ご機嫌いかがでしょうか、銀座店の新井です。

クリスマスだったのでジョンのハッピークリスマスにワーキングクラスを足して割った感じの合わせで出勤してみましたが、もはや紅白の演歌歌手みたいで今日一日は浪花節の接客になりそうです。
年内最後のブログになるかもしれませんが、前回にドレスシューズの話をしたらまだまだ話し足りない。そんなタイミングでこの靴はビームスカードホルダーの方には絶対にオススメしておきたいヤツです。

今ではビームス ドレスクロージングの売り場の靴の半分位を占めるんじゃないかって位にバリエーション豊富になったこのブランド。皆さんご存知だとは思いますが元々は数々の著名ドレスシューズのOEMとして大活躍していたシューズファクトリーですよね。
今じゃ20万越えのあのブランドJや大御所アメリカンブランドRとか、20年近く前は色んなところでこのノーザンプトンファクトリーが大活躍してましたね。私がビームスに在籍し始めたその当時はビームスではクロケット&ジョーンズ名義の商品は無かったと記憶してますが、他のセレクトさんでは小回りの効く別注を受けてくれる良心的かつ確かなクォリティで日本マーケットを座席し始めた頃でした。
あの時はスタンダードラインだと4万円台だったので今考えるとメチャクチャコスパが高い!確かエドワードグリーンで10万強、ジョンロブで15万強、エンツォボナフェも6万だったと記憶してます。
靴好きの中には現地ノーザンプトンまで足を運んでファクトリーショップで更に安くまとめ買いする強者までいました。タイムリープ出来るなら戻って買い貯めしてきたい。。
企画をしてた時には中国やインドの大きなドレスシューズ工場に何度も何度もサンプル作成をしてました。軽くみても4.5回はサンプル修正を繰り返しましたが最終的にサンプルはいい感じでも量産になるとまた別顔になってるオチで。。このブランドを目標にはしてたのですが、国民性が違うせいかイギリス製の緻密さで丁寧な仕事とか仕上げのセンスには脱帽しきりとなるちょっと苦い経験ばかりでしたね。
グッドイヤー製法となるとコバが張り出すのが特徴。なのにウエスト部にいくにつれてこれだけギリギリまで張り出しを抑えてシェイプ感を美しく描けるのはマシンとハンドを随所に活かした縫製技術の賜物。
アッパーのステッチ入れも個体差をほぼ無く、これだけ精密に出来るのも脱帽物です。何よりこのクオリティレベルのブランドじゃ無いと出来ないのがアッパーの足の甲に綺麗に沿う様に形成されている「のぼり」ですね。
尚且つ私が1番大事だと思うポイントは、トウ部が反り上がらなくしっかりと直線に降りる様に形成されている事。
やはりある程度のレベルの工場だとアッパーは足に沿う様に充分な吊り込みがされていないとか、無駄にトウが反り上がってしまっていたりとか、革のコバ処理が雑で汚く見えるとか、よく見るとツッコミどころ満載になってしまうんです。こればっかりは国民性なのか英国と日本でしか作り得ない伝統芸みたいに思えてしまいますね。
「美は細部に宿る」
これをしっかりと体現させているのと消費者目線のコスパも考えた英国靴はもはやクロケット&ジョーンズ以外は無いと言っても過言では無いかも知れませんね。
そうは言っても毎年の様にほぼ全てのアイテムが値上がりをせざるを得ないという時代の流れ。このブランドも向こう10年後位には10万円を超えてしまう可能性は高そうです。特にこのコベントリーってモデルの普遍性の感じるスタイルは値上げしないうちに買っておいて欲しい。自分も余裕が有れば買いたいっす。
適度なスポーティデザインのメダリオンやパーフォレーションでそれこそフォーマル以外のスーティングもジャケット&トラウザースもいけちゃう汎用性。イタリア靴程くびれが強く無いので2枚目過ぎずオーセンティックなトラッドスタイリングでも。昔大好きだったグリーンの202ラストを思わせるややエッグトウも愛らしくて飽きなそうです。
表題はイギリスは69年デビューの技巧派プログレッシブロックバンドYの最初のヒットアルバムのトリ曲。
超絶テクニックには終始感嘆するばかりで長い組曲の様な構成もジェットコースターの様な感覚であっという間に感じてしまいます。
ヘタウマなんてレベルではあり得ない裏打ちされた演奏技術があってこそのこの人達の美しくも激しい重厚な曲。
時代の流れも汲み取り先鋭的、前衛的と言える表現力はそんな鍛錬された演奏技術あってのものと、いつ何度聴いても聴いた後にはマラソンを走り切った様な爽快感と脱力感を感じてしまいます。
イエス、時代を越えて残っていく名作には素晴らしい技術があるんです、このクロケット&ジョーンズの様に。
それでは銀座でお会いしましょう。
新井