加工”という素材。
長方形のキャラメル状が凹凸に並んだコーデュロイであり、エアータンブラー加工が施されています。その加工というのは、高温・高圧の中、空気の力で生地を揉みほぐし、表面をナチュラルな風合いに仕上げるもの。フワッとした優しい雰囲気が出ていて、本当に素敵な素材なんです。
実は素材の候補もたくさんありましたが、一目惚れに近い感覚でこれを選びました。生地の値段には目もくれず、「これが欲しい!!」と、さながら幼児のわがままのように。
ファーストサンプルが出来上がってから形の修正は繰り返しましたが、素材のことで悩んだことは一度もありません。初志貫徹とでも言いましょうか。最初から最後まで、この生地で良かったなと本当に思っています。
こだわったのは表面だけじゃない。裏地にも妥協を許さず、色気あるサテン地の小紋柄を選びました。
もちろんこれにするだけで生産コストが上がっちゃうんだけども、ここは外せないんですよね。
さらに裏側の話をすると、ネームタグもこの為に作り直しました。このシリーズにしか付かない、特別なモノ。
“B:MING by BEAMS”と“MADE IN JAPAN”のタグを、裏側の汗止めテープ裏に縫い付けています。
ネームタグが、“裏側の裏”にあるんです。
こうやって指で汗止めテープをめくらないと見れない場所に。
何故この位置にしたのか。本来ブランドを表す、ネームタグは目立つところにあるべきなのに。
少し話が逸れるようですが、私は昔から筆記具が大好きなんです。大阪に住んでいた時は北浜の名店『モリタ万年筆』に通いつめ、たくさんのボールペンを購入していました。
所有している中でも、最もデザインが好きなのがドイツブランド【LAMY】の代表モデル“LAMY 2000”。
一切の無駄がないデザインであり、美しすぎる流線形のボディにはうっとりする。10年近い歳月を共に過ごしていますが、今でも飽きることなく私のペンケースの一軍として君臨しています。
LAMY 2000には、目立ったロゴマークや生産国がまるで隠されたかのような手法で施されている。「企業を表す言葉はデザインにおいて、無意味」という言葉の元、そういった表現になっているそう。
そんなことに看過されてか、ビーミング by ビームスのロゴもしっかりと訴求したいけど、凝りに凝りまくったデザインを邪魔するわけにはいかないので、控えめな場所に配置しました。
実は今回のこのロゴマーク自体も、同じデザイナーに書いてもらったんですよね。帽子ブランド好きな方なら、このフォントを見ると「まさかあのブランド??」と気付くんじゃないのかな。
そしてこのロゴマークはプリントではなくて、ハンコで一個一個捺印してるんです、私が。
本当に大切な帽子だから、何か一つくらいの工程に携わりたくてやりました。
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ブラックは60個、ベージュは40個しか作りませんでした。
追加で作る気は全くないので、これはこの100個で終わらせようと思っています。
現在予約受付中ですので、皆さま是非ともご検討下さい。
月並みな言葉だけど、絶対に買って損はさせないです。
発売前だけどスタッフからの注目度も高くて、ビームスが誇るオムニスタイルコンサルタントのメンバーもビデオで紹介してくれています。
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本当に長くなっちゃいましたが、これでも話し足りないなと思っているくらいです。
最後までご覧頂いた方々、心よりお礼申し上げます。
あっ、実はこのシリーズもう一種類あるので、そちらはまた別の機会に。
では、おやすみなさい。
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バイヤーが自ら手掛けたアイテムを「買ってください。」と言わんばかりに説明するビデオ。
youtube 【BEAMS BROADCAST】
私がギター愛を語ったり、弾いたりしてます。